二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

金閣寺/神奈川県民ホール15

2015-12-19 | オペラ
金閣寺/神奈川県民ホール15

作曲:黛敏郎、指揮:下野竜也
演出:田尾下哲、装置:幹子 S.マックアダムス、衣裳:半田悦子
演奏:神奈川フィル
出演:溝口:宮本益光、父:黒田博、母:飯田みち代、
   道詮:三戸大久、鶴川:与那城敬、柏木:鈴木准
   若い男:高田正人、女:吉原圭子、娼婦:谷口睦美
   有為子:嘉目真木子

無垢の木の質感の材料でできた大きな金閣寺が舞台中央に座し、その回りを人々が動き回る。まるで観音様の手の中の孫悟空のように。金閣寺は屋根の優美な曲線以外は細かい直線で構成されていて、端然とし落ち着いている。シルエットは左右対称でも装飾は非対称。細工は細かく美しい。最後のカーテンコールでは一列に並んだ歌手たちが左右に割れて、その中央に燃えたはずの金閣寺が現れ、一身に盛大な拍手をあびていた。その後にちょっと遅れて溝口が中央から出て来て最後の大拍手となった。単にちょっと溝口の出が遅れただけなのかも知れないが、タイトルロールが溝口ではなくて金閣寺であることを思い起こさせた。

身も心もねじくり曲がっている溝口は、いわば小さな箱の中にいるような閉塞感と邪悪なストレスに攻撃されている。身も心も開放して自由になるには何か破断的な破壊的なイベントが必要だ。端正に静かに時間や事件を超越して存在する金閣寺は美しい。白無垢の花嫁。これこそ自由、無の境地の象徴でもある。

はたして溝口は自由になれたのであろうか?そんなわけはない。人間は不自由なのだ。不自由もまた美しい。

黛の音楽は現代的でお経の音が多く使われる。お経はオペラ的なので良く合う。哲学的な雰囲気になる。台本はクラウス・H・ヘンネベルクの手になるもので哲学的だ。

宮本は芝居がすごくて、溝口になりきって、カーテンコールの間中も溝口のままだった。声はしっかりとした迫力のあるバリトン。黒田の声は透明感があって美しい。与那城と鈴木の芝居も良かった。それぞれのキャラクターが良く出ていたし、宮本ともども芝居にかける意気込みの凄さが感じられて、彼らが歌手であることを忘れてしまった。

コーラスは舞台裏からが多く、多用されていてほとんどオーケストラの一部のような感じだった。演奏は炎上のクライマックスでの迫力が良かったように思う。

15.12.06 神奈川県民ホール

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« おとうと/幸田文 | トップ | きもの/幸田文 »

コメントを投稿

オペラ」カテゴリの最新記事