日本の伝統芸術と芸能
能楽と能面
<その3>
先回、恥ずかしながら島暮らしのアトリエの中をお見せいたしましたが、皆さんの中には面打ちの手順をご存じない方が居られると思いますので、この折りを借りてご紹介をしたいと思います。
1-木の事
面打ちの材料は最近は殆ど檜です。特に尾州檜が最高とされております。木の持つ香りも良く、彫刻(仏像彫刻にも)するに最適な木です。唯一の欠点は脂がでるという(通常の木に特有な欠点)ことです。焼きコテで焼いたり、湯で煮たり、薄い紙をを張ったりして、それに対処しています。
脂が出ますと彩色が痛んだり、黒ずみますので、製作者泣かせです。面によってはそれが返って製作効果を出す場合があるのですが・・・・古典の名作(鬼面)には良い作品がありますが・・・
人によっては米檜、台檜、イチイ、樟を使ったりします。台檜は甘い匂いが特徴です。イチイは奈良県の「櫟一刀彫り」で有名ですね。
原木の段階
此処から必用な大きさの物を切り取ります
裁断した原木
製作する能面によって、様々な裁断をします。
この写真は櫟の50年もの(裁断してから50年ほど寝かしたもの)
木取り
この裁断した木をチョウナという鉈のような道具を使い、下の写真のような物を造ります。細部は大小の鑿を使いますが、私は一本のつき鑿のみで最初から最後まで仕上げます。
大体お分かりになるかと思いますが。底辺と側面の確度は90°にします。スコヤという道具を使って、切削しますが初心者はここでなかなか上手くいきません。几帳面な方、大雑把な方の心根が直ぐわかります。
底面が面裏、凸面が面表の方向です。師匠が厳しい方ですと、これで何回もやり直しを命じられ、嫌になる方も続出。これは見かけ以上に意外と難しいのです。そして荒彫りに掛かります。 仏像彫刻ですと「コナシ」といいますね。
彫刻はいろいろ有るでしょうが、面打ちは丁寧な、心配りが繊細な方が上手いですね。彫りだけでなく、彩色に於いても同じです。また、人の顔を彫るという行為ですから、その方の心の中がすぐ現れるという、怖い面があります。
始めは自分の顔に似るようです。どうしてでしょうか。昔、仏師が佛顔を彫るためにモデルの方を後で殺したというような話さえ残っています。つまり、他人にコピーされたくないという事でしょう。いずれにしても、面打ちは製作者の人格がもろに出てきますので、その人を判断するには面を見ればよいということか・・・
それでは、本日はこれにて。
次回は紹介しました道具の一部と荒彫りに進みます。
2011 10 13
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