白洲正子文学逍遥記 番外編ー01
大分長い間お休みしておりました。
今回は、少しの間先般来隣国の韓国と我が国の対馬との間で問題となっておりました、
盗難仏像の韓国裁判所での判決にかかわる事件を、取り上げて見たいと思います。
「サワラチャンの加計呂麻島日記」にも連載しておりましたが、こちらの方が相応しいと考え、
今回、内容が同じですが移動させて掲載し、以降はこのブログで連載いたします。
対馬の仏像盗難事件 その1
先日来ニュース面を賑わした対馬の盗難仏像の韓国裁判所の判決が有ったのはご承知の通り。
日韓の間で喧々諤々の意見が飛び交っている。最近は慰安婦の少女像の設置に絡んで、政治状況が大変な状態だ。
今回は政治状況の問題は一旦横に置いて、純粋に文化財からの視点で書いてみようと思う。
5年前に長崎県対馬市の寺から盗難にあった観音佛
筆者は文化財や仏像関係の専門家ではないが、長年足を使って数多くの仏像を神社仏閣や博物館等で観て来ている。
そのような経験を基にして、この仏像を論じてみたいと思う。
この観音と称される仏像。お顔立ちからはそのものずばりの観音像である。
しかし、仏像の印相を見ると疑問が出て来る。仏像の印相を見て頂きたい。
阿弥陀如来
仏像の手の形や組み方を印契あるいは印相といい、略して「印」と呼ぶが、この観音像は例に挙げた阿弥陀如来と同じである。
観音像の印相
例として十一面観音、聖観音、如意輪観音を見てみると良く理解できる。
如来とはまるで違うという事が解るであろう。
仏頭の髻(もとどり)
仏頭の曲げ=髻・・が右の大日如来に同じ。
また良く仏頭を良く見ると、以前は仏頭に宝冠が有ったようにも見受けられる。
大日如来
上記の大日如来は運慶の慶派の代表的な仏像である。下段の円成寺の大日如来は誰でも教科書で覚えが有るはずだ。
対馬の「観音寺」の所有物とされているので観音とされているが、元々は如来系の仏像ではないかという憶測が成り立つ。
仏像の鑑定
仏像の鑑定は専門家の手によって、科学的に行われている。日本では東京芸術大学に専門の教育機関が大学院にあり、
奈良の国立博物館等でも研究機関が、専門家の立場で仏像の鑑定・修理修復を行っているのが日本の現状である。
仏像の外見的な様式、仏像に付帯する文書資料、仏像内の様々な資料(体内仏や文書他)
だけでなく、仏像の材質まで科学的に検査するのである。木造で有れば木の材質(檜など様々)で産出地まで分かる。
金属はブロンズで有れば銅と錫、その他希少金属の混合割合が、時代や国ごとに違うデータを使って、
大凡、製作時代や国まで特定できるのである。韓国の研究機関でも同じ手法が取られている筈である。
今の段階では詳細が発表されてはいないが、仏像体内に文書が有ることは判明している。
この文書の内容からは更に詳しい内容は判明できる。後はこの文書の真偽だけである。
今回の段階ではこの仏像の外見面だけを取り上げて検討してみた。それだけでもこの仏像の問題の謎が出て来た。