日本の伝統芸術と芸能
能楽と能面
<その10>
ようやく大洪水の後遺症も無くなりつつはありますが、何分にも離島中の離島故、なかなか復旧作業が場所によっては、順調に行っているとは言い難いところもあります。
特に山間の連絡路を持つ集落は、未だ開通に至っていないところもあります。そのような所は船や迂回路を使って、細々ながら生活物資を搬送している次第です。平和なときは正に桃源郷ですが、いったん事が発生すると、大変な目に遭うのです。一日も早い復旧が望まれます。
さて、本日はまず最初に、先回からのお約束を果たさねばなりません。
<若女>-01
<若女>-02
この面が江戸時代の名工・天下一 河内 の創作面<若女>の本面です。現在金剛宗家にて所持されております。先にご紹介した<小面><増女><万媚>とは相貌の異なる面である事が、ご理解頂けると思います。流石というしかありません。
写真では本当の色合いは出ませんが、それにしても口の切り方、彩色は実によろしいですね。 何か女の意思を感じます。如何でしようか。
<若女>・・・長沢 氏春 作
現代の名工・長沢 氏春師の打った<若女>です。本人も河内を目指し、ついには河内の命日に逝去されました。正に<河内の生まれ変わりと思われる>ほどの・・・
正直申しまして、一歩も河内に遅れを取っていない出来上がりです。静かな面相で、唇の切り方、彩色、毛書きの筆の運び方、肌色の彩色等々・・・・絶品です。 このような面を打てる方は、現在の日本には2人しか居りませんでしょう。
本日の<河内>のご紹はこれまでにして(以降何度もご紹介いたしますので)
次はお約束の、河内の弟子で 女面の名人<大宮 大和 真盛>の<逆髪>をご紹介します。私の記憶違いでなければ、梅若流の宗家の所持と記憶しております。以前所持していた梅若の能面集に別な取り口の、もっと素敵な写真が在った筈なのですが、見当たりません。
<逆 髪>
ご覧頂ければ、この通り。私なんぞが下らない能書きなんぞ言う必要はありません。
人の手でこんなにも美しい面が打てるんでしょうか。見果てぬ夢ですね。
本日は河内の第1回として、<若女>をご覧いただきました。本日の本面はなかなか見る機会は無いと思いますが、せめて画面からでも記憶に留めていただき、能面の展示会や美術館、博物館で同種の面に出会った時は、この記憶の面を基本にして、比較検討ください。打ち手の技量を即判断できます。
実際この面を超える面に、出くわすことは無いとは思いますが。
本日はこれにて失礼致します。次回をどうぞ。 奄美ちゃんの離島日記 (新規公開しました)