直良和美訳 早川ポケットミステリ
「時の娘」のグラント警部もの。「時の娘」より前の時期の小説で、ベッドのグラント警部にリチャード3世の肖像を届ける女優のマータもこの本で登場する。緻密な感じのミステリ。
ジョセフィン・テイのミステリは、あまりにも有名な「時の娘」以外は今まで翻訳でめぐりあわず、これが2冊目。さすがに社会背景は今よりゆったり目に感じるものの、肝心の事件の動機も、ちょっと奇妙な攪乱要素として登場する青年も今風な印象。
リチャード3世もお気の毒にと思ったが、この事件の被害者もまったく理不尽に、犯人の身勝手によって命を絶たれてしまう。その人生が勇敢で努力を感じさせるものだけに怒りがフツフツ湧き上がるし、それだけの人生の軌跡をもってしても、"When she was dead, she was dead."残ったもの勝ちを感じさせて寂しい…作者実にうまいなあ、と思う。
グラント警部もなかなか素敵だが、脇のウィルソン刑事や、田舎の警察署長の行動的な娘・エリカが実に魅力的。「奇妙な攪乱要素」の青年は思わず「杜子春」連想しましたね。
「時の娘」のグラント警部もの。「時の娘」より前の時期の小説で、ベッドのグラント警部にリチャード3世の肖像を届ける女優のマータもこの本で登場する。緻密な感じのミステリ。
ジョセフィン・テイのミステリは、あまりにも有名な「時の娘」以外は今まで翻訳でめぐりあわず、これが2冊目。さすがに社会背景は今よりゆったり目に感じるものの、肝心の事件の動機も、ちょっと奇妙な攪乱要素として登場する青年も今風な印象。
リチャード3世もお気の毒にと思ったが、この事件の被害者もまったく理不尽に、犯人の身勝手によって命を絶たれてしまう。その人生が勇敢で努力を感じさせるものだけに怒りがフツフツ湧き上がるし、それだけの人生の軌跡をもってしても、"When she was dead, she was dead."残ったもの勝ちを感じさせて寂しい…作者実にうまいなあ、と思う。
グラント警部もなかなか素敵だが、脇のウィルソン刑事や、田舎の警察署長の行動的な娘・エリカが実に魅力的。「奇妙な攪乱要素」の青年は思わず「杜子春」連想しましたね。