虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

昭和史(半藤一利著・平凡社)

2004年11月04日 | 
 本を買いすぎたので、しばらく節約しなくてはいけません。でもこの本は面白いです。お金出して損は無いです。

 昭和のはじめから敗戦までを15章プラス結びの章建てで、文章も実に呑み込みやすく構成されています。
 内容的には特に新しいということはありませんが、歴史をよく知って、咀嚼して血肉となっているおじさんが、話してくださる、という体裁で、読後感がちょうど日本史の授業で、時間が余ったから先生が余談みたいに話してくれたときの感触に良く似ています。そういうのって、授業そのものより鮮やかに覚えていたりします。
 私の高校でも、日本史は時間が足りずに昭和史は早朝特別補習で終わらせたから、受験で日本史選択でない生徒はきちんと授業でやらなかったことになります。本当は古代史やるより必須だと思いますが。

 日本近代史というのは読んでいると、あまりの情けなさに歯軋りしながら、うめきながらなんてことが往々にしてありますが、この本も昭和史の中で良識が次々に追いやられ、根拠の無い戦勝への自信と熱狂が日本を支配していく有様を刻々追っていきます。
 ワケ分かんないけどとりあえず言ってみようとみんなが追随して叫びたてたような統帥権干犯問題とか、素人が考えても「なぜだ?」としか言いようの無い日独伊三国同盟。それが、表立って反対をする言いだしっぺがそのときのメンバーにいなかったから?「何とかなるだろう」って?テロによって黙らされていく政治家たち。「君側の臣」と内閣の軋みの中で次第に意思を表せなくなっていく天皇。すべて希望的観測のみでシミュレーションされた戦争の見通し…
 結果を知って読んでいけば、その時々ほとんど滑稽に感じられることもあるが、その甘い見通しと仲間内の摩擦を避けるための遠慮と保身が引き起こしたなんという悲劇。そのつけを誰が払ったかを考えると、「無念の思いやるかたない」とはこういうときに使うのではないか。
 そしてソ連が日本の分割統治すること、イコール日本が朝鮮やドイツのように分断することをかろうじて逃れることが出来た敗戦であったという終結にたどり着き、ますます暗澹は深くなる。

 この本は教科書よりは入門書でしょうが、とりあえず一読してそれから別の本へ進むなり、批判するなり各自考えられたい、と痛切に思います。
 私に関しては、今ちょうどドイツの敗戦時の日記「ケストナーの終戦日記」を再読中でもあり、戦争を終わらせる時の混乱と悲喜劇がこの本と相乗効果生んだようです。怒りがうねっております。ともかく政治家が必要なことをちゃんと考えていると思ってはいけません。時流が正しいと思ってもいけません。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
興味があるのに (chishi)
2004-11-05 12:22:40
なかなか手が出てなかったところなんです。

あーやっぱり読もう。って、思いました(笑)
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読んでください (ningyo)
2004-11-05 20:15:53
読んですぐ書き飛ばしたので

いささか興奮気味でお恥ずかしいものになってますが

わかりやすくていい本でした。是非!
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次の楽しみ (ブッキー)
2004-11-07 23:34:59
平易な文章ということなので手にとってみようと思います。歴史問題の議論はかみ合わないことが多いように感じます。歴史の共通認識が出来てないとどうしてもかみ合いませんね。昭和史の入門書として参考にしたいと思います。

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歴史認識 (ningyo)
2004-11-08 08:44:51
確かに、半藤氏の歴史観に貫かれたものですが

私には不快なものではありませんでしたし

何より、一度流れが出来てしまった後で

それに逆らったり、とどめようとすることの難しさが

感じられました。

入り口として、是非多くの方に読んでいただきたいと思いました。
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