虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

バラとゆびわ

2006年05月26日 | 
サッカレー 岩波少年文庫
 
 岩波少年文庫でも、堅い表紙の復刻版。
 サッカレーが読みたくなったのに、なんと大人向けは図書館に「バニティ・フェア」も全部揃っておらず、古いこの本がえらいきれいな状態で児童書コーナーにありました。

 これはグリムなどのおとぎ話のその後の世界というか、おとぎ話をちょっと皮肉ったようなもの。
 魔法使いは「魔法は世のためならず」というわけで魔法をやめてしまい、王子様とお姫様とは生まれたときに不幸をプレゼントされる。「それが本人のため」だから、というわけで。
 叔父に地位を奪われた王子様と、謀反で両親の死亡後、一人残されてボロを着てさすらっていたお姫様が、愛し合い最後には結ばれるのだが、その途中の困難や波風はけっこう笑える。
 お姫様、とか王子様はとりあえず地位が安定していればみんなからちやほやされ、誉めそやされ、自分でも何でもできる気になってしまう、とか。ま、こういううぬぼれも王様として必要な素質かもしれません。
 魔法使いも重要なポジションだけど、なんだかもったいないばあさんみたいに正しくて、人が聞きたくないことを言う役回り。持っていれば誰からも愛されるバラやゆびわといった魔法の品も登場し、でもそれがさして本人たちのためにはなっていない。
 お姫様の復権に味方しようと集まったのが爺さんばかりで、役に立つようなことは何もせず、姫が王位に返り咲いたらこいつをやっつけて、こいつを処刑して、とそんな取らぬたぬきの皮算用のリストつくりしかせずに、いざとなったらぜ~んぜん役立たずというのが楽しい。
 王子様が自分を捕らえに来た軍隊に対して3日3晩の演説の末、自分の指揮下に置くところは(おかしくて)涙なくしては読めない。いやあ、これ以上聞かされるのはたまらなかったんでしょうなあ。
 「不幸に負けず学び、力をつけて幸せになった」なんて教訓つきの解説がついてるけど、どう考えても、おとぎ話の予定調和の中にサッカレー節を盛り込んだというところでしょう。

 最近の良い子の皆さん、名木田恵子とかもいいけど、こういうのも読みましょうね。私は小学校の時にアーサー・ランサムさんに教えてもらいました。
「すべての学説はいずれ論破される運命にある」
児童書といえども古典は面白いのよね。

エリザベスタウン (2005/アメリカ)

2006年05月26日 | 映画感想あ行
ELIZABETHTOWN
監督: キャメロン・クロウ
出演: オーランド・ブルーム    ドリュー
    キルステン・ダンスト     クレア
    スーザン・サランドン     ホリー
    アレック・ボールドウィン    フィル

 シューズデザイナー、ドリューは、彼の開発したシューズが10億ドルもの大損害を招き、会社をクビになってしまう。恋人にも捨てられ自殺を決意する。そんな彼に、故郷を訪れていた父親が心臓発作で亡くなったという報せが届き、父の葬儀のためにケンタッキーの小さな街、エリザベスタウンへと向かう。彼は飛行機の中で、陽気なフライト・アテンダント、クレアと出会う。

 あまりピンと来る映画ではありませんでした。自分の世界が崩壊した後どうやって生きていくのか、そのきっかけを与えてくれたのは溌剌した女性だった、みたいなとこはすんなりはいってくるけど、「この映画の中に詰まってること、絶対わかりきらないとこ多いだろうなあ」という意識がまとわりついてはなれない。
 この、白人しか見えない、まるでアメリカ大統領選挙前のテレビ番組で「保守の基盤・中部アメリカの典型的な町」と紹介されそうな、住人オール知り合いのような小さな町のパーティーみたいなお葬式にもびっくりです。そこでスーザン・サランドンがこの役をやったのを納得。
 なんたってアメリカだから「成功」するか「失敗」かの圧迫はすごいんだろうが、そこが今ひとつ実感として伝わってこなかった。日本人の、しかも日々のぬるま湯にどっぷりつかってる私にはだめかも。
「あの頃ペニー・レインと」「バニラ・スカイ」よりも「シングルズ」に近い感じ。この雰囲気は嫌いではないが、小骨が引っ掛かった後のようにスッキリしないものが残ってしまった。
 オーランド・ブルームはトニー・カーティスのような自分の美貌をカリカチュアライズするキャラができるかなあ、と期待しているんだけどどうでしょうか?
 キルステン・ダンストうまいですね。