虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

キングダム・オブ・ヘブン (2005/米)

2005年05月22日 | 映画感想か行
KINGDOM OF HEAVEN
監督: リドリー・スコット 
出演: オーランド・ブルーム  バリアン
    エヴァ・グリーン   シビラ
    リーアム・ニーソン   ゴッドフリー
    ジェレミー・アイアンズ   テイベリアス
    デヴィッド・シューリス  ザ・ホスピタラー

 12世紀のフランス。鍛冶屋のバリアンは子どもを亡くし、妻はその後を自ら追い自殺、打ちのめされていた。そこへ実の父親だというエルサレムを守る騎士ゴッドフリーが現れ、エルサレムへ来るように言う。一度は断ったバリアンだが、妻の遺体を傷つけ侮辱し十字架を奪った聖職者をかっとなって殺してしまう。そして神の許しを請うためエルサレムへ向かう。

 史劇なんですが、今日的メッセージバリバリの映画でした。映像はさすがリドリー・スコットで迫力あり、美しくもあり、戦闘シーンもあの砂漠の地平を埋め尽くすような軍勢とか、良く出来てた。ストーリーもさほどの破綻なく(主人公が庶民育ちなのにやたら強くて不死身なのは主人公だから許す)組み立てられてたと思います。実にたくさん死んでますが、それも一部の好戦敵野心家と、いい子ちゃんから卒業できなかった良心的な馬鹿が招いた悲劇です。神様を道具にしかしない人間とか、微妙なバランスの上での平和とか、実にひしひしわかる。
 だけどなあ、もうちょっと、という印象。
 そう感じられるのは、主役のオーランド・ブルームが実に綺麗だし、たくましくもなってるし、成長しとるんだなあ、と納得はするものの、お話を支える重みがやや足りなく思えるのです。特にラスト、もっと静かな深い感情を見せてほしかった。彼はもう一回分の人生を生きて、出発点に戻り、新しく生き直そうとしているのだから、平家物語の平知盛(この人は自死しちゃうけど)並みの「見るべきほどのことは見つ」という経験をした人間の持つ深さをもうちょっと感じさせてくれたらな…と思ってしまう。
 周囲のおじさん連はすごく良かったので、負けちゃった部分はあるのかも。
 デヴィッド・シューリスの老け役もやたら良かったし、ジェレミー・アイアンズは本当にずっしりと締めてくれます。エルサレム王も病んで弱っているとはいえ、戦士としての名声もある実力者を、マスクなのに実に強烈な印象で演じています。サラディンなんか、思わず「今イスラム世界を代表するような大国があれば、もう少し世界は落ち着いてるのに」と連想が走り、つい涙が出そうなくらいの貫禄。
 リーアム・ニーソンは、主人公に父として、騎士の目標としてもっと影響を与えなくてはいけないように思いますが、私的には印象薄め。
 エヴァ・グリーンはこの役らしい美貌でしたが、エルサレムだけでなく全部を放り出してよかったんでしょうか?これも納得いかない原因の一つかな?