コツコツ頑張れば投資は楽しい!

投資に重要な指標を紹介したい

米国株式市場のリスク意識に微妙な変化

2024-02-21 18:18:51 | 日記
米国CBOE(シカゴ・オプション取引所)が公表するCBOE・VIX指数が3か月振りに15ポイントを上回ってきた。2月13日に15.85となり、その後低下したものの、2月20日には15.42とオプション価格のボラティリティーが拡大し、リスクに備える投資姿勢がやや高まり始めているようだ。2023年11月以降には、このVIX指数が15ポイントを下回り、米国株は上昇傾向を保つ推移が続いていたが、不安感がなく株価上昇する環境に僅かな変化が現れ始めていることには注意が必要だろう。新型ウィルス対策としてFRBのバランスシートが拡大されたことで、過剰流動性に支えらて物価が上昇し、株価も堅調な状況は今年中いっぱい継続するものと想定されるが、長期的な投資姿勢を有する投資家は、徐々に株式で得られた利益を確定し、着実にインカム収益を得られる債券等の投資商品への資産配分を増やし始めるのではないだろうか。


日本株市場の常識が変わる可能性

2024-01-19 04:46:14 | 日記
日本の個人投資家からすれば、日経平均株価の上昇スピードが速すぎることから、利食い売りに押されて下落してもおかしくはないと考えるだろう。しかしながら、世界の投資家からすれば、動くマーケットに注目したモーメンタムやアルゴリズムを利用して投資するという需給が株価を決定するということになりそうだ。日本企業の多くが、企業存続のために蓄積してきた内部留保は大きく、投資家が株主として、余剰となった内部留保を受けとれる権利を獲得しようとする行動は当然と言える。相場格言での、卯年は跳ねる結果となったが、辰巳天井となる2024年から2025年前半にかけて、想定以上の展開が期待されるかもしれない。また、その反動として丙午となる2026年は大きなリスクオフに備える必要があるだろう。

米国国債利回りの推移に変化の兆し

2023-11-19 05:50:27 | 日記
米国の大手債券格付け機関であるムーディーズ(Moody’s Corporation)が、2023年11月10日に、米国国債の格付けを、最高評価で最も信用リスクが低い格付けとされるAaaに対してネガティブであると公表した。政府機関閉鎖の不安が高まったこともあり、米国財政赤字拡大への懸念から、今後Aa1に格下げされる可能性が高まったといえるだろう。既に大手格付け機関であるS&Pグローバル・レーティング(S&P Global Ratings)は、2011年8月5日に、米国国債の格付けを最高ランクのAAAからAA+へと格下げしており、フィッチ・レーティングス(Fitch Ratings Ltd.)も、2023年8月1日に、AAAからAA+に変更したことから、ムーディーズの米国国債格下げが近い将来に発表されるかもしれない。しかしながら、市場参加者は既に、この格下げリスクを債券利回りに織り込んでおり、フィッチが格下げを発表した8月1日に4.05%であった指標米国国債利回りは、10月19日には4.99%まで上昇し、ほぼ5%に達する水準まで価格下落(利回りは上昇)していた。S&Pが米国国債格下げを公表した2011年8月5日も、事前に格下げリスクを懸念して上昇していた米国国債利回りは、格下げ発表をリスク材料出尽くしと捉えて債券の買戻しが拡大し、利回りは低下傾向へと変化していたことから、そろそろ米国国債利回りの推移に変化が現れるのではないだろうか。通常は、財政赤字を背景とする米国債格付けのダウングレードは、債券利回りの上昇要因となるが、市場が先行して米国長期国債をアンダーウェイトしてリスク回避を進めていたのであれば、ムーディーズの米国国債格下げは、需給面での悪材料出尽くしと捉えられ、債券利回りの低下を誘引することになりそうだ。


中長期的な投資姿勢が重要に

2023-11-04 08:59:43 | 日記
地政学的リスクの懸念や米国政策金利高止まりなどの不安心理から、米ドル建て現預金に投資資金が待避し、米ドル高に加え、株価下落や債券利回り上昇(価格が下落)が発生したが、不安心理を背景とする短期的な投機的リスクオフであったようだ。リスク時に上昇傾向となるCBOE(シカゴ・オプション取引所)公表のVIX指数は、11月3日時点で14.91にまで低下しており、資金余剰が継続するマーケットで、投資家は冷静に市場を見守っている。5%近くまで上昇した米国指標10年国債利回りも11月3日に4.5%台まで利回り低下し、割安水準に価格調整した資産には、すかさず投資資金が戻っていることから、中長期的な視野での資産運用が重視されているということだろう。

不安心理を反映した投機に影響を受ける金先物価格

2023-10-22 19:38:17 | 日記
CMEグループが公表する1トロイオンス当たりの金(GOLD)先物価格が2000ドルに迫り、10月20日のCOMEX金先物12月限月価格(GLOBEXコード:GCZ3)は1993.1ドルとなって、市場におけるリスクオフが大きく進んでいるようだ。イスラエル軍によるガザ侵攻の可能性は、米国及びその同盟国と、中国・ロシアを含める政治経済圏分断に繋がるのではという不安心理を拡大させており、利回り水準が高く最もリスクが小さい米国ドル建て現預金への滞留が拡大し、リスク回避資産としての金先物に投機的な買いが集まっているということだろう。しかしながら、ウクライナ問題もイスラエルの混迷も、局地的な紛争であり、世界経済全体の流れを大きく変えるものではないことには留意すべきと言える。ウクライナ問題では、ロシア産原油・天然ガス供給やウクライナ産小麦供給減少という不安心理から、資源先物価格が投機的に大きく上昇したが、代替エネルギーの存在や代替食料資源活用が可能なため、徐々に資源先物価格は落ち着きを取り戻した。今回のイスラエルとパレスチナ政府の紛糾も、中東の原油供給を滞らせるのではという不安心理拡大を背景に、原油先物価格上昇やリスク回避資産としての金先物価格上昇を演出しているが、原油を実際に生産している中東諸国の紛争ではないことから、先回りした投機的な先物買いは、リスク発生時を最大イベントとして、ポジション解消が進む可能性が高そうだ。ガザ地区では多くの市民が苦境に陥っていることから、平和的解決の進展が望まれるが、そのような不安心理を逆利用した投機的売買は、短期的な利益を狙った市場操作に近いものにしか過ぎないことを理解することが重要だろう。指標となる金先物価格は、新型ウィルスショックが懸念された2020年8月に2050ドル台に達し、その後反落したものの、米国でゼロ金利解消が起こった2022年3月に2050ドル水準に近づき、米国政策金利が5%以上に引き上げられた2023年5月には再度2050ドルに迫り、金先物価格が2000ドルを超えれば、不透明な不安心理を反映した過剰なリスクオフが起こっているという可能性が高そうだ。中長期的な投資視点では、そのようなパニック心理で価格下落した資産へ注目することが、将来の成果に繋がるのではないだろうか。

地政学的リスクと市場の反応

2023-10-19 05:32:22 | 日記
ウクライナ問題のみならず、イスラエルでの動向が投資家にとっての地政学的リスクとして影響力を高めている。地政学的な問題がどのように進展していくかについて予想することはできないが、予想できないリスクに対して投資家が対応するのは、リスク資産投資を控えて、現金比率を高めるということになるだろう。また、投資家が慎重姿勢を高めた時には、不安心理の高まりを背景にした、投機的な動きが出やすいことにも注意が必要になる。特に中東における地政学的リスクは、原油輸出が滞る可能性を危惧して、原油先物価格高騰に繋がりやすいが、不確定要因を背景にした投機的資金の需給が影響しており、オイルショック時のように具体的な展開による原油供給逼迫の結果ではないことに留意すべきだろう。もちろん、結果として中東情勢が原油供給量を左右し、原油価格上昇となるかもしれないが、投資において重要なのは、投機的推測ではなく、不確定要因に備えたリスクフリーなキャッシュポジションの拡大による影響への対応だ。現金ポジションを拡大するということは、リスク資産を売却して現金化するということになり、長期債利回りの上昇や株価下落に繋がるが、あくまでも、不安定要因に対する一時的な待避行動であり、リスク資産価格が割安水準まで下落すれば、再び現金からリスク資産投資へのリバランスが起こることを忘れてはいけないだろう。また、地政学的リスク発生時には、有事のドル買いが起こるとする意見もあるが、リスク回避のために、リスクフリーの米ドルキャッシュに投資資金が還流すれば、結果として米ドル買いが起こり米ドル高になる。地政学的リスク対応への初動は、先ず現金比率を高めるということになるが、ウクライナやイスラエルの問題で影響を受けづらい市場は、米国のみということではなく、資源が豊富な中南米の国や、南アジアやオセアニアなども想定され、金利水準が米国よりも魅力的水準であれば、そのような地域の債券投資に中長期的な期待が高まるのではないだろうか。

米国長期債利回り推移に落ち着き

2023-10-12 08:08:07 | 日記
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が公表しているFEDWATCHツールデータでは、米国政策金利であるフェデラルファンドレート誘導目標を5.25%~5.50%に据え置く確率が、来年2024年4月までは最大となっている。米国連邦公開市場委員会(FOMC)の参加メンバーの中には、インフレ警戒感から、更なる政策金利引上げを推奨する声も聞かれるが、市場参加者の多くは政策金利を現状の5.25%~5.50%に維持されると見ているようだ。全米ホームビルダー協会(NAHB:National Association of Home Builders)が公表するNAHB/Wells Fargo 住宅価格指数は2023年8月以降に低下に転じており、米国連邦住宅金融抵当公庫(FreddieMac:Federal Home Loan Mortgage Corporation)が発表する米国30年住宅ローン金利は10月5日の週次平均で7.49%と高止まりしていることからも、そろそろ米国住宅価格上昇には歯止めがかかる可能性が高まっているということだろう。米国中古住宅価格の指標とされるS&P コアロジック・ケース・シラー20都市圏コンポジット住宅価格NSA指数は2023年7月データで対前年同月比プラス0.13%となったが、データ発表が2か月程度遅れることもあり、今後中古住宅価格に落ち着きが見られれば、住宅賃料の安定とともに、コア物価指数低下に繋がりそうだ。MMF金利が5%を上回っていることで、リスク資産投資でのシャープレシオが極端に下がり、標準偏差25の資産では10%の期待収益でもシャープレシオは0.20「(期待収益10%-リスクフリーレート5%)÷標準偏差25%」と低く、後1回0.25%の金利引上げがあるならば、投資するよりはMMFに資金を滞留させた方が有利となることが、現預金への資金滞留を促している。しかしながら、米国政策金利引上げの終息予測が更に高まれば、現預金待避で拡大した待機資金が徐々に投資回帰するのではないだろうか。特に4.8%にまで上昇した米国10年国債や、5.1%に上昇していた米国20年国債への投資等は魅力的で、短期筋の米国長期債先物ショートポジション買戻しも含めて投資資金回帰が見込め、長期債利回りの安定とともに、株式市場にも回復の兆しが期待できそうだ。

IMFの世界経済予測公表への懸念

2023-10-04 06:21:50 | 日記
2023年の国際通貨基金(IMF)年次総会は、10月9日~15日の日程で、モロッコのマラケシュにおいて開催される。そして、この会期中にIMFの世界経済予測が発表されるが、9月19日に公表されたOECD(経済協力開発機構)の経済見通しで2024年の世界経済成長予想が2.7%へと下方修正されたように、中国経済の低迷や米国政策金利の高止まりというマイナス要因を背景に、IMF予想も下方修正される不安感が高まっているようだ。昨年2022年10月11日にIMF経済予測が公表された際には、世界経済減速を懸念した弱気筋のリスク資産売りが加速し、株価の調整や長期債利回りが上昇する結果となった。しかしながら、需給関係でリスク資産価格が大幅下落したことによって、逆に長期的な運用資金の投資が始まり、緩やかな上昇基調へと転換するターニングポイントとなっていた。現在は、リスクフリーレートとなる米国短期金利が5%を上回っていることで、余剰資金はリスクのない短期の現預金に滞留しているが、長期債利回りが5%へと接近してきたことで、そろそろ長期的なポートフォリオ形成が効果的となる水準に近づいたと言えるのではないだろうか。米国の政府機関閉鎖懸念や米国国債格下げ不安に加えて、中国不動産市場の変調など、リスクを回避したい心理状態が高まったが、不安心理という将来予想による需給バランスの歪みの解消は、IMF総会を終えた10月中旬以降に現れ始めるかもしれない。


高金利を背景にMMFに滞留する余剰資金

2023-09-28 12:35:48 | 日記
大幅な政策金利引上げでも堅調な米国経済や、低下スピードが緩やかな米国物価上昇率の背景に関しては、流動性資金の余剰が続いていることを理解すれば、中長期的な投資の参考になるだろう。新型ウィルス流行で、米国政府は2020年3月16日にロックダウン政策を打ち出したが、同時に経済シャットダウンの影響を避けるため、連邦準備制度の保有資産を拡大し、大幅な流動性資金供給を市場に実施した。2020年2月末に約4.2兆ドルだった米国連邦準備制度の保有資産(バランスシート)は、2020年6月に約7兆ドルまで拡大し、2022年4月にはピークとなる約9.0兆ドルとなり、米国経済に極端な資金余剰を発生させたことが個人消費を支え、物価上昇や株価反発の要因となったようだ。一方、2022年2月24日にロシアがウクライナ侵攻を開始したことで、資源供給不足に対する不安心理からエネルギーや食糧品価格が上昇し急速なインフレ懸念が起こったことから、2022年3月16日開催FOMCにおいて0.25%の政策金利引上げが決定され、2022年6月以降に徐々にバランスシートを縮小していく方針が打ち出された。しかしながら、緩やかであったとしても金融引締めへの転換は金融システムへの不安感を募り、2023年3月にはシリコンバレーバンクが破綻し、FOMCにおける金融政策決定でバランスシート縮小幅を拡大することができず、月間で米国国債(財務省証券)を約600億ドル、モーゲージ証券(MBS:住宅ローン担保証券)を約350億ドル程度減額するにとどまっている。2023年9月20日時点のFRBバランスシートは約8.0兆ドルと充分高い流動性資金供給を継続しており、この資金余剰が米国の経済活動を下支えしている半面、物価上昇懸念を抑えるため、高水準の政策金利維持を継続することがFOMC参加者のコンセンサスとなり始めているようだ。確かに、高金利継続は市場の重荷となるが、中央銀行の保有資産量は市場に充分な流動性を提供しており、バランスの良い金融政策が取られるのであれば、高金利を背景に現金やMMFに滞留している待機資金が、徐々にリスク資産投資へと向かい始めるのではないだろうか。既に投機的資金は、通貨先物市場でのドル買いや商品先物市場での原油先物へ向かって先物価格を押し上げているが、短期的な投機資金に利益確定の動きが出れば、その後は、中長期的な収益期待が見込める資産への投資が拡大し始めるかもしれない。

2020年の新型ウィルスショック以降から2022年前半にかけて、米国連邦準備銀行はバランスシートを拡大することで市場の流動性を確保し、資金余剰による過剰流動性市場が形成されることによって、経済全体の下支えや株価等資産価格上昇と、副作用としての物価上昇に繋がる結果となっていた。中央銀行の金融政策決定会議であるFOMCにおいて、インフレ抑制を目的に政策金利引上げと保有資産の緩やかな縮小が実施されているが、流動性資金余剰は継続しており、個人消費の冷え込みを呼びこまない経済対策が可能となっている模様だ。一方で、2022年12月には政策金利が4%を上回りフェデラルファンド誘導金利が4.25%~4.50%となったことから、リスクフリーレートで最も高金利となっているMMFに資金が流入し始め、2022年12月に約5.2兆ドルだったMMF残高は、2023年7月末で約6兆ドルにまで拡大した。米国連邦準備制度のバランスシートは2023年9月20日時点で約8.0兆ドルと高水準であり、市場は余剰資金に支えられて堅調な推移が期待されるが、高金利を背景に、余剰資金はMMF等の安全資産に滞留していることから、2025年後半以降は、政策金利の引き下げが進捗していなければ、余剰な流動性資金に支えられた市場に変化が起きる可能性も否めないだろう。9月26日に公表された米国中古住宅価格指標となる7月のS&Pコアロジック・ケース・シラー20都市圏コンポジット住宅価格NSA指数は、対前年同月比で0.13%の上昇となったが、高い住宅ローン金利(FreddieMacが公表する9月21日の30年住宅ローン週次平均金利は7.19%)によって、全米ホームビルダー協会(National Association of Home Builders : NAHB)が公表する8月の住宅市場指数は低下に転じていることから、住宅価格が落ち着き始め物価指標が安定的に低下し始めれば、米国政策金利引上げの終止観測を背景に、短期金融資産に滞留している待機資金が、徐々に投資に動き始めるのではないだろうか。

政府機関閉鎖懸念による市場調整は長期的な投資機会の可能性

2023-09-26 06:24:28 | 日記
米国会計年度末(米国会計年度は10月から翌年9月まで)の予算案成立に対する民主党と共和党の対立から、米国政府機関閉鎖の不安感が増している。政府機関が閉鎖となれば、公務員の一時的解雇や各種経済データの公表停止など、市場にとっても、不確定要因を拡大する可能性は高まるが、米国財政状況の悪化を懸念した米国国債格付け見通しの変化は、格下げ懸念による長期債利回り上昇を通して市場の重荷となるかもしれない。現在、米国国債の格付けは、S&PとフィッチがダブルAプラス(AA+)と、最高格付けのトリプルA(AAA)よりも1ランク下になっているが、今回の政府機関閉鎖を通して、唯一トリプルAを維持しているムーディーズが格下げを検討し始める可能性が懸念されており、米国の信用リスク低下という側面から、長期債利回り上昇(価格は低下)が短期的に発生している。9月25日時点で、米国指標10年国債利回りは4.5%を超える水準にまで上昇しており、格付けではダブルAとなっている英国指標10年国債利回りの約4.4%をも上回っている。9月20日に開催されたFOMCでは、年内に後1回政策金利を引き上げることを支持する参加者が12名、現在の5.25%~5.50%を維持することを支持する参加者が7名となっているだけではなく、来年2024年第4四半期の金利水準を5%以上とする参加者が10名、5%未満とする参加者は9名で、来年にかけて政策金利は高止まりするとの予測が示されたことから、当面は高利回りの短期金融資産に投資資金が滞留する可能性を高めたといえるだろう。一方で、4.5%を上回る米国10年国債の利回りは、長期的な投資においては魅力的な水準となっており、10月以降に短期的な政府機関閉鎖リスクが改善に向かえば、徐々に中長期的投資を見据えた資金流入により、米国10年国債利回りが低下し始めるのではないだろうか。

米国連邦準備制度のバランスシート

2023-08-14 11:44:47 | 日記
6月に開催されたFOMCにおいて、2023年第4四半期の政策金利は5.6%(5.50%~5.75%)という予測が示された。今後もう1回の利上げ可能性をほのめかすことで、金利引上げ終息期待による株式市場への資金流入を牽制し、株価上昇という資産効果がインフレを助長することへの注意喚起となっているようだ。一方で、CME FEDWATCHツールが公表する、市場参加者によって決定される短期FF金利先物価格から逆算されるフェデラルファンドレートの予想確率は、2024年3月のFOMCまで、現在の5.25%~5.50%に据え置かれる確率が最も高くなっており、次回9月19日~20日開催FOMCで金利引上げを実施しない確率は85%を超えている。2008年に発生した世界金融危機(いわゆるリーマンショック)前に、実効フェデラルファンドレートは約5.25%近辺で推移していたことから、これ以上政策金利を引き上げていくことは経済減速と景気後退に影響するリスクも大きく、市場参加者の多くは、FOMC参加者も金利引上げには慎重にならざるを得ないと予想している模様だ。今後、5.25%以上の政策金利水準が長期的に継続されるならば、高金利が金融システムへの負担を拡大させる不安も高まり、リセッション発生リスクにも繋がることから、株価上昇への警戒感を促しながら、インフレ収束を狙うというFOMCの金融政策は功を奏しているように見える。5.25%を超える高金利継続は、市場参加者に景気後退という不安心理を抱かせるが、実際にリセッション発生となれば、FOMCの政策不備が問われることになるだろう。しかしながら、インフレ対策としての高金利政策は維持されているが、未だに米国連邦準備制度(FRB)のバランスシート(保有資産)は8兆ドルを上回っており、新型ウィルス対策として市場に供給されたマネーが急速に引き締められている状況にはなっておらず、経済活動を支える資金余剰は続いている。インフレ率の低下に時間がかかるのは、高金利ではあるものの、充分な資金が市場に供給されていることの影響が考えられ、量的なFRBバランスシートの縮小が緩やかなスピードで実施されるのであれば、高金利を背景に米国の現金に滞留している資金は、米国政策金利引上げの終息とともに、徐々にリスク資産投資に振り向けられ始めるのではないだろうか。世界金融危機後の景気後退から脱するために、FRBバランスシートは約1兆ドルから4兆ドルを超える水準へと引き上げられ量的緩和が続いたが、景気改善とともに新型ウィルスショック前には4兆ドルをやや下回る水準にまで正常化が進んだ。その後、新型ウィルスショックで強制的な経済活動停止を政府が実施したことにより、FRBバランスシートは約9兆ドルにまで拡大し、その資金余剰が2020年後半以降の過剰流動性マーケットを演出したようだ。現在は、景気に配慮した緩やかな金融正常化が進められており、2023年7月31日時点で約8.2兆ドルであることが理解されれば、政策金利は5.25%を上回っているものの、FRBバランスシートは新型ウィルスショック前の2倍の水準に位置し、この資金供給がリセッションに陥るリスクを軽減していることに気づくだろう。新型ウィルスリスクの落ち着きとともに、経済活動は改善し始めており、個人消費に明るい兆しが見え始めれば、長期的な視野で、徐々にリスク資産投資拡大が見込めるのではないだろうか。

日銀短観と需給ギャップ動向による市場の変化

2023-07-18 14:26:10 | 日記
7月3日に公表された日本銀行2023年6月短観では、大企業の業況判断が4ポイント改善したが、2023年の事業計画前提となっている想定為替レート平均値が米ドル円では132.43円 、ユーロ円で140.28円となっていることから、輸出関連企業では現在の為替水準でも企業収益の上方修正が可能なようだ。しかしながら、この為替予想の前提には、2023年秋口以降に日本銀行の金融政策が変化する可能性が内包されていると思われる。例えば、トヨタ自動車株式会社が2023年5月10日に公表した決算説明会資料では、2023年度(2023年4月~2024年3月)の米ドル円想定為替レートは125円で、2022年度の135円から10円の円高が想定されており、日本銀行の金融政策変更を念頭に置いた保守的な予想といえるだろう。米国の短期金利先物価格から逆算予想されるCME FEDWATCH TOOL では、7月26日開催FOMCでの0.25%金利引上げ確率が7月18日時点で約97%となっており、米国政策金利引上げを背景に米ドル高になっても良さそうなものだが、市場参加者は、既に2023年に米国金利引上げは終了し、秋口以降に日本銀行のYCC(イールドカーブコントロール)やマイナス金利の修正が起こることを織り込んで、米ドルに対する円のショートポジションを解消し始めている。7月5日に公表された日本銀行による需給ギャップと潜在成長率の分析データでは、2023年第1四半期の需給ギャップがマイナス0.34%となっていたものの、内訳での労働投入ギャップはプラス0.12%に変化し、5月に新型コロナウィルスの取り扱いが5類感染症となり、日銀短観加重平均DIも改善してきている状況では、10月4日に日本銀行が公表する需給ギャップがプラスとなる可能性もありそうだ。数学的判断を重視し、金融政策決定にはテイラールールに沿った判断を行うであろう植田日銀総裁にとって、需給ギャップのプラス改善は、金融政策変更の可能性を高めるのではないだろうか。もちろん、赤字国債発行による大きな財政赤字を抱える日本にとっては、長期金利の大幅上昇は避けざるを得ず、慎重に金融政策の微調整を実施していくことになりそうだ。2024年に向けて日米長期金利差が緩やかに縮小するのであれば、極端な米ドル高推移は予測しづらく、やや円高傾向の可能性を秘めながら、為替の変動率が低下する展開となるかもしれない。一方で、需給ギャップの改善そのものは、日本経済の復調を示しており、実体経済の回復とともに、株式市場にはポジティブな影響を与えることになりそうだ。

市場はFOMCの金利引上げを疑問視

2023-06-16 07:40:57 | 日記
米国連邦公開市場委員会(FOMC)では、2023年第4四半期までに0.5%の政策金利引上げの可能性があるとの予測が公表されたが、CMEグループが発表しているFEDWATCHツールでは、7月のFOMCで0.25%金利引上げがあり、その後は5.25%~5.50%の水準で推移し、2024年に入って政策金利は低下し始めるとの予想確率が最も高くなっている。FOMCではインフレ率を抑え込むことが最重要課題だが、そろそろ金利引上げを終了させるという予測を公表すれば、長期債利回りの低下や株価の上昇に繋がって、資産価格の上昇から物価抑制への障害になる可能性もあり、市場参加者に対して牽制をする狙いが、今回の政策金利予測の上方修正の背景にあるのかもしれない。機関投資家の多くは、昨年の疫病・戦争・リセッションという不安材料の重なりで余儀なくされたリスクオフで現金ポジションを高めていたが、既に日本株やNASDAQの上昇に見られるように、リスク資産の組み入れを拡大させなければ、パフォーマンス競争に劣後する状況となっている。したがって、FOMCによる政策金利引上げを懸念して弱気の運用姿勢を継続していては、運用競争で負けてしまうことから、年内の政策金利引上げのピークアウトを織り込んで、徐々に金利水準では魅力的となっている長期債への投資ポジションを高め、グローバルな視野で株式への投資も拡大し始めているようだ。7月のFOMCで政策金利が再度引き上げられる可能性も高く、当面は慎重な姿勢でリスクオンが進み始めるものと想定されるが、割安と考えられる資産には、投資資金の流入が継続する可能性には注目が必要だろう。例えば、米国の政策金利引上げの影響を受けて、インフレ率抑制のために政策金利を引き上げ続けていた新興国では、高金利の影響でインフレ率の低下がみられる国もあり、米国の金利引上げがピークアウトすれば、政策金利の引き下げも考慮されることになりそうだ。ウクライナ問題で資源価格が高騰し、2022年4月にインフレ率が12.13%となっていたブラジルでは、2022年8月に政策金利となるフェデラルファンドレート目標金利(SELIC)を13.75%にまで引き上げたが、現在もこの金利水準を維持しているものの、インフレ率は2023年5月に3.94%まで低下しており、今後政策金利を引き下げる可能性は高まっているだろう。6月14日時点のブラジル指標10年国債利回りは11.2%となっているが、政策金利引き下げとなれば、長期債利回りの低下や株価指数の上昇に繋がる期待感が高まり、投資家も注目し始めることになりそうだ。現時点で、インドの5月インフレ率は4.25%に低下、インドネシアの5月インフレ率は4.00%にまで低下してきており、新興国も含めたグローバルな投資分散が、今後進み始めるのではないだろうか。

2023年6月FOMCはインフレ抑制に強い姿勢を示す

2023-06-15 05:36:00 | 日記
2023年6月14日開催のFOMCで参加者の政策金利予測が公表されたが、2023年3月FOMCと比較して大きくタカ派へと変化する結果となった。6名のFRB理事と12名の連邦銀行総裁による合計18名の予測集計となるが、コアになる9名は、2023年6月時点で5.625%(5.50%~5.75%の中間値)を予測しており、年内にまだ0.50%、0.25%の引上げであればあと2回の政策金利引上げが必要ということのようだ。FOMCでインフレ抑制に対する強い姿勢が示されたわけだが、逆に5.5%を上回る水準まで金利引上げが実施されれば、経済活動への抑制効果を避けて通ることはできないだろう。株価は順調に上昇傾向となっていたが、FOMCの金利引上げ継続予測は、株価の上値を抑えることになりそうだ。次回以降のFOMCは、7月25日~26日、9月19日~20日、10月31日~11月1日、12月12日~13日と開催されるが、5%を上回る政策金利水準が長期化するのであれば、徐々に米国景気指標の冷え込みも見込まれることになり、このところ上昇スピードが速かった日経平均株価も、夏休み入りということになるかもしれない。

微妙な推移の米国住宅価格指数

2023-05-31 06:52:43 | 日記
2023年3月時点での中古住宅価格指標となるS&P コアロジック・ケース・シラー20都市圏コンポジット住宅価格指数は、対前年同月比でマイナス1.15%となった。米国消費者物価指数に最も大きな影響を与えるのが住宅賃料だが、住宅価格がマイナスとなれば、そろそろ物価指数も低下傾向となり落ち着きを取り戻しそうだ。米国政策金利は既に5.00%~5.25%にまで引き上げられ、フレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)が発表した5月25日の30年物固定住宅ローン金利の週次平均は6.57%となっており、住宅賃料の上昇に変化が現れれば、金利引上げの効果が物価指数にも影響するだろう。一方で、3月のS&P コアロジック・ケース・シラー20都市圏コンポジット住宅価格指数は、2月に対し対前月比で1.55%の上昇となっていることから、短期的な住宅市場動向には、まだ注意が必要になる模様だ。6月13日~14日にはFOMCが開催されるが、金利を引き上げたいタカ派のメンバーは短期的な住宅価格上昇を注視し、金利を5.00%~5.25%に維持したいメンバーは対前年同月比でマイナスとなった中古住宅価格を金利引上げの成果と捉えるため、6月のFOMCでは現状水準を維持することになるのではないだろうか。米国債務上限引き上げ問題が依然として市場リスクとなっているが、引き上げ法案に妥結が見られれば、不安材料出尽くしの観点から、債券利回りの低下が期待され、米国債務拡大に対する懸念は、米国債格下げ予測も含めて、株式市場にとっての短期的な警戒要因になるかもしれない。経済指標の変化は短期的な市場変動要因に繋がるが、米国政策金利引上げ傾向の変化や住宅価格等物価動向の落ち着きは、中長期的な視野での投資姿勢を下支えしてくれることになるだろう。