二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

サルスベリの影深し(ポエムNO.4-06)

2020年08月14日 | 俳句・短歌・詩集
   (2019年8月 高崎)



寝苦しかった夢の覚めぎわ
墓地へとつづくヒマワリのあいだを
おろろん おろろん と
鼻歌を歌いながら
おろろん おろろん と
遠くへいこうとしている人たちがいる。

ああ ああ影深し。
影深し。
お盆でにぎわう墓地の隅。
おろろん おろろん
風が吹けばふくがまま 靡くがまま
彼ら彼女らの足おとのさやけさ。

遠くへいこうとしている人と
遠くから帰ってきた人が
愉しげに挨拶をかわしている。
まるで鼻歌を歌っているように。
おろろん「背中に乗ってくれ」
祖父や祖母や 父や母

その人たちが元気だったころのうしろ姿が
もうずいぶん長いあいだ 線香の香となって濃くうすく
ゴホンゴホン けぶっている。
暑いあつい夏の盛り。
「こんにちは さよなら こんにちは」
こんにちははさよならのはじまりなのさ。

墓地のサルスベリの赤が
永訣の日を思い出させるように胸に沁み入る。
お盆に咲く花 そよ風の贈物。
おろろん おろろんとご先祖を担いで帰る。
この世とあの世の境に咲く花の
ああ 影深し。

サルスベリの影深し。



※ 昨日は迎え盆であった。撮影しようとカメラを持っていったが、
どういうわけかサルスベリは一つも咲いていないため、昨年のもので代用した。
法事をする家があり、駐車場は満杯。

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