二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

記憶の遠い路地(ポエムNO.3-23)

2019年11月17日 | 俳句・短歌・詩集
「そうか そうだったんだね」ときみはおもしろくもなさそうに笑っている。
そう・・・というのが何なのかわからずに
ぼくは戸惑っていた。
何が 何で「そう」なんだろう。

さよならとさよならのあいだを通って
いつもの朝の光が射し込んでくる。
五匹の猫たちがたむろする路地。
昔そこにたたずんでいた人はもういない。

「そうか そうだったんだね」
説明したってわかりっこないから。
きみは手をのばせばとどく距離にいるのに
そのことばの中身がぼくにはわからない。

「わからないことが 普通なんだ」と
いやにしっぽの長い馬や跳ぶことができない蛙 
黄色い蜆がぶつくさささやいている。
夜明けの 夜明けという波打ち際で。

「そうか そうだったんだね」
まっ白ではなく 少し汚れていて
くたびれていて よじれている。
「そうか そうだったんだね」

シャガールの絵から抜け出してきたやたら眼の大きな女や
その後ろを通過していく古めかしいボンネットバスや
まなざしがふるえるような昨日撮ったばかりの写真や
小学生のとき買った朔太郎さんの第一詩集や

それらすべて少し汚れていて
くたびれている。
ことばにはならないものの気配・・・の気配。
「そうか そうだったんだ」

たいしておもしろくもなさそうにぼくがいうと
きみはやっぱり笑って 笑っている。
ぼくの記憶の 遠い路地の奥で。
「そうか そうだったんだね」

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