
う~ん、オープニングからヒタヒタと続く緊張感ある隙のない演出にとにもかくにも映画的昂奮を覚えてしまった。ただ…。
ふとしたきっかけから手に入れた大金を出どころのヤバさは承知の上で持って逃亡を図るベトナム帰還兵モス。
そんなモスを追い続ける、人間的感情は微塵もないもののどこか主義が優先する律儀さを持った殺人マシーン男シガー。
そしてそんな二人の逃走・追跡劇をはたから見やりながら、時代の移り変わりを諦観とともに嘆き戸惑う老保安官エド。

そんな三者三様の男たちの思いが交差するこの物語、まず何と言ってもきっと観た人誰しもが覚えるであろうシガーに扮するハビエル・バルデムの強烈な風貌と特殊な武器の存在感が圧倒的。
そして妙に礼儀正しく振舞いながら、まさに理不尽な価値判断で起こされる殺人の数々に対する反発を通り越した不気味さ。
人の生死に関してコインの「重さ」程度しか感じないこのエキセントリック殺人野郎・シガーを観るだけでもこの映画の存在価値はあるのではと思うほど。

そんな彼に対してかつて『世界の警官』などという手前勝手な思い込みで、ある意味世界にプレゼンスしていたアメリカの、あたかもイラク介入し続けている現在の姿とを重ね合わせることもできるのだろうけれど、もっともっと深いところでいろんなことをこの映画では訴えかけている(はずだ)。
例えば1980年という時代設定、あるいはテキサスという国境の州の舞台設定、そこにベトナム帰還兵、ドラッグ、違法滞在、さまざまなキーワードとともに今あるアメリカの姿がいろんな意味で照射され、そういった点がアメリカでの高い評価につながっている(ような気がする)。

ただつまるところ、原題である『 No Country for Old Men 』の意味を (あたかもボブ・マーレーの『 No Woman No Cry 』のごとく)、「老いたる者たちの国ではない」と訳するべきか「老いたる者たちには国はない」と訳するべきか 判断しかねるものにとって、正直言ってどこまで理解できていたのかは決して定かではなく、ましてや『 No Country for Old Men 』というその言葉自体は、実は近代科学主義に席捲される19世紀末から20世紀初めのヨーロッパで、時代に反抗するように神秘とロマン、想像、夢の力を歌ったアイルランドの詩人W・B・イェイツの詩「ビザンチウムへの船出」の冒頭の引用だと知らされても、返す言葉がない情けなさがあったりもしてしまうのであります。
ともあれ単なる追跡劇と逃亡劇というクライムサスペンスの範疇から大いに逸脱した、いろいろと考えさせられる映画(のはず)だ。
今日の1曲 “Against The Wind ” : Bob Seger & The Silver Bullet Band
音楽がほとんど排除されているといった意味でも画期的な映画でしたが、そんなことはお構いなしで(笑)80年にリリースされた曲で何かないかと探しているうちに見つけたのが知る人ぞ知るボブ・シガーの代表曲であるこの曲。
ルーツロックの荒々しさと持ちつつキャッチーでポップな感覚を持った骨太ロックンローラーとしてスプリングスティーンと並び称せられた実力派として評価の高く、またこの曲ではイーグルスがコーラス参加していることも話題だったりしましたっけ。
そんな彼の当時のステージはコチラから
ふとしたきっかけから手に入れた大金を出どころのヤバさは承知の上で持って逃亡を図るベトナム帰還兵モス。
そんなモスを追い続ける、人間的感情は微塵もないもののどこか主義が優先する律儀さを持った殺人マシーン男シガー。
そしてそんな二人の逃走・追跡劇をはたから見やりながら、時代の移り変わりを諦観とともに嘆き戸惑う老保安官エド。

そんな三者三様の男たちの思いが交差するこの物語、まず何と言ってもきっと観た人誰しもが覚えるであろうシガーに扮するハビエル・バルデムの強烈な風貌と特殊な武器の存在感が圧倒的。
そして妙に礼儀正しく振舞いながら、まさに理不尽な価値判断で起こされる殺人の数々に対する反発を通り越した不気味さ。
人の生死に関してコインの「重さ」程度しか感じないこのエキセントリック殺人野郎・シガーを観るだけでもこの映画の存在価値はあるのではと思うほど。

そんな彼に対してかつて『世界の警官』などという手前勝手な思い込みで、ある意味世界にプレゼンスしていたアメリカの、あたかもイラク介入し続けている現在の姿とを重ね合わせることもできるのだろうけれど、もっともっと深いところでいろんなことをこの映画では訴えかけている(はずだ)。
例えば1980年という時代設定、あるいはテキサスという国境の州の舞台設定、そこにベトナム帰還兵、ドラッグ、違法滞在、さまざまなキーワードとともに今あるアメリカの姿がいろんな意味で照射され、そういった点がアメリカでの高い評価につながっている(ような気がする)。

ただつまるところ、原題である『 No Country for Old Men 』の意味を (あたかもボブ・マーレーの『 No Woman No Cry 』のごとく)、「老いたる者たちの国ではない」と訳するべきか「老いたる者たちには国はない」と訳するべきか 判断しかねるものにとって、正直言ってどこまで理解できていたのかは決して定かではなく、ましてや『 No Country for Old Men 』というその言葉自体は、実は近代科学主義に席捲される19世紀末から20世紀初めのヨーロッパで、時代に反抗するように神秘とロマン、想像、夢の力を歌ったアイルランドの詩人W・B・イェイツの詩「ビザンチウムへの船出」の冒頭の引用だと知らされても、返す言葉がない情けなさがあったりもしてしまうのであります。
ともあれ単なる追跡劇と逃亡劇というクライムサスペンスの範疇から大いに逸脱した、いろいろと考えさせられる映画(のはず)だ。
今日の1曲 “Against The Wind ” : Bob Seger & The Silver Bullet Band

ルーツロックの荒々しさと持ちつつキャッチーでポップな感覚を持った骨太ロックンローラーとしてスプリングスティーンと並び称せられた実力派として評価の高く、またこの曲ではイーグルスがコーラス参加していることも話題だったりしましたっけ。
そんな彼の当時のステージはコチラから
この作品とアカデミーを競った例の作品のニキダスさんのコメントのアップも楽しみにしています!!
こちらもヘビーです・・・。
この映画の原題、私も意味がとりづらいなと思っていたのですがそれをバッサリ「ノーカントリー」で切っちゃう邦題はますます意味がわからないですね…。
もうどんなだったか覚えてないですがこの映画を見た夜、変な夢をみました。
確かにシガーの存在感は際だっていて、そこを中心に見るだけでも
充分「堪能」することは出来たのですが、
勿論それだけでは収まりきらないメッセージを受け取り損ねたというか、
正直未消化な部分が多すぎました。
ちなみに例の作品、やっぱりヘビーですか?
楽しみでありつつ、どこか不安だったりもするのですが…。
◇雲九さん
この邦題の安直さはやはりよろしくないですよね。
それにしてもへんな夢を見る気持ち、良くわかります。
思えばシガーって、老保安官の夢の化身だったのかも知れませんね。