どうしたんだろう、まだ金木犀の香りがしない。四年前のあの鮮烈な印象を忘れない。芳香剤のようで嫌うかも知れぬが、新鮮で季節の移ろいを強烈に教えてくれた。
ゆっくり楽しめたら、どんなにいいか。暑いか寒いか、風が強いか弱いか。何の花が香っているのか。どんな鳥がさえずっているか。判らぬままに過ぎてゆく日々に、何の価値があろう。
今夜あたりから雨の予報。秋が一気に進むと、予報士のお姉さん。ひと雨毎にも、深まってゆく。
今日の一枚:五時十五分頃、神社の展望台にて。
空気が澄んでいる。カワセミの川の土手で、西を見れば青黒い富士山がはっきり見える。
≪初雪は ちょっと待てと 黒き富士≫
富士山の初雪の統計を調べてみると、データをとり始めたのが1936年。最も早い初雪は、1963年7月31日、平均日は9月14日だそうだ。18日、時期的にはいい頃合い。だが、そういえば、最近初雪のことを耳にしない。初冠雪は気にしていると、地方紙に載ったりして分かるのだが…、どうなっているんだろう。
統計を調べるついでに分かってきた。それは、山頂での常駐観測がなくなってしまったから…。
気象庁は、その年の山頂での1日の平均気温が1年で最も高い日以前の雪を終雪、以降の雪を初雪と決めている。可能性として初雪が終雪になることがある。だから、人がいないと初雪の判断は難しい。2004年9月30日富士山測候所が常駐観測を終了、「初雪情報は提供できなくなる」。以降、初雪情報は発表されていない。と、いうことだ。
ちなみに、初冠雪も複数の場所(河口湖測候所、甲府地方気象台)で観測していたらしいが、2003年9月30日で河口湖測候所の有人化業務が終了し、甲府地方気象台に一か所に。いろいろな気象データが衛星などによって集められるのはいいが、どこか風情を犠牲にしてしまっているように感じる。
今日の一枚:6時30分ころ、カワセミの川の土手にて、北の空を仰ぐ。
雨の音、それでほっとして、また夢の中…。
何かの拍子で目が覚めた。南から北へ黒い雲が流れてる、白い雲が流れている。青い月。隣の棟の壁面が赤い。しまった! 5時15分、太陽がいい角度になるのを待って散歩に出よう。先ほどまでの雨で草木にたっぷり水滴がついている。
5時30分、出発。法師蝉、一人寂しげに、切り通し。濁流、カワセミの川。…巨大レンズの展示会を迂回して。
土手の草むら! !!
集中が切れかかったとき、西の方、振り返ると虹。6時30分。どこか薄ぼんやり、秋のせい? でも、すごい。背景のスクリーンが風で飛ばされているわけで、その流れに合わせて、虹の橋が西から北西、北へと切れ切れに伸びていく。
神社の森の中。秋の演出者たち、木々には幾分早い。だが、彼らばかりではなかった。
≪秋の蜘蛛 光の輪の中 錦織る≫
フウ~ッと大きな息をついて、展望台。今日はおしまいと、カメラをザックに収めた。
今日の一枚:コースに出て間もなく畑の道。かろうじて赤い時間の名残がある5時35分ころ。