虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

緊張が強い子 と 心と心が近づく時、お互いの絆が生じる時 7

2014-07-11 15:31:42 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

先日、初めて教室に来た4歳の男の子に

「棚の上のものを勝手に取ったら危ないよ。取りたいものがあったら、

先生に言ってね」と注意したところ、すっかりむくれてしまいました。

自分の服についているひもの先をつまんで、そうっとそうっとこちらに近づいてきて、

注射器でちくんと刺す真似なんでしょうけど、それをわたしの腕に押しつけてきました。

顔は「先生をこらしめてやるぞ」と真剣そのものなのですが、

ひもの先は丸いし、押しつけるといっても、そろりそろりとこちらが

気づかないくらいの力の入れよう。

あまりにも攻撃力がない武器に、あきれるやらおかしいやら……。

 

その話を教室に来た少し大きな子たちに話すと、

「先生が4歳の子にやっつけられた」と大受けで、

この男の子は「先生をこてんぱにやっつけた(子どもたちの言葉)武勇伝の持ち主」

として、話の上ですっかり人気者になっていました。

いろいろな年代の子らと、この話題で盛り上がっていたとき、

その反応にハッとする瞬間が何度かありました。

 

普段からちょっと緊張が強いAくんのお姉ちゃんのBちゃんが、

この話を小耳にはさむやいなや、「えっ?悪い子の話?Aのこと?」とたずねました。

内容ははっきり聞こえなかったけれど、

「ええー!先生、やっつけられたの?」「うわぁ、わっるー」という友だちの相槌を

聞いて、Aくんの話だと思ったようです。

 

Aくんはひねくれた性格でも乱暴でもなく、むしろ情に厚くて人懐っこい性質です。

でも、感覚が過敏だったり、力加減を調節するのが苦手だったりするので、

おふざけのつもりで始めた行為がついエスカレートしがちで、

対人面での失敗が多いのです。

Aくん、Bちゃんのお母さんは決して子どもを悪い子扱いする方ではありません。

これまでも子どもたちのことを、悪く言うのを聞いたことがないほどです。

でも、「悪い子の噂」と聞いて、Bちゃんの口に即座にAくんの名前があがったのは、

常に「Aくんが悪さをして注意を受けるかも……」というピリピリした思いが

胸の中にあるからなのかもしれません。

当のAくんは、Bちゃんに「えっ?悪い子の話?Aのこと?」と言われても、

「何でぼくが?」と言い返すわけでもなく、

「ちがうちがう。この間、先生が、おそろしくこわーい目にあったのよ。

実は全然、こわくないんだけどね。ほら、パーカーのフードの部分をキューッとしぼる

部分についているようなひもがあるでしょ。その先っぽは、とんがってもいないし、

固くもなくて……」というこちらの話に引きこまれて熱心に耳を傾けたあとで、

照れたように静かに笑っていました。

 

次回に続きます。

 

 


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