虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

環境と遊びだけでは、勉強という意味で力がつくのでしょうか?

2015-06-12 09:34:14 | 教育論 読者の方からのQ&A

 

こんなコメントをいただきました。

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正しい生活習慣や道徳教育、豊富な自然環境、

内側からの衝動による主体的な遊びをたっぷり…などだけで、

勉強という意味での学力がつくかというとそうでもないような気がするのですが、

どうでしょうか?

最近その様な事を考えていて、先生の少し前の記事

「2、3歳児の遊びを知的な学びの世界につなげるには」というような事が

とても重要なポイントなのではないかな、と感じています。

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とても大切な指摘だと思います。

うちの子の小学生時代、子育て環境をナチュラルで良いものにしよう~と

がんばっている方々と、よく交流していました。

いくつかの親子のサークルにも参加していました。

いっしょにキャンプに行ったり、子どもたちに演劇を見せたり、

泥んこ遊びや手芸や料理をしました。

確かに、そうした活動は、子どもたちをたくましくも自発的も利発にも

しているようでした。

けれど私は何か物足りませんでした。

イベントの合間に、子どもたちがずらりと並んでマンガを読んでいる姿にも

少し引っかかりました。

何が物足りなかったのでしょう…?子どもたちのエネルギーがいつも分散してしまって、

知的なものや、自分自身を向上させていく方向につながっているように見えなかったのです。

参加している子どもたちはそれぞれ塾や習い事にも通っていました。

そうして豊かな体験もして…それでも、ひとつひとつのイベントが、あ~面白かった~で

終わっていくのはなぜなんだろう?と感じていました。

 

エネルギーが分散してしまう…そう感じた理由は、子どもたちが、自分を肯定的で

将来さまざまな可能性が花開いていく存在としてイメージしていないように

感じたからです。

小学生の中学年くらいで30代後半の主婦のつぶやき…みたいな自分へのあきらめの

言葉があるのです。

またあこがれて自分の将来のイメージを重ねられる人物が、いないようなのです。

 

自分という核がない感じ。

これは現代の子に共通するものなのかもしれません。

勉強してがんばって自分を大きく成長させたい 夢を実現させたいという意志のない子に

勉強をさせることは、難しいです。

エネルギーの方向がこれから訪れる未来の方向に向かわずに

今すぐ受けれる快感のところでとどまっている場合、

いくら周りが熱くなっても、本人のやる気は年々冷めていくのではないでしょうか。

 

多くの親御さんは

子どもが何かできるようになることにはとても興味を持っています。

能力が他人からどう評価されるかにも関心があります。

けれども

子どもの心が何を欲しているか

夢見ているか

あこがれているかに、無関心な方は多いです。

 

学習に対する意志や意欲を高めるよりも義務でがんじがらめにして、

やらねばならない状態を作って子どもを操作する方が手っ取り早いと

感じている方もいます。

 

子どもを操作したくはないそれに操作してもうまくはいかない…

ならどうすればいいの? と悩んでしまいますよね。

 

私は学習に対する意志や意欲は、適度な飢餓感から生まれるように感じています。

食での飢餓感ではありません。

さまざまなものが与えられすぎたり、環境が整いすぎたり、何でもできすぎたり、

ほめられすぎたり、やることが最初から決まっていたりせずにちょっと足りない、

物足りないという経験から生まれる飢餓感。

それが、足りないものを補おう、欠如感を埋めようという気持ちや、

より良い状態にあこがれる気持ちを育くむように思うのです。

 

刺激が強くて、何でもすぐ満たされる生活をしていると、

地味な活動には少しも心が動かなくなります。

でも勉強って本当に地味な作業の連続でもあるんですよね。

例えば、質のいい学習ソフトが出てるので、DSで勉強すると手っ取り早く知識を

吸収することができます。けれども、そうした学習法を繰り返していると、

地味に紙工作をするときのように、刺激が少ない対象に自分から創造的に関わって

いこうとする態度が失われるように思うのです。

とにかく勉強って、どこまでいっても『地味』な相手です…。

それを好きになって、何年間も努力し続けよう…と思うなら、

自然の不思議に心を動かされたり、手作業をすることに心地よさを感じたりするような

今の時代を逆行するような地味~な感性が必要だと思うのです。

みんなからスポットライトを浴びて表彰されなくても、

親から認めてもらったり、好きな先生からちょっと褒められることに喜びを感じられる

感性が必要だと思うのです。

知りたいな~なぜだろう!という欲求が満たされたときの満足感。

自分のできるようになったことを、

お友だちから「教えて~」と頼まれるときの誇らしい気持ち。

ひとりだけできなかったことを、何とかがんばってできるようになったときの達成感。

教育産業の都合や大人のエゴに絡んだものが、子どもの世界を引っ掻き回さなければ、

いつの時代の子も、学習にリンクしていくそうした地味~な喜びを、

心地よく感じる存在です。

でも、今の時代、先に強すぎる刺激を受けすぎると、(食前にお菓子を食べてしまった

ときのように)地味~な喜びを感じる感性が鈍ってしまうのではないでしょうか。

 

子どもの脳を育てるためには環境と遊びが大事♪

でもそれだけでは足りないですよね。何が足りないのでしょう?


◎子どもが自分の人生を自分で歩んでいるという実感

自分でできるようになりたいと感じること。やりたいことを選ぶこと。

うまくいかないときに自分で悩むこと。飽きたときに自分で決意すること。

親や先生がやるべきことを決めて、ただ受動的にそれをこなすだけでは、

高学年を過ぎるころには、だんだんエネルギーが枯れていきますよね。

 

◎適度な飢餓感

知的な遊びを楽しく感じるくらいの刺激の強すぎない暮らし。

工作に喜んで取り組めるくらいの、努力なしに結果を手にしすぎない暮らし。

 

◎遊びの世界が技術をマスターすることや、知的な好奇心を満たすこと

好奇心を広げることにリンクしていること。


◎読書が子どもの義務ではなくて、家族にとっての楽しみであること。


◎あこがれたり、知的な興味を共有しあえる仲間がいること。


◎『個性と才能を見つめる総合学習モデル』J.S.レンズーリ

で紹介されている子どもの個人の才能を適切に伸ばす環境を用意する。

(これに関しては、またの機会にくわしく紹介しますね)


そうしたことのひとつひとつがとても大切なのだと思います。

もちろん幼児にとっても!

 

ただ足りないものがあるからとあせる必要はないと思います。

まず何が足りないか気づいた時点で、大きな進歩ですから。

足りないもの…というのはプラスするより、

今あるものから何かを減らしていくとうまくいくものがほとんどのはずです。


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3 コメント

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Unknown (ヒヨコママ)
2015-06-12 14:13:26
はじめまして。
1歳四カ月の息子の母親です。

児童館などでの集団遊びができなく
悩んで色々検索してこちらのブログにたどりつき、読ませていただきました。

とてもショックをうけました。
息子のこと、全然わかってあげられてなかったなと。
こんな風に遊んでほしいという
私の想いばかりで、息子のこれをしたい!
という気持ちに寄り添えてあげられなかったなと
反省でいっぱいでした。

息子のことをもっと理解したいので、先生の講座に参加したいなと思いました。

ネットに弱く参加方法がわからないのですが、こちらで参加表明をすればよろしいのでしょうか。

よろしくお願い致します。
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Unknown (ここる)
2015-06-12 20:50:34
この記事本当にそうですよね。
現代人は満たされすぎていて
何をするにも、どのくらいサービスしてもらえるか?
という事を競い合っている気がします。

子供の環境に飢餓感を与えるには
(素朴に育てるには)
まわりの人からは
かなり変わった価値観の親だと
思われるかもしれません。
何せ時代を逆行しようとしていますから。

そういう時も気持ちがぶれずに
前に進めるような親であれば
子供も変わってくるのかな?
とおもいます。
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初めまして (KANA)
2015-06-12 22:13:01
2歳5ヶ月の娘を育てるKANAと申します。
奈緒美先生の丁寧で思いやりのある文章、そして数々の問題提起を大変興味深く拝読し参考にしております。

只今幼稚園選びの最中なのですが、ヨコミネ式・モンテッソーリ・北欧式等々、各園共に盛り沢山な様子に何となく違和感を感じておりましたが、先生の仰る「適度な飢餓感」に頭のモヤモヤがスッーっと晴れる思いがしました!

また周りのお母様方の色々な経験をさせたいとの思いから、毎日何処かに出掛ける様子にも何となく不思議な思いがしておりましたが、そちらも謎が解けた思いです。

毎日が遊園地の様な日常では小さな感動を感じる事が出来ず、正に先生の仰る地味な喜びを感じる感性が鈍ってしまいますね!

子どもには出来る限り最善で最良の環境を、と何でも与え過ぎるのは良くないなぁ~と反省しました。
子どもの心から望む先をしっかり見逃さずにいたいと思います。
でも適度な飢餓感を演出する加減は中々難しいですね。

今後も是非とも参考にさせて頂きます。
また当方関東在住ですが、いつか先生の教室に参加出来たらと夢見ております。
長文失礼しました。
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