虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

現在の子育て、幼児教育の盲点 (間違った幼児教育が意欲と考える力が弱い子を量産している)6

2015-09-26 17:48:11 | 教育論 読者の方からのQ&A

現在の子育て、幼児教育の盲点 (間違った幼児教育が意欲と考える力が弱い子を量産している) 3

で、『学びの物語の保育実践』の中のこんな言葉を紹介しました。

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★ 子どもは自分より高い技能を持つ他者とかかわり合うことを通じて、

文化が提供するさまざまな道具(目に見えるモノ的道具だけでなく、言語や思考こそ

「文化的道具」という見方に立っています。)

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虹色教室では、工作の他にゲームやごっこやブロック制作や実験など

さまざまなことをして遊ぶのですが、

何といっても工作をしている時ほど、この言葉にあるような「目に見えるモノ的な

道具だけでなく、言語や思考といった文化的な道具」を提供していることを

実感することはありません。

物作りは、子どもの日常にあるありとあらゆるものを対象としていますし、

それらを想像力を使って形にしていく活動です。

問題にぶつかって解決することもあれば、サイズや形について気づくこともあります。

目標や目的を持つこと、イメージすること、模倣すること、手順について

思いを馳せること、手を使うこと、選ぶこと、判断すること、問題を解決すること、

他者から教わること、集中してやり遂げること、言葉で説明すること、

うまくいかない状況と折り合いをつけることなど、物作りを通して子どもがする体験は

多岐にわたります。

 

先日、年少のFちゃんと年長のGちゃんのふたりと工作をしている時、

こんなことがありました。

二人が「お家が作りたい」と言うので、

わたしはテーブルや椅子やベッドの作り方を教えることにしました。

 

「長しかくの形を切るのよ。折り紙の形に似ているけど、もっと長い本や

新聞みたいな形。テレビのリモコンみたいな形」と言いながら長方形を切って、

端と端を折って「テーブル」とし、同じ折り方で「椅子」や「ベッド」と命名しました。

 

すると、Fちゃんは「長方形でしょ?」とどこかで聞いたらしい言葉を返しました。

「Fちゃん、よく知っているね。そう、長方形の形に切ると、テーブルも作れるし、

椅子もできるし、ベッドもできるし、足拭きマットもできるし、鏡もできるね」

と言うと、Fちゃんは自分が長方形という難しそうな言葉を知っていたのがよほど

うれしかったようで、それからは紙を手にしては長方形に切り取って、

下の写真のようにちょこっと折り返しては、「テーブルができた」「椅子ができた」

とはしゃいでいました。Gちゃんも、そんなFちゃんにつられて、

長方形を切って家具を作る作業に熱中していました。

 

窓にするために、同じ形の長方形をふたつ貼り、カーテンにするために、

じゃばらに長方形を折るうち、

FちゃんもGちゃんも、ただ目で見て「こういう形」と知っていた長方形について、

理解の仕方を新たなものにしていくのがわかりました。

すると、Gちゃんが、「丸いのはお皿」と言って、

少しいびつな丸を切り抜いて、テーブルに置きました。

Fちゃんは、「まくらとおふとんは、四角いね」とこちらもちょっとゆがんだ長方形を

切っていました。

わたしが長方形をくるっと丸めてゴミ箱の形を作ると、ふたりとも大きなため息を

つきながら、「すごい!ゴミ箱だ」と言いました。

 

ふたりがそれほど感動したのは、ゴミ箱を作ってもらったからでも、

ゴミ箱の作り方がわかったからでもなく、

「形」について、その時、心の中で強い好奇心が渦巻いていたからこその

ものなのでしょう。

ちょうどFちゃんもGちゃんもお風呂を作りたがっていたので、

長方形がどのようにしてお風呂の形になるのかを見せると、

こちらもふたりに大受けでした。

 

テーブルや椅子を作った時のように両端を横に折ってから、

次は縦に両端を折ります。

折目の一部に切り込みを入れるとお風呂になりますね。

 

 

Gちゃんが大好きなアクセサリー作り。
帽子用のゴムにアイロンビーズを通してブレスレットを作っています。
 
「ねぇ、どうしてまっすぐの線なのに、丸くなるのかな?
ほら、棒みたいにまっすぐな線でしょう?
なのに、腕に巻くと、丸い形になるでしょ。
どうしてだと思う?」とたずねると、
ふたりとも長い間、考え込んでいましたが、
Fちゃんが、「くるっとするから、丸になるの」と答えました。
Gちゃんは、まっすぐなのに丸くなる理由について、うまく言葉にできない
ながら、何か言おうと一生懸命でした。
 
 
Fちゃんにとっても、Gちゃんにとっても、
こうした物作りは、「家の作り方がわかった」「ブレスレットを作れるようになった」という体験に
終わらず、「形の発見」「形との出会い」と呼んでも
あながち間違った表現でもないように感じました。

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