虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

競争心を刺激して、がんばらせる幼児教育……どうなの? 2

2010-02-21 21:16:43 | 教育論 読者の方からのQ&A

早稲田大学名誉教授の加藤諦三氏の著書
『妬まずにはいられない症候群』(PHP文庫)という著書では、

競争意識をかき立てる家庭で育った子の不幸について

胸が痛くなるような内容でつづられています。

子どもが競争心を煽られて育つと言うことは
つまり、
子どもが「自分が自分であることによって、家族に受け入れられていない」ことを
感じて育つということです。つまり、自然な自分であってはいけないのです。

のんびりやだったり、運動嫌いだったり、
想像力や創造力が豊かで、競争よりもクリエイティブであることを
好んだりする子であってはいけないのです。

頭脳活動を好む子は、他の子と自分を比べるより、自分の内面の好奇心を追いかけてのんびり過したがる子が多いですが、
それは許されないのです。

大人が望む運動での競争、基礎計算や文字を書くことをがんばるかどうか……

で大事にされたり、邪険に扱われたりします。


カレン・ホルナイが、自己蔑視の心理的結果の特徴のひとつとして、
強迫的に他人と自分を比較するという点をあげています。
自分に劣等感を持つと、
競争意識が異常に強くなり、
人より自分の方が優れているかどうか気になって仕方がなくなる
のです。
親自身が自分で自分を受け入れられないで、心の葛藤を解決できないでいると
親は子どもを巻き込んで解決しようとします。

親が自分で自分を軽蔑していると、
自分の子を幼いときから競争させたくてたまらなくなり、
他の子との優劣が気になって仕方なくなるのです。

子どもは自分を守るために必死でよい子を演じます。
その結果、親の心が不安定で、競争を煽られている子たちは、
外から見ると立派にしっかり育っているように見えます。

けれど、それは、そう見えているに過ぎません。

心の満足がないまま社会的に適応を強いられると、
態度やできることは擬似的に成長しているように見えても、
心理的な成長が幼児のままとまってしまうのです。

加藤諦三氏は、別の著書『「大人になりきれない人」の心理』で、

子ども時代に無責任に遊び楽しむことをしないで、
大人になってから責任ある立場を全うするのは、ナポレオンがアルプスを越えるよりもきついことである。

と言っています。
人間は、無責任なわがままで許される幼児の時代があって、
その時期に幼児的願望が満たされて初めて,
責任ある大人に成長していくのです。
「幼児的願望が満たされない」という不満は、
人間にとって[本質的な不満]となって一生ついてまわるのです。

『「大人になりきれない人」の心理』によると、
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子どもの時期に子どもにしか堪能できないことを十分堪能した大人と、
したくないことを力ずくでさせられていた大人は、同じ年齢でも全然別次元に住んでいるそうです。
子どもの時期にしかできないことを、「もういい!」というほど堪能した子どもは、満足しているので、我慢を強いられて育った人が「辛い」と感じることも「楽しい」と感じることが多いのです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


幼児はまだ自分の意志でいろんなことをやってみて、
自分が「楽しい!得意だ!」という面に気づいて、
「そこで全力を出し切って友だちと競争してみよう」と考えることができるほどの
体験もなければ、気づく力もありません。

幼児が競争の場で、必死でがんばるのは,

自分を高めるためではなく、
「親に見捨てられたくない」
「愛されたい」
という根源的な不安感がもとになっています。
また発達障害のある子が勝ち負けにこだわりから競争に固執している場合もあります。

もし大人が安易に子どもの競争心をあおって
さまざまなことをさせたなら、
子どもが人の弱さを許したり、妥協しあったり、仲良く協力し合って
何かすることを学ぶ力は育ちません。

強迫的に競争ばかりに心を使うようになります。

しかしその競争は、自分のためになる自己実現を目指しているのではありません。
人に勝った負けた~あいつよりえらい~と感情的ないきさつばかりにとらわれる狭い世界でだけ生きて、

自分の可能性を求めて、自分の人生を生きることができなくなってしまうのです。

子育てをするとき、親は自分の心をきれいに保っておく必要がありますよね。みんながしているから……と、子どもを競争に駆り立てているときは、
自分の心を見つめなおす大事な機会ではないでしょうか?


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5 コメント

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Unknown (かおりん)
2010-02-22 15:52:32
読んでいて職場の先輩が思い浮かびました。

先生の郵便局に匹敵する(?)時間に追われる職場でした。
いわゆる、教えないイジメをされた先輩で、
とにかく他人に能力を認められたくて、上司や職場の人間にほめられればご機嫌で、
でもいつも何かしら現状に文句をつけてて、
機嫌が悪くなるとあからさまにキレて上司も怖がっていました。
事務員が私と二人だけだったのでミスした時はこすい手を使って私の責任にしていました(笑

でも能力はあるし、その事は周囲も承知していたし、失敗したら謝ればいいのに何を怖がっているのかな?自分に自信がないのかな?と思っていました。
私が褒めるとイヤミなくらい謙遜して・・・

三人姉妹の長女で、妹たちはうまく親に甘えて
たけど自分はそうじゃなかった。と聞いた事があります。
親にありのままを受け入れてもらえず、いつも良い子を演じていたのでしょうか?


あらためて子育ては大切な仕事だと思います。
どんなに能力が高くてもそれだけではダメ!

自分が自分を好きで、心が充実していて、小さな幸せでも感じる事が出来て、感謝できる。
そんな子になってくれれば逆境にあった時でもがんばれるんじゃないかな~と思います。

その為にはまず親の私ですね。









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肝に銘じたいと思いました (あさひ)
2010-02-22 16:47:55
お仕事裏話から、ここまでの記事を読ませていただいて、いったい私は娘に何を求めているのだろう。求めすぎているのではないだろうかと考えさせられました。

私自身、第二次ベビーブーム世代で、長女。
幼児期から、中学ぐらいまでは運動も、勉強も親から一番にならなければ褒められない図式は多々ありました。
大人になって心の底では自分に強い意志がないことがわかりました。とても軟弱です。

娘の中に競争心は感じません。
なのに、着替え一つでものんびり屋空想大好きなこの子は何故人よりはやく出来たいとか思わないのだろうかとか、と思ってしまうこともありました。

私自身が変わっていかないといけないなと、改めて思いました。少しずつですが。
返信する
確認させてください。 (ゆっくんママ)
2010-02-22 19:39:24
最近ブロック教室、はじめました!
なおみせんせいのお声がきけて、近くに感じています。お蔭様で、すっかり冷めていたデュプロ熱が再燃しています。
郵便局のお話、小説読むように熟読してしまいました。いろいろ自分のいた職場など振り返りながら。

私は、三姉妹長女です。父に溺愛されていた時期が幼少期にあったからか、なんだかプラス思考気味な大人に成長しました。ただ、母は冷たく中学入試以降の私の成績、言動、もちろん気持ちにも無関心で通されました。。。

成人して、私は「なんでもっともっと頑張れなかったんだろう。なんでもっと自分に挑戦しなかったんだろう。どうして今は頑張れるんだろう。競争することから逃げていたなぁ…」と、学生時代の不勉強をものすごく後悔しています。なので、息子には、一生懸命頑張るという事を覚えて欲しい、一生懸命頑張ったら何事もそれなりに楽しいという事も味わってもらいたいなと思って育児しています。
なので、少しは競争も必要なんじゃないかなと感じています。そのへんはどうなんでしょうか。
あと、テレビで、競争させる育児の保育園の子供たちの運動会で、徒競走2位になってしまった男の子に、同じクラスの女の子が、「2位だよ、よかったね、がんばったね」って駆け寄っていて、感動的なひとコマでした。その男の子のせいで優勝をのがしたのに…。子供がみんな集まってよくやったよくやったと…。私、観ていて泣いてしまう程でした。

もともとやる気のない男の子でしたが、いつのまにか気合が入り、自ら頑張っていたようです。
こういう心の成長というか、いやなこともがんばって乗り越える力みたいなものも必要なんじゃないかなあ、なんて思うのですが、コレはなおみ先生のおっしゃる競争を煽る事とは違うと考えて大丈夫ですか?それとも、やはりこれも競争になるんでしょうか。
というか、そもそもが、幼児にはまだ競争は早すぎというのもありますよね。

ちゃんと理解できていなくてすみません。
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もう遅い? (kazkaz)
2010-02-23 16:12:01
初めてお伺いします。「競争」のこと、胸が張り裂けそうになりました。  
中1のひとり娘です。幼児期に小学校受験で親の見栄のために酷いことをしてきました。
「あの子ができるのに何であなたはできないの?」といって、本来非常に不器用な娘の手にお箸を持たせ出来るまで大豆をつまませたりしました。とにかく生活習慣や基本的な運動が全く出来ず、どうすれば出来るのか・・・
そればっかりを考える日々を送ってました。

今考えると、もっと外でのびのび遊ばせたり、もっと自由な雰囲気で育ててあげたかったと後悔でいっぱいです。
そうすればもっと娘の良いところを伸ばすことが出来たかもしれませんね。

現在の娘は、いわゆる偏差値の高い進学校に通っていますが、全く自らは勉強せず、中1にして完全に落ちこぼれています。
特に計算問題をこなしたり、興味の無い調べ学習などはただただ時間ばかりが過ぎ、やり遂げることはありません。
読書が好きですが、今は好きなアニメに夢中で何だか常にそのことばかりが頭を支配してるように見えます。
小学生のときより更に「おかしさ」が増し、ついついまた酷いことを口にしてしまいます。

子供は別人格と頭ではわかっているのに・・

長くなりごめんなさい。
娘の考えていること少しでもわかってあげられること出来ないでしょうか?そして勉強のことはもう諦めて放っておいたほうがよいのでしょうか?
子供の年代も違い、場違いでしたらお許しください。


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親の (ところてん)
2010-03-02 13:04:48
親の導いた環境というわけではないのですが、子供自身のプライドが成長を邪魔する側面もあるような気がします。

プライドゆえになかなか進めなかったり、手出ししなかったり、
それゆえ解決が遅かったり。

そういうとき、親が助け船を出すと、とたんに解決すること多いですよね。

競争を煽るのはともかくも、
親が競争を操っていけるようになったら楽しいのですが。
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