虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

工作やブロックが好きじゃない子も工作やブロックをしなきゃいけないの? 続き

2019-05-12 08:11:38 | 工作 ワークショップ

 幼い男の子たちが車や電車のおもちゃが気に入ると、

「何が楽しいのかしら?」と呆れるほど、

来る日も来る日も、ミニカーを前に動かしたり、後ろに動かしたりしながら、

遊び続ける姿がありますよね。

 

親御さんに、「この1月ほど、どんな遊びをしていましたか?興味を抱いていたものや、

好きになったものはありますか?」とたずねると、

目の前の子が車を前後に動かす姿に視線を投げながら、

「ずっと、あればっかりです。いつも車でしか遊ばないから、別のおもちゃも……と思うんですが、

それしかしたがらないんです。ひとりで遊んでくれるし、つい楽なんで放っといちゃうんですが、

もうちょっと遊んであげた方がいいでしょうか?」

「プラレールを買ってあげたところ、毎日、レールをつないで電車が走るところを

いつまでの眺めています。それ以外の遊びがないので気になるのですが、誘ってもそれしかしたがらないのです。

いっそのこと、好きなおもちゃ類を片付けちゃった方がいいんでしょうか?」

という質問が返ってくることがよくあります。

 

 本人が好きなことを存分にしているのですから、

いいにはいいのでしょうが、

遊べば遊ぶほど、遊びの幅が狭くなって、

親御さんやお友だちがその遊びに参加する隙もなくなってしまうのは、

ちょっと気になりますよね。

 

遊びのパターンが固定されて、柔軟性が失われると、

いつも同じことが、一貫したテーマで再現されないと落ち着かなくなるし、

遊びが、外の世界を遮断する道具になってしまうこともあります。

 

車の好きな子には思う存分、車で遊ばせてあげたいけれど、

遊び道具や遊び方の一部に、

創造的に変化させたり、

自分の思いを表現できるような柔軟性のある素材や方法を取り入れるようにするといいな、

と考えています。

 

 

ひとつのおもちゃやひとつの遊び方にこだわりが強くなると、

お友だちが近づこうものなら、「自分の遊びを邪魔される」「自分のおもちゃを奪われる」と

身構えたり、威嚇したり、人を避けたり、不安のあまり放心したようにボーツとなってしまう子がいます。

 

お友だちからお気に入りのおもちゃを奪われないかと緊迫した様子で遊ぶ子は、

お友だちが持っているおもちゃが目に付くと、

「それを自分のものにできないんだったらこの世の終わり」とでも

言いたげな態度に転じることがよくあります。

 

お友だちと過ごしている間中、

「自分のおもちゃを触られたくない」という気持ちと、

「他の子の持っているおもちゃが欲しい」という気持ちの間を行き来していて

その中間がないのです。   

すると遊びがいつまでも発展しないし、

遊びが発展しないということは、精神的な成長が停滞することにだってつながります。

 

虹色教室では、子どもの遊びの世界が、外の世界のあり様を受け入れやすい状態を保つよう、

また遊びが身の回りの環境への開かれた窓の役割を担うように……という意味もあって、

1歳、2歳という幼いうちから、遊びに物作りを取り入れています。

 

具体的な例を挙げると、たとえば、電車でひとり遊びをしている子がいれば、

ブロックで隙間を作ってもいいし、空き箱に穴を開けてもいいし、椅子の隙間をそのまま利用してもいいのですが、

それを切符の券売機に見立てて、切符が出てくる遊びを加えるようにするのです。

 

工作といっても、紙を乱雑にチョキチョキするのが楽しい時期の子もいるでしょうし、

細い紙を用意してあげて、一回、はさみを開閉するだけで

チョキンチョキンと切符ができていくのを喜ぶ時期の子もいるでしょう。

お母さんに切ってもらいながら、紙だったものが自分の見立てる力で切符に様変わりしてしまう

魔法に夢中になる子もいます。

「切符!切符!」と遊んでおきながら、ふいに紙をパラパラ散らして、

「雪!」と命名して笑みを浮かべる子もいます。

 

そのように物作りを遊びに取り入れたとたん、

自分の頭の使い道が広がり、「今日、駅で~した」と自分の体験をもっと遊びに入れてみようとしたり、

「切符だけじゃなくて、お金もいるよ」と知恵を披露してみたり、

「ジュースが出てくる機械とアイスが出てくる機械とトーマスの出てくるガチャポンも作る!(作って!)」

と創作することと想像力を使うことで、たちまち億万長者なみに自分の欲するものが手に入る喜びに浸る子も

いるのです。

 

 

↑の写真はビー玉をセロファンで包んで信号機を作っている様子です。(色の順番は

間違っていますが、本人の好きなように)

駅で信号機を発見した男の子の感動を、遊びの中で再現しているところです。

100円ショップのプッシュライトを当てると、信号を順番に光らせて遊べます。

 

こんな風に、遊びにいつでも物作りを取り入れられるようにしていると、

「駅に信号があった!」という子どもの感動が、光の性質や信号機の仕組みといった

ものに広がっていくきっかけにもなるのです。

また物作りを遊びの世界に取り入れると、「お手本をよく見て真似る」

という学びの姿勢を身につけさせる機会が増えます。

 

できるようになったことを、お友だちに教えてあげるようにも

なります。

 

そのように物に固執しなくても、さまざまな心を満たしてくれるものがあることを

知るにつれ、子どもたちはお友だちと過ごすのが楽しくなり、

上手に遊べるようになってきます。

既成の完成されたおもちゃには、たいてい子どものアイデアや想像が入る余地がありません。

 

↑の写真はブロックでケーキを作った子の作品。これから、お友だちとそれぞれ作ったケーキを持ち寄って

パーテーをする予定です。プレゼントを包み、ろうそくを立ててご機嫌の女の子。

急に思いついたように、

赤い部分をはずして、「火が危ないから、ろうそくを消しておくわ」と言いました。

自分が今、思いついたこと、知っている知識、想像したこと、願い事、自分の中に生まれた物語……

そうしたものを、遊びの世界にリアルタイムに活かしていくには、

自由に作り変え、自由に見立てることができる素材が必要ですよね。

 

工作やブロックのように自由度の高い遊びは、

子どもの頭と心の可動領域を広げます。

子どもの内面世界を目で見て触ることができるスペースを作りだします。

 

前回の記事で、1、2歳の幼い子たちの遊びの場でも

物作りを取り入れていることを書きました。

そうしていると、次のような良い効果も生まれます。

 

物作りに親しんでいると、お友だちとのトラブルが起こった時に

気持ちを切りかえたり、

問題を解決するのが上手になるのです。

 

幼い子たちはとにかく自分の物は貸したくないし、

他の子の持っている物が欲しいものです。

大人が間に入ってトラブルを解決してあげる場合、「ちゃんとお口で、貸して!って言ってごらん」

「ほら、○ちゃん、いいよ、でしょ」と、貸したくない側の子がおとなしくて聞き分けのいい子の場合、

その子の気持ちはそっちのけで、

物が行き来しておしまい、ということになりがちです。

 

そうして、大人の指示に素直に従う子は、幼い頃は、「えらいね、かしこいね」とほめられるのだけど、

自分の気持ちを上から抑え込んで我慢しているだけですから、

成長して意志がはっきりしてくるにつれ、意地でも自分の物を貸そうとしなかったり、

成長して意志がはっきりしてくるような年齢になっても、決めごとは何でも大人に頼ろうとしたり

するようになったりしがちです。

 

その一方で、人と関わりながら創造性を発達させていった子が、

年中さんや年長さんくらいになると、

こんなうれしい姿もよく目にします。

 

お友だち間でおもちゃや物の奪い合いが起こると、

「それなら、同じ物を作ればいいんだよ」と提案する子がいるのです。「作り方を知っているから教えてあげる」

「作るの手伝ってあげる」という子もいます。

「ふたりでいっしょに使おうよ。○くんが何の役するかと、ぼくが何の役するかを

決めたら、そのおもちゃは1個でも、大丈夫だよ」

「じゃあ、じゃんけんするか、何分ずつ使うか決めようよ。★くんはどういう風にしたいの?」

と遊び方の解決法を示す子もいます。

 

物作りは必ずしも、物を作ることに終始するのではなくて、

アイデアを作る、考えを作る、ルールを作る、ということにもつながっていくのです。

子どもたちは主体的に自発的に創造的に

自分の現実と向き合うことを、

自分で何かを作りだす作業を通して身につけていくのです。

 

工作の魅力的な材料が人数分足りない時なども、

「わたしはそのひもがなくても、モールを編んだら

きっと同じくらいきれいになるからいいのよ」とか

「その箱は最初から形が面白いけど、

でも普通の箱でも、いろんなところを切ったり、色紙を貼ったりした方がきっと自分の好きなものが

作れるからいいよ」

 

 

  

 ↑の写真は、科学クラブの小学生たちが協力して元素の周期表を作っているところです。

子どもたちの中から「やってみたい」と始まった作業ですが、

これまでも物作りをしながら関わる体験を積んでいるので、

思い通りにならない部分があるほど、一致団結してがんばりだして、

それぞれが自分のやるべきことを考えて、上手く役割分担して仕上げていました。

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