虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

有意義な学習過程は、本来は楽しく興奮するものであるということ 

2014-04-23 19:03:51 | 子どもの個性と学習タイプ

 

年長の★くんと☆くんのレッスンの様子です。

「ブロックの電車を山のトンネルをくぐらせて遊びたい」という★くん。

「ピラミッドの作り方なら知っているけど山は知らないな」という☆くん。

緑色のブロックでピラミッドの組み方をして山のトンネルを作ることにしました。

山の仕上がりに満足した★くんは、川や鉄橋も作って精力的にブロック制作を

続けていました。

 

 

 

「シートベルトをつけたいから、セロテープをちょうだい」と★くん。

「セロテープだけでできるの?輪ゴムや紙はいらない?」とたずねると、

「セロテープだけで大丈夫」とのこと。

見ると、レゴ デュプロに装着できない人形は腰のあたりをセロテープで

ブロックにつけられていました。確かにシートベルトに見えます。

 

鉄橋作りに苦心していた★くん。何度か崩れてしまったので

考えた末、鉄橋部分だけを別の場所で作っていました。

そうすれば、ブロックの板を逆さまにして、鉄橋の柱部分を同じ高さにそろえて

作りやすくなりますから。

そうして鉄橋の完成品を作ってから、基礎板に設置しようとすると、

思わぬアクシデントがありました。

 

凹凸がある基礎板だったため、柱の長さをそろえたために

一方が浮いてしまったのです。

「大変よ。ちゃんと同じ長さにしたのに、そこのところが浮いているよ。

どうしてブロックの数を同じにしたのに、片方が浮かんでしまったのかわかる?」と

たずねると、☆くんが、

「わかるよ。地面のところの高さがちがうからだよ」と言いました。

★くんは、「わかった!」と言いながら、白いブロックを足していました。

 

 

カテゴリ化、階層化、分類化の能力が伸びる年中、年長さんの時期

という記事の中で取り上げた、『よみがえれ思考力』の文章で省略した部分に、

「この章の冒頭で紹介した、教室を見学に来ていた母親は、

息子が砂のテーブルで遊んでいるとき、この重要な学習(「保存」の概念を獲得し、

新しい見方ができるようになっていく学び)をしていることに気づいていなかった

のである」という一文がありました。

冒頭で紹介した話というのは次のようなものです。

 

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ある朝、私は有名校の幼稚部クラスを観察していた。そのとき一組の夫婦が、

自分たちの子どもを次の年にこのクラスに入園させようかというので下見に来ていた。

子どもはうれしそうに砂や水の遊び場で割れを忘れて動き回っていた。

その間、親たちは部屋を調べて回った。

彼らには懐疑的な匂いがあり、私はその理由をなんとなく憶測していた。

この三、四歳クラス用の教育プログラムは、

高度の学習場面を作り出すように工夫されていた。

しかし、そのわりにはあまりにも楽しそうに見えたのである。

部屋の隅では、ダムを作るために子どもたちが砂と水の量を一生懸命測っていた。

その近くのブロック遊びのスポットでは二人の女の子が「悪党」を捕まえる

落とし穴がついた「ホワイトハウス」を作っていた。

造形コーナーでは、先生が架空の動物園で粘土でできた壊れそうな動物を分類する

遊びを手伝っていた。

そして劇遊びのコーナーでは、幾人かの子どもたちが感謝祭ディナー遊びの

買い物リストについて話し合っていた。小柄な男の子は自由遊びの時間の間ずっと、

クラスで飼っている兎をひとりでかわいがって、話しかけていた。

私が母親が期待した面持ちでそのクラスの隣にある五歳児クラスに入っていくのを

見た。しかし、そこでも子どもたちが遊んでいるのを目にした母親は

あきらめてしまったようだった。夫に顔を近づけてささやいた。

「この学校にお金をかけるのは、やめましょう。

あの子たちはここでは何も勉強していないわ。」

大人のわれわれは「勉強とは何か、遊びとは何か」についてかなりはっきりと区別した

考えをもっている。われわれの多くは何かを学習するためには真剣に勉強しなければ

ならないと信じ込んでいる。そして、多くの大人たちは有意義な学習過程というものが、

本来は楽しく、興奮するものであることを忘れている。

(省略)

経験の意味を学ぶことが初期学習においては鍵となる。

必要な道具は身体であり、手であり、感覚である。

それが新しく学習したことを脳へ送り込む。

この教室の子どもたちは脳の構築に没頭しているのである。

                    
              『よみがえれ思考力』ジェーン・ハーリー 大修館書店

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かなり長い文章を引用させていただいた理由は、

子どもの脳の構築に遊びが大切であることを伝えたかったこともありますが、

紹介されている幼稚園の取り組みのどれもが、

「子どもたちを外に追いやって、ただ遊ばせている」だけではないことも

知っていただきたかったからです。 

自由に遊びを選び、夢中になって取り組め、遊びとしてのワクワク感を十分に

味わえるように工夫されているだけでなく、知恵を使い、他者から学び、

お友だちと協調して活動できるようにカリキュラムが整えられているのです。

そうした園を探すのは難しくても、家庭でわが子のためにどんなことができるのか

探るのに、役立つのではないでしょうか。 

 

わたしも一部屋だけの小さな教室で、 子どもたちが身体と手と感覚を通じて、

経験の意味を学ぶことができるようにさまざまな工夫を凝らしています。

このブログで、家庭でちょっとした楽しい時間を生み出すことができるような

アイデアが伝えられたらいいな、と思っています。 

 

      

 ★くんが線路を中心にした世界を作るのに没頭している間、☆くんは

『スペースオデッセイ』というビー玉スライダーのおもちゃを

設計図を見ながら組み立てる作業をしていました。

細かいパーツ類を分類するケースを用意してあげると

種類別にパーツを分けていました。

その後、設計図を見ながら熱心に組み立てていました。

パーツのはめ方のちょっとした違いも指摘しながら、1時間近く

飽きずに取り組んでいました。

 

算数タイムの一コマ。

「1,2,4,8」の4つの数の組み合わせで1から16までの数を作って

玉を落としていく遊びをしています。

最初のうちは、「12になるのは、6足す6だよ」とか、

「7になるのは、3と4だ」と言っていた二人ですが、途中から課題の意味を察して、

「12になるのは、4と8のとき」「7になるのは、1と2と4を合わせたとき」

と言いながら、レバーを動かしていました。

 

アルゴを使った神経衰弱+足し算ゲームをしています。

とても盛り上がりました。

 

素晴らしい創造力や想像力や思考力や協調性を発揮してくれる★くんと☆くんですが、

1年程前の教室に来はじめた頃は、どちらもなかなかの困ったちゃんでした。

★くんは物の取りあいばかりして遊べず、かんしゃくを起こすと教室の椅子まで投げて

暴れていましたし、☆くんはポケモン以外興味がないと言って、

遊びに加わらずゴロゴロしていました。

二人の心と知恵の成長に目を見張りながら、遊びの力の偉大さを感じています。


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