虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

トポロジーについて、コメントをいただいて 1

2013-12-07 17:10:58 | 教育論 読者の方からのQ&A

今朝アップした『子どもの学力の基本は好奇心です』という本 という記事に

次のようなコメントをいただきました。

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ピアジェによると子どもの空間表象は、トポロジー(位相幾何学)→射影幾何学→ユークリッド幾何学の順に発達するそうです。また、「子どもはどこでつまずくか」(銀林浩)p.93には、概数や近似値はトポロジーと関係あると書いてあります。

日本人の学習は微分積分を頂点とした計算に偏っているために、トポロジー的な勉強が少ないのが原因と思います。最新の物理数学の「場の量子論」は、トポロジーと対称性が基本となってます。それに適合できてないのでしょう。

しかし、トポロジーを子どもの遊びに取り入れるにはどうすればよいか僕も迷っています。あやとりは思いつきますが、他に3~5歳に適当なトポロジーに関する遊びはないでしょうか。

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トポロジーは、数学で用いられる一見、難しそうな概念に思われますが、子どもの発達上の変化を

説明するのに使う時は、それとは少し異なる意味で用いられているようです。

およそ4~6歳のトポロジー的空間認識をしている段階では、大きさや形ではなく、

接近や分離、包囲、連続から、

空間関係の性質を把握するとされています。

 

わたしが理解している範囲でトポロジーという言葉を使わせてもらいますね。

遊びとは異なりますが、教室で、小学校受験の『四方からの観察』や『回転』の問題を

具体物を使って、自分の身体を移動させながら考える時、

トポロジー的空間認識を用いて考えていると思われます。

 

トポロジーを子どもの遊びに取り入れるには、

デュプロブロックのように少し大きなサイズのブロックや空き箱や空き容器を使って

物作りが一番ではないでしょうか。

 

この記事を書いている最中、息子が通りかかったので、

「トポロジーについてコメントをもらったんだけど、 3~5歳の子に合うような

トポロジーに関する遊びってないかな?」とたずねました。

 

息子はけげんそうに、「トポロジー?」と聞き返してから、

「確か家にそういう本なかった?ドーナツとコーヒーカップは同じと見なして、ドーナツと球は違うって

やつだよね。トポロジーの概念を幼児の遊びに活かすって、どうなのかな?それって必要あるの?」

 

私 「数学上の概念とは少し異なる意味で、ある発達段階で、幼児が空間を認識する時に

トポロジー的な……つまり、物のサイズや形で認識するのでなく、物の以外の空間と物との関係の中で

認識している段階がある……といった考え方にトポロジーという言葉が使われているのよ。

確かに子どもが物を考える時に、左右に動くような身体の感覚のようなものを使って判断する時があるし、

発達障害のある小学生の子たちに教える時に、

4~6歳の幼児特有のトポロジー的な理解がしやすい状態を作ると、できるようになるものが多いの。」

 

息子は、「もらったコメントとコメントがあった記事ってどれ?」とたずねてから、

ブログを確認して、納得したようにこんなことを言いました。

 

息子 「日本の数学は計算中心で、トポロジー的な勉強が少ないから、トポロジーと対称性が基本となって

いるような数学に入っていった時に、できなくなるってのはあるんだろうな。

ここで問われている話とはずれるけど、

大学に入ってからアメリカの数学科の生徒が有利になってくるのは、

単純に英語のシンプルさやわかりやすさに対しての日本語のあいまいさや複雑さって

ことに因るものもあると思うよ。

 

たとえば、日本語で複素数なんて言葉も、英語だと コンプレックスナンバー、つまり合成のとか複雑な数って

そのものズバリだし、数学の思考過程を説明するのも英語だと本当に扱いやすいからね。

それに日本では、数学といえば、数値で表すものが主で、

数学を言葉で概念として捉えていく教育はなされていないよね。

証明問題を学ぶには学ぶけど、日本語の自由度が高すぎて、

いまいち数式をシンプルに言葉に翻訳しているという感覚がつかみにくいから、

どうしても身につくという感じにはなりにくい。」

 

私 「言葉と教育だけの問題なのかな?お母さんは、子どもたちの遊びの場面で

そうしたものを伸ばしたいと思っているから、ついそんな風に考えてしまうんだけど……」

 

息子 「ゲーム系のチャットで感じるんだけど、

アメリカ人ってとにかくしゃべるのが好きなんだ。

ボードゲームの話題なんかでも、しゃべるのは圧倒的に外人の数が多いんだ。

もちろん日本人だって、日常会話ならよくしゃべるって人も多いんだろうけど、

 頭を使う場面では、黙ってしまいがちだよね。

でもアメリカ人は、しゃべりながら頭を使うようなところがあるんだ。

思いついたことをどんどん口にしていくというかさ。」

 

私 「そういうチャットって英語なの?英語力の問題で日本人しゃべらないんじゃないの?」

 

息子 「アメリカ人が主のゲームサイトならもちろん英語だけど、

日本人同士のゲームサイトもいくらでもあるから、そこでは日本語で話してるよ。

でも、母語かどうかにかかわらず、日本人は頭を使う場面では

寡黙になるのが原則って思っているところがあるな」

 

わたしと息子の会話を聞いていた娘が、笑いながらこんなことを言いました。

「そういえば、★(息子)のドイツ人のゲームの仕方はこんなで、こんな風にしゃべる、フランス人は……アメリカ人は……って

話、この間、バイト先でさせてもらったらすごく役に立ったわ。

カフェにやたら気難しいそうな人が来てて、ずっと長い間、ムスッとしたまんまで

そりゃ雰囲気が悪かったのよ。それが、★のドイツ人は……ってネタを振ったら、

急に笑顔になって、「そうだよ、○○人は、ゲームをする時にこうでああで……」って、

ソーシャルゲーム上で、それぞれの国の人がどんなプレイをするかとか、どんな話をするかとかで

しゃべり続けていて……ニコニコしている気のいい人だってことがわかったのよ」

 

 

 

 

 


継次処理能力が優れている子、同時処理能力が優れている子 2

2013-12-07 12:08:08 | 教育論 読者の方からのQ&A

それぞれのタイプへの教え方については、『おかんの色々考察日記』のふねさんが、

同時処理タイプ・継次処理タイプ それぞれの教え方のコツ

という記事の中でわかりやすく書いてくださっています。

 

わたし自身は同時処理タイプなので、

このタイプの子が、「スタート地点からゴールに一気に飛ぶ」ようにして

「考えることや、理解は早いけれど、中間地点や間がないので、勘違いやミスに気づきにくい」ことは

よくわかります。 自分の姿そのものですから。

また、「しっかり理解するのは、ゴールからスタート地点まで逆走するクセをつける」のが大事なのも

「雑な傾向があるため、中間地点を見直す」必要があるのも

その通りで、今、わたしがそれほど困らずに生活できているのは、

長い年月をかけて、そんな風に自分の弱点をカバーする方法を身に着けてきたからでもあります。

とはいえ、ミスが多くそれに気づきにくいところのは今も変わらず残ってもいます。

 

継次処理タイプも同時処理タイプも

一長一短があり、良し悪しや損得は比べようがありません。

 

でも、教室で見ていると、

同じ結果を出していても、親から注意を受けたり、叱られたりするのは

同時処理タイプということが圧倒的に多いので、

どうにもこの認知様式の子らの自己肯定感の行方が心配で

このタイトルで記事を書くことにしました。

 

次回に続きます。

 



めずらしくスッキリした教室……。

2013-12-07 10:56:13 | 初めてお越しの方

昨日、お客さんが見えていたので、めずらしくスッキリした教室です。

次のレッスンが終わる頃には、全てのものが動かされて

お手上げ状態になりそうなので記念に撮っておきました。

 

そういえば、もうすぐ……大晦日ですね。

取りあえず主婦なので、そろそろ家の掃除にも力を入れていかなきゃならないのですが、

昨年同様、(昨年は正月の三が日に大掃除の続きをやってました

最低限の家事をこなすだけで手いっぱいの状態のまま

年を越しそうな雰囲気です。


『子どもの学力の基本は好奇心です』という本

2013-12-07 08:59:08 | 子どもの個性と学習タイプ

 

 

『子どもの学力の基本は好奇心です』(汐見稔幸著  旬報社)という

幼児や小学生の子を育てている親御さんにお勧めしたい本があります。

読むうちに子どもの教育に関することがシンプルに整理されて、

迷いが晴れるかもしれません。

 

この本にこんな話が載っていました。要約して紹介しますね。

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東京大学の数学科の教授があるインタビューのなかで、東大の数学科の学生と

アメリカの大学の数学科の学生と、どっちが優秀かという話が出てきたそうです。

その先生は入学時点では東大の学生が優秀かもしれないが、

4年間教育すれば、ほぼ例外なく逆転すると言ったそうです。

 

なぜ東大の学生が伸びないのかといわれ、先生は

「感性が育っていないからだ」と答えていたそうです。

こういう感性とは、「なんでだろう」とか「フシギだなぁ」とか「こういうものを論理で

あらわせないのかなぁ」というように、

なにかに感じて、そこに問題を見つけ、こだわっていくことらしいです。

数学とは、計算が複雑になったものではなくて、さまざまな現象を論理や数式で

あらわす、たとえば美意識というものを論理化できないかとか、こういうものを美しいと思う人と思わない人と

どこがちがうかを数式であらわせないなどと考える学問。

その根っこは不思議がりおもしろがる感性です。

 

「感性をそだてるためにはどうしたらよいですか」という質問に、

その先生は、「それは簡単だ。小さいときにあまり勉強しないことだ」といったのだとか。

幼いころから受験勉強のようなことをさせられて、正しい、間違い、という紋切り型の思考をおぼえれば、

ワンパターンにしかものごとが考えられなくなり感性の芽をつんでしまうそうなのです。

 

豊かな感情をたがやし、豊かな感情をたがやすこと、「おもしろそう」「なぜだろう」「知りたい、やってみたい」

といった好奇心が学力を伸ばす原動力なのです。

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今日は2歳になったばかりの子どもたちのレッスンでした。

そんな幼い子らも、、「おもしろそう」「なぜだろう」「知りたい、やってみたい」に

突き動かされるように活動しています。

ひとりひとりの子の発しているものをどう感受するか、

どのようなフィードバックを返していくといいかを親御さんに伝えています。

 

たとえば、2歳の◆くんは、お友だちの●くんがお母さんが作ってくれたトンネルに手を伸ばすために、

「だめぇ、こわれちゃう。こわしちゃだめぇ」と大騒ぎしていました。

遊びを観察していると、電車をぴったりそろえて並べて、

それはうれしそうにしていました。

「数や形やサイズがきちっと秩序だった並び方をしているのがうれしそうですね」

と言いながら、◆くん同様に秩序を好む感覚が優れている子の親御さんが

子どもにどんなブロック作品を作って遊んであげていたのか

駅の一部を作って見てもらいました。

すると合点した◆くんのお母さん、下のような歩道橋つきのトンネルを作ってあげました。

◆くんは大喜びです。

「だんだん高くなってる」とか「同じ長さでそろっている」とかいった

目で感じとる美しさを実感していると、

数学的な感性も育ってきますね。

 

 

工作タイムに作った船です。

引っぱるとビーズがカラカラ動きます。

気になって透明のコップ部分をはがしてしまい、

青いポリひもを振りながら、◆くんは「雨!」と命名。

お友だちの●くんは、ハンドルを回すとボールがのぼっていく仕掛けが

面白くてたまりません。

自分で何度も回しながら、ボールをつかまえてみたり、段の途中に乗せてみたりして、

「不思議だなぁ」という表情をしながら熱心に遊んでいました。

こうしたささやかな遊びを通して、子どもの好奇心ははぐくまれていきます。