虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

自閉症の子のお友だちに関する質問をいただいて…… 4

2013-06-14 07:31:21 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

前回の記事で紙製の建築物に興味を持っていた●くんというのは、

言葉の出ない広汎性発達障害の子

という記事で★くんとして紹介させていただいた子です。

上は初めて会った日の写真なのですが、その日も

教室に飾ってある写真のような建築物のおもちゃを触りたがり、

橋にあるトンネルにミニカーをくぐらせようとしていました。

といっても、穴があるから、何かを押しこんでおきたい、という感じで、

遊びとは言えない感じでした。

 

こんなちょっとした瞬間からも、その子の好みについてさまざまなことがわかります。

●くんは紙に印刷されたものが目に留まりやすく、紙の質感を好むのではないか、と思われました。

また建築物が好きなことから、球形のぷよぷよした感触のものなどより

カッチリした作りに惹かれるのかもしれません。

 

この日、●くんが、ボタンを押すと「ワンワン」「ニャーニャー」といった音が出るおもちゃや

鍵を回すと子どもたちが喜ぶような音が出るおもちゃの音を出しても、

そちらに振り返ることすらしなかったので、

耳で音を捉える機能に何らかの気がかりなところがあるのでは……と思われました。

また、非言語でのちょっとしたやりとりも成り立っていないことも気になりました。

 

そこで、まだ2歳とはいえ、言葉が出てくるのを待つのではなく

早めに絵カードで等でコミュニケーションを取って方がいいのではと伝えたところ、

●くんのお母さんはすぐにPECSの講習会に参加して、生活に絵カードを取り入れました。

 

絵カードを使いはじめたとたん、●くんに目覚ましい変化がありました。

絵カードを使えば自分の要求が相手にきちんと伝わることに気づくにつれて、

人への関心や信頼感が増し、発音があいまいだとはいえ、何とか言葉で自分の意志を伝えようと

し始めました。

 

また、絵カードを使いだしてはじめてわかった

こんなことがあったそうです。

●くんは立体的な実際の物だとなかなか名前を覚えなかったのに

絵カードだと覚えやすいのだとか。

●くんのお母さんは、「立体だと輪郭が見えにくいのかもしれません」といったことをおっしゃいました。

 

●くんが紙の質感や、カッチリした平面でできた形を好むのは、

視覚の問題との関わりがあるのかもしれません。

 

●くんが教室で紙製の3Dパズルの建築物に興味を持っていたので、

●くんのお母さんは小さいサイズ(400円ほど)をいくつか購入して

組み立ててあげたそうです。

すると、ちょっと気を許した隙に全てをバラバラに壊してしまったのだとか。

 

この出来事は、捉えようによっては、「せっかくこれが好きだと思ったけど、遊びにつなぐのは難しいな」

と判断することもできます。

でも、そのように壊すことにエネルギーを傾けられるなら、

工夫次第で創作活動や人といっしょにする遊びにつなげていくこともできるとも言えます。

たとえば、段ボール箱等に無数の切り込みを入れて、

バラバラにしたパーツをさしこんでいくと、

●くんはそれを片っ端からはずしていくのを楽しむかもしれません。

紙箱に小さな穴を開けて、何かをやりとりしたり、

クレーンのようなものを取りつけて、工作見本を示したりできるかもしれません。

写真は●くんではないのですが、教室に来た子が

段ボール同士を六角ボルトで取り付けているところです。

●くんもバイクを修理するお父さんの姿を見て、

ドライバーなどに強い関心を寄せているので、

段ボールを使って大工遊びをさせてあげるといいのかもしれません。

 

この日の●くんのちょっとした行動をヒントに遊びの環境を整えるようにすると、

それぞれ●くんにとてもヒットしていました。

 

ひとつは、これです。

●くんが乗り物を積み木の隙間にスーを滑らせて、

滑らす感触を楽しんでいたので、

ブロックでモノレールの基本の形(わたしが勝手に考えた作り方です)を作って滑らせてあげると

熱心に遊んでいました。

 

デュプロブロックでモノレールを作りました

また、椅子を全て重ねるのも楽しんでいました。

こうした遊びも、新幹線やバスの座席のように並べてごっこ遊びをしたり、色分けしたり

する遊びに発展しやすいです。

こうした遊びなのかいたずらなのかわからない行為を目にした時の

大人の想像力が大切だと感じています。

この日、●くんは1年年上の自閉症の女の子といっしょのレッスンでした。

いっしょに写真のように磁石の迷路で遊ぶ姿や

女の子が生活音が出る絵本のボタンを押すと

これまでは全く聞こえていないように振舞っていたのに関心を示し、

後からボタンを押して遊ぶ姿がありました。

 

次回に続きます。