虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

身体、頭、心 の 自発的に動くことができる範囲 2

2013-06-03 14:37:47 | 教育論 読者の方からのQ&A

「身体、頭、心 の 自発的に動くことができる範囲」について、

年中さんの★ちゃんと☆ちゃんのレッスンの様子を通して書かせてくださいね。

 

教室には、前回のレッスンで2,3年生の女の子たちが作った

上の写真のような作品を残していました。

 次に来た子たちが、その作品からインスピレーションを受けて、

その下地の上に自分の表現したいものを作り上げるのも楽しいですし、

一気に壊してゼロから作り直すにしても、

壊すことが、新しい創造的なエネルギーに変わっていくことが

あるからです。

 

旅行先で自然の中で駆けまわって楽しかったという★ちゃん。

★ちゃん、大の虫好きです。

☆ちゃんも、虫が大好きな女の子。家のお庭でさまざまな植物を育てているそうで、

「お庭に砂場ができたよ!」という報告もしてくれました。

 

そんな虫好き女の子ふたりといっしょに、地面の下を描いた絵本を見ながら、

虫たちの家を作ることにしました。

緑のブロックで囲った家に、虫たちが宝物を隠しているという

設定で、遊びが展開していきました。

↑柵を使って上手にベビーベッドを作った★ちゃん。

 

↓見えませんが、虫のお家の中には宝物がいっぱい。

 

 

この日、☆ちゃんはお家で作ってきた

たくさんのお手紙を手作りの郵便配達のかばんに詰め込んで持ってきてくれました。

 ホイル折り紙を何度か折って、たくさんシールを貼ったという
作品です。それを透明のシートで包みこんでていねいに仕上げているものも
たくさんありました。
おそらくどんな折り紙の本にも載っていないような
☆ちゃん流の作品なのですが、その量といい作りこんだ感じといい
☆ちゃんの自信のほどがうかがえます。
 
「☆ちゃん。★ちゃんにお手紙の作り方を教えてあげたら?」と言うと、
「いいよ。教えてあげるよ」と先生役を買ってでてくれました。
 
子ども同士で、教えたり教わったりすることも
子どもたちが自発的に動くことができる範囲を広げてくれる
大事な経験のひとつです。

子どもの生活や遊びの中には、こうした自発的に動くことができる範囲を

広げるチャンスがたくさん隠れています。

☆ちゃんのお手紙作りは、こんな体験にもつながりました。

 

☆ちゃんがお手紙を大事そうに手作りのかばんに詰めてきたのを見て、

わたしは「☆ちゃん、ポスト作る?☆ちゃんの手紙を入れると、シューッと滑っていって、

動物のお家や★ちゃんのお家に届くようなポスト作ろうか?」とたずねました。

すると☆ちゃんはうれしそうに大きくこっくりしました。

が、☆ちゃんは虫のお家作りや★ちゃんに手紙の作り方を教えてあげるのに

忙しそうだったので、ある程度、形になるまでわたしが作っていました。

 

そうするうちに赤いブロックが足りなくなってきたので、

「☆ちゃん、☆ちゃん。赤いブロックが足りないの。探してちょうだい」と頼むと、

☆ちゃんは、はりきってブロックを探してきてくれました。

「あった!こっちにもあった!」とブロックの箱や袋の中を探って

見つけては、歓声を上げながら、ポストを高くしていました。

 

そうやって苦労して見つけたブロックで作っていったため愛着が湧いたのか、

「もうこれ以上、赤がないから、このくらいの高さで我慢しよう。でこぼこのへこんでいる

ところは、高くなっているところのを移そうよ」と言っても、

「嫌!絶対、もっと高くしたい。ここもみんな赤くしたい!」

と、☆ちゃんが言い張りました。

 

そこで、線路の台として使っていたブロックなど

別の場所に使用していたブロックに赤が混じっていたら

他の色と取り換えて、赤を集めました。

 

ポストの上部も「ここも絶対に赤にする」と言って

緑の板に赤を敷き詰めだした☆ちゃん。すぐに赤い色が足りなくなってしまったのですが、

いっしょに試行錯誤して、郵便のマークの部分を

赤と白とを入れ替えることで、天井の板に必要な赤をねん出しました。

「赤が足りない」「完成しないかもしれない」と窮地に陥るほど

やる気を燃やして、途中からほとんどひとりで作り上げた☆ちゃん。

お母さんによると、

☆ちゃんがこんなに熱心にブロックで遊んだのは初めてなのだそうです。

自分の手紙をどっさりポストに入れては

取りだして、満足そうでした。

 子どもの心を強く揺さぶって成長させるような経験は、

大人が、「こんな体験をさせてあげたいな」と

パンフレットの中から買い物感覚で選ぶようなものとは

ずいぶん異なるのかもしれません。

 

唯一無二のその子だけの貴重な体験とは、

その子が自分で自発的に動いた時、

自分で自分の殻から一歩踏み出した時にする

経験だからです。

大人がどんなに完璧で価値のありそうな体験を用意したところで、

子どもが自発的に自分で動いた時に起こるような

精神と能力、両面の成長は期待できないはずですから。

 

 

子どもは自分の殻を破って自発的に動いてみて、それが成功した時、

本当に幸せそうです。

自分が作りだしたものを認められた時、自信に満ちて、輝いています。

 

 次回に続きます。