虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

発達障がいのある子の才能を伸ばすために~♪ 壁となる問題点

2012-10-06 08:54:13 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

 

映画監督のスピルバーグ氏が自身が学習障がいのひとつである読字障がいであることを公表されました。

MSNニュース

トーマス・エジソンやレオナルド・ダ・ヴィンチ、アルベルト・アインシュタインなども

読字障がいであったと言われています。

何かの機能がが劣ると、その分、他の機能が飛躍的に伸びることはよくあると聞きます。

凸凹のある子たちの自尊心を高めて、自分の人生を誇りを持って歩んでいくための

一助となりたいです。

 

発達障がのある子の才能を伸ばすことと、その壁となる問題点について書いた過去記事を紹介しますね。

 

発達障がいのある子の才能というのは、

初めは、既存の価値観では測りにくい漠然としたものです。
何かの技術が長けているとか、
その分野のテストの点が良いとかいったものではありません。

自分の好きな事への執着心だったり、
同年代の子とは一風変った物…鉱石などへの関心だったり、
働きかけるとどう変化するか(実験の基礎となるような)への
飽きることない挑戦だったり、
なぜなのかどうしてなのかを知らずにおれないしつこさだったりします。
それは大人には見えにくく、それぞれが個性的であるため
勘違いも生みやすいように思います。

虹色教室の小5の☆くんは、
休憩時間に積み木でピタゴラスイッチを作ったり、

工作をしたりして遊んでいます。そうした遊び方を見ていると、ただ遊んでいるようにしか見えない☆くんの
行動にはある一貫したテーマが隠れていることがわかります。

☆くんは、ビー玉があるものにぶつかって、その力を2方向に分けることや、
1つの力を多くの方向に分散させることに常に取り組んでいるのです。
それは扇形にドミノを倒すことだったり、
ビー玉のレールの先に小さなチップを乗せて、
それをはじくことでビー玉の方向を変えることだったりします。

また☆くんは、輪ゴムを使って、物を回転させることにも、
熱心です。ブロックを使って、からくりのあるおもちゃを作り、
力の方向を転換させることに長けています。

その発想の豊かさと熱心さは研究者通じるものもあるので、
私は☆くんが機械の設計者や映画の世界の特殊撮影を考えるような仕事に
つけないか、それかそれに近い自分の興味を追求していける
仕事に就けないか…?
と考えています。

そうした才能豊かな☆くんですが、能力を伸ばしていくには
いくつも超えなくてはならない障害物があります。


とにかく好きなこと得意なことに熱中して、
子ども時代を通してチャレンジし続けることが、

得意な分野で周囲に一目置かれた上で、
極端な苦手があることを
「人には得手不得手があるわよ~」…と大目に見てもらえるような適職に就く

ための近道でしょう。

でも、そうした仕事に就くには学歴がいるし、
公立の学校はいじめが心配…
子ども時代に夢中になれる事を我慢して、
まず勉強が大事、今は受験に向けてがんばる!忙しい学校生活を何とかこなすのが一番!

となりがちです。
私自身は受験をそれほど悪いものと思ってません。目標に向けてがんばると、
精神力や根気がつくし、がんばった事実が自信につながるからです。

ただ、受験という周囲も含めて一種の特別な精神状態を体験する中で、
本末が転倒してしまって、
得意なことを生かした仕事に就くための勉強が、

自分の核となる得意な分野を軽視する、
後回しにする、
気晴らしのような楽しみにすり替えるきっかけとも、なってしまうのです。
才能あふれる軽度発達障害の子が高学歴を手にした後、ニートとなってしまうことも多いのが残念でなりません。

定型発達の子であれば、受験に熱中するうちに、自分の個としての
特技を伸ばしそびれても、
就職した先で、多数派と同じようなレベルなのですから、
とりたててハンディに悩むこともなく、
好きな事を仕事にできる人なんて一握りだなぁ~
なんて感傷にひたる日があっても、
それなりに元気に楽しみを 見つけながら働いていけることでしょう。

しかし発達障がいの子は、いくら偏差値の高い学校を卒業しても、
ある程度、周囲を潤すほどの得意な作業も含む仕事に就かなくては、
周囲から浮いてしまったり、役立たずの烙印を押されたりして、
どんどん自分に対する自信を失っていくことでしょう。

ですから、発達障がいの子は、子ども時代~思春期を通じて、
自分の他よりも得意なもの、したいこと、楽しいと思えること、
がんばっても苦にならないこと、興味があることを追い続け、
育て続け、将来を描き続ける必要があると思うのです。

たとえ本気で受験勉強に熱中している時でも、
自分の中身を空っぽにしてしまってはいけない、
一般的な外の価値観に完全に染まってしまってはいけないのではないでしょうか?
周囲の大人は、自分を見失いがちな発達障害の子に、
常にその子が「一貫して持っているテーマ」を
思い出させてあげなくてはならないと思うのです。


それは、そうしたテーマをきちんと見出して認めてあげること
個性を正しく評価すること
で、

見栄えが良いそれっぽいことをさせることではありません。
(習い事やクラブなど…)

発達障害の子の個性的な好奇心や才能とは、ほんの一時も消してはならない炎のようなものです。
どんなに立派な学歴をまとっても、それがなければ、社会人となる一歩は、
とまどうことや不安だらけではないでしょうか?
どこにもつき物の社会性や対人関係に弱さがあるのですから…。

しかし自分がずっと好きであり続けたことや、育て続けた能力がある子は、
それを切り札に失敗を穴埋めしながら、
何とか乗り切っていけるのではないでしょうか?
大成功だって夢ではないはずです。

うちの子は、得意なことってない気がします…。
才能が見つけられません…。

というお話を聞きます。
そううかがって子どもに会ってみると、たいてい親御さんが
見飽きていて、何も価値を感じていなかった行動の中に
その子その子の大きな可能性が隠れている気がします。

私がそうしたものに気づく時は、「あれ? この子の好むもの、見方、遊び方、
質問の仕方、こだわり方は、同年代の子のそれとちょっと違うな…」
と気づくところから始まります。
ですから、わが子とそのお友だちくらいしか見る事が少ない親御さんが
「…見つけられません」というのも当然なのです。

算数にLDがあって、理解力も考える力も2年年下の妹さんより
かなりペースが遅くなってしまう3年生の☆ちゃんは、
何をするのも自信がなさそうでした。
が、デュプロブロックを使って、ケーキ屋さんごっこをしはじめた
姉妹を見て、ある事に気づきました。
☆ちゃんと妹さんのケーキを見ると、☆ちゃんの作ったものの方が
見栄えがいいのです。
なぜなのかよく見比べると、妹さんは、色んな色のブロックをばらばらに組んで
ケーキを作っていますが、☆ちゃんは配色良く形もバランスの取れた
作品を作っているのです。

また熱心さという点でも☆ちゃんにはすばらしいものが感じられました。
ていねいで繊細な作業の様子を見て、
ケーキなどのお菓子職人のように、何度も同じ作品を
センス良くていねいに作っていかなければならない仕事に向いている
才能だと思いました。

料理、ビーズ細工、ミニチュア作り、フェルトの小物作りなど、
☆ちゃんが興味を持つようなら、なるべくさせてあげるといいですよね
その後、お家でお母さんといろんなことにチャレンジするようになった☆ちゃんは、自信に満ちてきて、勉強にも意欲的になりました。
以前、得意なことをお家でするようになるまでは、☆ちゃんは自分がない感じ…
空っぽであるような表情をしていました。


落ち着きがなく、気分が高揚すると、寝ている弟のお腹をパチン!と
叩いてしまったりする5歳の☆くんは、
しつこくいたずらをくりかえします。
例えば、小さなボールを手にしたら、高いところから落としたり、物にぶつけたり、カーブを転がしてみたり…です。
とにかくいつまでもしているので、お母さんが呼びかけて何かさせようとしても
聞く耳持ちません。
私は、☆くんが、そうしたいたずらをするときに、
「~なるよ、きっと」と言ったり、思ったとおりの結果にならないと、
「なんでだろう~え~??」とつぶやいたりしているのを
耳にしました。
☆くんは、推測する実験する結果を検証する
という流れを憑き物にでも憑かれたように
いつでもくりかえしているのです。
それが、☆くんの一貫したテーマのようです。
☆くんにさまざまな実験道具を与え、
推測する実験する結果を検証
をより意識的なものになるよう支援すると
☆くんは5歳児とは思えない集中力を見せました。

☆ちゃんの能力も☆くんの能力も、
いつも身近にいる家族が、「これ」っとわかる
外から見えやすいものではありません。
それにどちらも可能性の段階ですから、
十分そうした能力を伸ばす時間を与えてあげることが大事ですね。

発達障がいの子は客観的に自分を見るのが苦手なので、
周囲の一般論に基づいた価値観に振り回されてしまいます。
どうか、いつも大きな視点から子どもを眺めて、
応援していってあげてくださいね