虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

「ママ、描いて~」と言われたら……

2012-04-24 23:21:57 | 工作 ワークショップ

2歳8カ月の★くんは、利発で想像力豊かな男の子です。

よく観察して考えてから行動に移すので

少し慎重な性質でもあります。

 

「トーマス作りたい」と言うので、いっしょにプラスチックコップで電車(途中でトーマスから変わりました)を作った後の話です。

 

「線路を描いて、電車を走らせようか?」と言うと、

「するする!」と調子がいい返事が返ってきたものの、

いざ画用紙やクレヨンを用意してあげると、急に不安そうに「ママ、して~。ママ描いて~!」と言いました。

「★くんが描いて!自分で。」と★くんのお母さんが言うたびに、

さらに不安そうに「ママ描いて~」と言います。

 

「描いてほしいという時は、描いてあげるといいですよ」と★くんのお母さんに告げて、

お母さんが線路の線を少し引いたところで、

「どの色かな?茶色がいいかな?緑かな?」と言いながら、

★くんにクレヨンをそっと渡しました。

お母さんが★くんのすることを緊張して見守るのではなくて、

リラックスして紙に絵を描くのを楽しんでいると、

★くんもいくつも色を選んで線路を塗りはじめました。

 

子どもは「自分でできそうだ」と感じると

自発的に取り組みはじめますから、

本人が「お母さんして~」と頼む時は、「自分で!」と突っぱねず、

その言葉に素直に従ってあげるといいのだと思います。

特に慎重で空気を読むのが得意な子は

誰かが先に何かをしてからでないとなかなか動かないこともありますから。

 

その日の体験から次回の自発性を引き出すコツは、「自分でしなさい」と後押しすることでなく、

その子の個性的な才能に響くような

活動を提示してあげることです。

 

たとえば、★くんでしたら、

電車などで遊ぶ時も踏切が上下に動くことや、ブロックで作った駅の

電車を出入りさせる際のドアが開いたりしまったりする仕掛けを楽しんでいましたから、

「動く仕掛け」に敏感で、工夫することを楽しめるという能力が優れていると思われました。

 

ですから、箱の貼り方ひとつで、踏切が上がったり下がったりさせることができること、

一枚の紙がテープをとめる位置でトンネルになることなどを見せると、

目を輝かせて取り組み、

自分でもトンネルがふたつになって2台電車が通れるようにしてみたり、

トンネルの上に紙コップの底を二枚付けて、

下はトンネルで、上はお料理ができるものを作ったと教えてくれました。

 

何のことやらよくわからなかったわたしとお母さんに、フライパンを持ってきて、

トンネルの上の丸い円に乗せて、料理をする実演までしてくれました。

 

このように本人の強みに焦点を当てるようにして

活動を楽しいものにしていくと、

自然と自発的な態度が育っていきます。

 


遊んで育つというのは、基本的には普段の遊びのレベルの高さ 1

2012-04-24 12:55:34 | 幼児教育の基本

KID´Sいわき・ぱふ代表、にほんこどもの発達研究所の岩城敏之氏が

『子どもの遊びをたかめる大人のかかわり』という著書のなかで、

「遊んで育つというのは、基本的には普段の遊びのレベルの高さです」

とおっしゃっています。

岩城氏はこんな例を挙げて説明しておられます。

 

大人が子どもたちに鶴の折り方を教えたとします。

上手な子はパパッと折って、下手な子は手伝ってもらいながら

作ります。もっと折りたいという子もいれば、

もうこりごりという子もいるはずです。

 

そこで、もっと折りたいと思うときに折れる状況が大事で、折り紙コーナーが

きちんとあるという環境を設定します。

教わった折り紙が面白かった子は、そこに集まって自分たちでどんどん勝手に遊びますし、

もしひとりも集まらなかったとしたら、そこが幼稚園や保育園の場合、教えていた先生だけが

面白くて、子どもは先生が真剣だからお付き合いしていただけということです。

 

それも悪くはないけど、遊んで育つという考え方からすると、それは遊ばなかったということ

と同じ。

つまり技術も身についていないし、習熟しないということです。

 

岩城氏の文章を引用させていただくと、次のような遊びと育ちの関係があるのです。

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何回も何回も「もう一つ作ろう、もう一つ作ろう、こんなんも作ろう、あんなんも作ってみよう」

と思って遊んで、はじめて子どもは育つわけです。

遊んで育つということは、こういうくりかえしが大切です。

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たとえば、父の日に園でお父さんの絵を描くのはいいけれど、

普段から家族の絵を描いたり、ままごとコーナーにお父さんごっこがどれだけ盛り上がるような

仕掛けが置いてあるか、新聞とかたばことかお酒など……。

そういうことが

本当の意味で子どもの成長を育む

「普段の遊びのレベルを上げる」ということだ、とおっしゃっているのです。

 

次回に続きます。

 

 


一生懸命がんばっているのに、子育てがうまくいってないように感じる時 12

2012-04-24 08:57:14 | 教育論 読者の方からのQ&A

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公園での親の姿にしても、
児童向け施設のあり方にしても、
そうした施設で子どもたちにリトミックや工作をさせるときの大人の接し方にしても、
幼稚園や学校の先生や施設職員や親の姿にしても、
うちの子たちが幼い頃に比べて、年々、奇妙さが増していて、
行き過ぎや過剰さが当たり前になっている

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そんな風にわたしやわたしの親しくしている人々が感じたところで、

そうした奇妙な現実や行動や感じ方を「普通」と感じる人が多数派となった今では、

ゆったりと「待つ」子育てを実行している側が

無責任で奇異な子育てをしているように映ることでしょう。

 

何でもかんでも、どっちが奇妙か正しいかは多数決……つまり

「みんな」が賛成しているかどうかで判断しがちな日本の社会で

少数派は「自分の感性の方がおかしいのかな?」と口をつぐみます。

 

そりゃ、若いママさんたちの一部が特殊な感性をもって、そういう言動に走っている……

というのなら、祖父母世代や先輩パパママも黙っていないでしょう。

でも、学校の先生も子ども向け施設の職員もテレビの報道番組もこぞって

自分の身体感覚や感情をないもののように扱って

子どもをバーチャル世界のキャラクターのようにコントロールするか、見えない存在のように扱うかしているのですから……

それが「普通」でまかり通っている世の中で、

 

唯一、まだ「ダメ出し」するだけのまともさを持っているのは、

 

子どもだけとなっているのです。

 

皮肉なことに、大人たちの問題行動に対するダメ出しは、

「子どもたちの問題行動」という形でしか表現することが許されていないような

世の中になりつつあるのを感じています。