2歳8カ月の★くんは、利発で想像力豊かな男の子です。
よく観察して考えてから行動に移すので
少し慎重な性質でもあります。
「トーマス作りたい」と言うので、いっしょにプラスチックコップで電車(途中でトーマスから変わりました)を作った後の話です。
「線路を描いて、電車を走らせようか?」と言うと、
「するする!」と調子がいい返事が返ってきたものの、
いざ画用紙やクレヨンを用意してあげると、急に不安そうに「ママ、して~。ママ描いて~!」と言いました。
「★くんが描いて!自分で。」と★くんのお母さんが言うたびに、
さらに不安そうに「ママ描いて~」と言います。
「描いてほしいという時は、描いてあげるといいですよ」と★くんのお母さんに告げて、
お母さんが線路の線を少し引いたところで、
「どの色かな?茶色がいいかな?緑かな?」と言いながら、
★くんにクレヨンをそっと渡しました。
お母さんが★くんのすることを緊張して見守るのではなくて、
リラックスして紙に絵を描くのを楽しんでいると、
★くんもいくつも色を選んで線路を塗りはじめました。
子どもは「自分でできそうだ」と感じると
自発的に取り組みはじめますから、
本人が「お母さんして~」と頼む時は、「自分で!」と突っぱねず、
その言葉に素直に従ってあげるといいのだと思います。
特に慎重で空気を読むのが得意な子は
誰かが先に何かをしてからでないとなかなか動かないこともありますから。
その日の体験から次回の自発性を引き出すコツは、「自分でしなさい」と後押しすることでなく、
その子の個性的な才能に響くような
活動を提示してあげることです。
たとえば、★くんでしたら、
電車などで遊ぶ時も踏切が上下に動くことや、ブロックで作った駅の
電車を出入りさせる際のドアが開いたりしまったりする仕掛けを楽しんでいましたから、
「動く仕掛け」に敏感で、工夫することを楽しめるという能力が優れていると思われました。
ですから、箱の貼り方ひとつで、踏切が上がったり下がったりさせることができること、
一枚の紙がテープをとめる位置でトンネルになることなどを見せると、
目を輝かせて取り組み、
自分でもトンネルがふたつになって2台電車が通れるようにしてみたり、
トンネルの上に紙コップの底を二枚付けて、
下はトンネルで、上はお料理ができるものを作ったと教えてくれました。
何のことやらよくわからなかったわたしとお母さんに、フライパンを持ってきて、
トンネルの上の丸い円に乗せて、料理をする実演までしてくれました。
このように本人の強みに焦点を当てるようにして
活動を楽しいものにしていくと、
自然と自発的な態度が育っていきます。