自閉症スペクトラムの子とソマティック・マーカー 4
の続きです。
人の表情をあまり読もうとしない自閉症スペクトラムの子が、
ハムスター人形の動作からその気持ちを読んでいるように見えるとき、
身体を通して、まるでアフォーダンスとしてその情報を取り出しているかのように感じました。
そのことを読書会で書き込むと、(スカイプ上の読書会です)
「入力されたアフォーダンスを、自分の身体に(無意識に)置き換えているとしたら、
ソマティック・マーカー仮説と同じ方向性ですね。」という返事が返ってきました。
「表情というのは、ある意味、二次的な情報なのかも……」とも。
ダマシオ博士は、
「間断なく更新されていくわれわれの身体の構造と状態をじかに見渡せる
窓をとおしてわれわれが見るもの、
それが私の考える感情の本質である。」とおっしゃっています。
『デカルトの誤り』には次のように書かれています。
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わたしは、脳損傷によって感情の経験に障害を負った患者の研究から、
感情が従来考えられてきたほど漠然としたものではないと考えるようになった。
たぶん感情を知的に説明することはできるだろうし、
感情の神経的基盤も見いだせるだろう。
わたしは、今日の神経生物学の考え方とはちがい、感情が依存している
重要なネットワークには、従来認められてきた辺縁系として知られる一連の脳構造だけでなく、
前頭副皮質の一部と、
そしてこれがもっとも重要だが、身体からの信号をマッピングして統合している
脳の諸部位が含まれるという考え方を提案している。
『デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳』 アントニオ・R・ダマシオ ちくま学芸文庫
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「身体からの信号をマッピングして統合している脳の諸部位」が、
感情が依存している重要なネットワークかもしれない……という考え方に触れた瞬間、
わたしは、感覚の過敏さを持っている自閉症スペクトラム障がいの子らのことが
気にかかりました。
自閉症スペクトラム障がいの子たちというのは、
身体からの信号が正確に脳に伝わっているのか、マッピングして統合するという作業が
スムーズに行われているのかという点で
危うさをたくさん抱えている子らです。
そうした身体からのインプットということと、
感情との関わりが大きいとすると、
感情や認知の状態を読み取ることを苦手としている自閉症スペクトラムの子らの
感情の認知の難しさは、
ダマシオ博士が唱えるソマティック・マーカーと
どのような関わりがあるのでしょう?
次回に続きます。