虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

子どもの自尊感情を伸ばす5つの原則 2

2011-02-07 21:58:45 | はじめに
前回紹介した男の子のお母さんは、どの場面でも子どもの自尊感情を高めるような対応をしていました。
それで男の子は他の子たちよりできないことが多くても、
何度も練習してでも、
できるようになるまでがんばろうとする前向きな気もちを持っていました。

『自尊感情を伸ばす5つの原則  親から子へ 幸せの贈り物』
玉川大学出版部

という本のなかに、自尊感情の高低を調べる小学生向けと中学生向けのチェックシートがついていました。

それを目にしてショックを受けたのは、
最近の子どもたち、小中学生といわず、幼児にも非常に多くの子に見られる特徴というのが、
そのまま自尊感情の低さを表すものとしてしるされていたことです。

低学力、青年の犯罪、薬物中毒、抑うつ、そして自殺といった問題と、自尊感情の低さは、研究者や専門家によって相関があると指摘されています。
自尊感情が低いと、人生の問題やフラストレーションにしっかり対応できません。
自尊感情が低いと、強くて優しく、責任感と哀れみを持った心が育ちにくくなります。
自尊感情が低いと、子どもは充実した意味のある人生を歩めなくなると言われています。

そんなにも大切な「自分は有能で価値がある人間だ」と自分を肯定的にとらえる自尊感情。
それなのに、何のハンディーキャップも持っておらず、知的な面でも優秀な子であっても日本で暮らすほとんどの子が、自尊感情の低さを表すとされる特徴を持っていることに、心が痛みました。

自尊感情を調べるチェックシートから……どのような特徴が自尊感情の低さをあらわすのか取り上げてみます。

★自尊感情が低い子は、何かしようとしたとき、むずかしそうだと、ほかの人に手伝ってもらいたくなります。

★自尊感情が低い子は、自分でしなければならないことでも、親や先生から言われないとしようとしません。

★自尊感情が低い子は、ほかの人をとてもうらやましく思います。

★自尊感情が低い子は、正しいと思うことも、反対されるとやりとおしません。

★自尊感情が低い子は、自分がほかから尊敬されるような人間になるだろうと思っていません。


次回に続きます。

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子どもの自尊感情を伸ばす5つの原則 1

2011-02-07 19:49:54 | 教育論 読者の方からのQ&A
「こんな子に育ってほしい」「あんなことができるようになってほしい」「こんな風に育てたい」と親が子に望むことはたくさんあります。
でも、本当は、親は子どもが「自分は有能で価値がある」と感じるよう自己肯定感さえしっかり育てたら、
子どもは自ら課題を見つけ、自分でチャレンジし、さまざまなことを達成していくようになるものです。


ずいぶん前になりますが、虹色教室に小学4年生の特別支援学級に通っている男の子と親御さんが見えたことがあります。
私が簡単なカードゲームの遊び方を教えると、男の子はとても喜んで取り組み、ルールを覚えました。
それから笑顔で、「お母さん、ぼく、●●(支援級)の友だちにこの遊び方を教えるよ」と言いました。
その子のお母さんは、男の子が新しいことを意欲的に覚えたり、覚えたことをお友だちに教えてあげようと思いつくことが心底うれしくてたまらないようでした。
それで、良い親であることを私に見せようとか、良い親でなくちゃと自分に課すとかではなく、本当に本心から言っている様子で、「この子を誇りに思います」とおっしゃいました。

私はいくつかゲームで遊んだ後で、易しいレベルからいくつか算数の問題を出していきました。そして終いには、その学年相当の『概数』の問題を出しました。
虹色教室で『概数』を学ぶ場合、ラミィキューブというゲームの数のプレートを色画用紙で作った枠組みに置きながら考えていきます。
しっかり解こうという意志があれば誰でも解けるように工夫していますが、
知的には少しもハンディーがない子でも、「難しい!そんなの習っていない」と集中力のない態度で臨めばいつまでも覚えることができません。

その男の子は、知的なボーダーライン上にいる子で、概数の理解はかなり難しいように思えました。
それが、「やってみる!」と言って、必死になってやっていたので、
2、3度間違えた後は、しっかり解けるようになっていました。

1回だけ見させていただく約束のレッスンだったので、その子と親御さんに会ったのはその1回きりです。
でも、私は自己肯定感について考えるたびに、その子のことを思い出します。

次回に続きます。
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『プロウ゛ォカティブ・シンキング 面白がる思考』  4

2011-02-07 09:57:36 | はじめに
今の時代の空気や消費、ビジネスセンスといったものへの感性と言えば、
ファンシーショップをしていた時期は、
私も自分の女性的な直感的な勘をフルに使って仕事をしてはいました。
そして、それがまあまあ良いところを突いて当たってもいました。

でも、平成生まれの娘や息子と話をしていると、
そういう私の直感なんかとは根本的に異なる
『今の時代』が血となり肉となっているような感じ方や考え方とぶつかって
面食らうことが多々あるのです。

それは娘の場合でしたら、ひとつには
自分たちの世代の持つ『もろさ』や『コンプレックス』を十分承知していて、
それが消費活動に投影されていることもよくわかっていて、
次には何が売れるのか、何が流行するのかよくわかっている感性といったらいいようなものです。

「クラスで10番目に可愛い子」を集めたというAKB48のコンセプトが、
「完璧を求めて背伸びするのはしんどいし、あるがままの自分を認めてほしい、
だけど注目されて成功したい」という自分たちの潜在的なニーズとつながりあっていることが、
流行る前からわかっている感性とでも言ったらよいでしょうか。

もうひとつは、ブランド物に子どもの頃から触れていたゆえか、
ビジュアル世界の進化の中で育ってきたゆえか、
『クオリティーの高さ』というのはどういうものか、世界中のデザインに好奇心を広げつつ、その質が何ゆえにいいのか感覚的にわかっている感性。

また別に、常に欲望をそそるコマーシャルを雨のように浴びて育ってきているだけに、
何が人の購買意欲をそそるのか、単なるキャッチコピーのようなものを超えて
よくわかっているところがあるのです。

息子の場合、
多すぎる情報の中で、優れた消費者になるよりゼロから作り出す生産者なることの方に魅力を感じていました。

一方で、さまざまな情報を自分の手足のように使っていくところが平成生まれの子だなぁとしみじみ感じます。

写真は、小3のとき、息子のもとに明糖製菓から届いたお菓子の詰め合わせに入っていた手紙です。

ちょうどその頃、私が公募にはまっていて、
私は文章で、娘は地域のビジネスアイデアコンテストのようなもので
賞をいただいていたときでした。

他人のしていることに乗っかるのが嫌いな息子は無関心を装っていました。
が、ある日、自分が食べているお菓子のパッケージをまじまじと見つめて、
「お母さん、ここに書いてある住所は、お菓子を作っている会社のものだよね。お客さま相談室って、お菓子を食べた人が感想を送ってもいいんだよね」と言うなり、自分が考えた『ぷくぷくたい』の新しい食べ方や活用法をへたくそな字ではがきに綴って、その住所に送っていたのです。

「よくそんなこと思いつくな。でも、そんなの読んでもらえるのかな?」とそのときは誰も気にもとめていなかったのですが、
とても親切なお客さま相談室の手に届いたらしく、
後日、息子のもとに、
小ぶりな段ボールいっぱいのお菓子の詰め合わせと、
ていねいな手紙が届いたのです。

そんな風にさまざまな情報をごく身近に感じて育った息子。

先日もこんなことを言っていました。
「今は簡単に音楽をダウンロードできるけれど、一方で、CDやレコードを一枚一枚購入していた時代の、自分個人の物を買ったというリアルな実感が価値を持ってきているように思うよ。
CDについている歌詞カードなんて、作るのにかかる費用なんてしれたもんなのに、そんなもの1枚がヤフーなんかでCDが売買される際には、大きな金額の差を生んでいる。

いろんな情報をシェアする時代だからこそ、自分のもの、自分のために買ったものという証明のようなものがほしくもあるんだ。
なぜ、多くの人々がキャラクターを愛するのかといったことも、その根底にある意味をつきとめていったら、求められているものが見えてくると思うよ。

たとえば、ホームページビルダーなどのアプリケーションを、みんな道具として捉えていて、そこに自分の物を買ったという満足感を見出しにくいよね。

でも、そこに一昔前の人々がCDやレコードを買ったときに感じたような付加価値を付け加えると、またちがったものになってくると思うんだ。
たとえば、ホームページを作るアプリケーションなんかを、個人の好みや趣味に強く訴えるもので、選べて、組み合わせが楽しめるようなものにするとかさ。
もうすでに、そんなことを考えている人はけっこういるのかもしれないけど、そういうものを、単にこれまでの模倣ですればうまくいくわけじゃないよ。
まったくこれまでにない新しさと気づかれていなかったけど大事な古さが両方必要なんだ。」



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