超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

曽我部恵一BAND「曽我部恵一BAND」全曲レビューその7「月夜のメロディ」

2013-09-27 19:20:17 | 音楽(全曲レビュー)

















この曲を聴くにはピッタリの季節になりました。




















7.月夜のメロディ

















「九月の月が笑ってた
 まん丸い顔でのんきにあくびしてた
 真夜中に電話かける相手もいなくて
 夜の真ん中でおれは途方に暮れた」

この曲はある程度年を経てその上で感じる劣等感だったり今更言えない恥ずかしい気持ちだったり
そういう大人ならではの哀愁が存分に感じられる情感溢れるバラッドに仕上がっています
この少し肌寒くなってきた季節の中で聴くのに適した静けさとシックな印象
歌詞は何者にも成れていない自分に対するルサンチマンや戸惑う気持ちが前面に出ていて
その侘しい歌声と感情の放出もまた寒空の下というシチュには合ってるかな、と
正に個人的にこの時期にレビューを書きたかった曲の一つでした。

多分・・・大人になってしばらく経った頃というのは、
20代前半の頃のような明け透けな希望も失っているしだからこその焦りや積み重ねたものの結果が気になり
心がモヤモヤしやすくなる時期だと思っています かつてのような余裕はもうないですし
段々混乱と螺旋を繰り返しているだけの自分の人生が滑稽なものに思えてくる
そこでかつて培った自信や積み重ねによる賜物があればまだ良いんだけど、
そういうものすら一切ない又は失ってしまっている状態だといよいよ何を信じれば分からなくなる
だけど、だからといって道を引き返す選択肢も道を踏み外す選択肢も選ぶ勇気はない
その狭間で揺れ動き続けている人への処方箋のような歌・・・
というのが個人的な見解です

でも、だからといって単に嘆いている、自分の至らなさを反省しているだけの歌でもなくて
本当はそこから一歩でも前に進みたいからこその水面下の渇望を歌っている歌、だとも思っています
「誰にもなれない」と感じるのは誰かになりたいから
「生きてる意味が分からない」と感じるのはきっと生きてる意味を探しているから
その証拠に今でも未だ最後の希望は捨てずに明日を撃ち抜く意思は保ち続けたまま曲は終わりを迎えるんです
人事は最低限尽くすから、「その先」に行ける力をどうぞおくれよ、という
切実な想いの表現にグッと来るナンバーですね


「おれはと言えばたった今も
 こんな安っぽいメロディ歌いつないでる」

いかにも「頑張ってます!」って人だけが格好良い訳じゃない
俯きながらも、嘆きながらも、それでも「最期」という選択肢を選ばず真っ当に生き続ける人たち
そういう格好良さだったりいい意味での諦めの悪さが滲み出ているシックな名曲です
心象風景がそのまま余さず曲と成ったような趣が心地良いナンバーで。















「それでも夜が終わる前の一瞬の間だけ
 自由を感じる事が出来るんだぜ」

ある意味、その時間こそが生きてる実感が最も滲み出る時間帯なのかもしれません。
このフレーズも短絡的な考えから解放してくれる視点があって好きです。
この数日間はずっと今曲の気分でした。






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