超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

サニーデイ・サービス「本日は晴天なり」 全曲レビュー

2010-12-24 23:28:36 | 音楽(全曲レビュー)





今年の全曲レビューも大詰め。あとあって1、2本かな?取り合えず年内一杯頑張りたいと思う。

今回は4月に出たサニーデイ・サービスの「本日は晴天なり」です。



このアルバムは、笑っちゃうくらいサニーデイだなあ、っていうか
マジに「あの頃の雰囲気」を復刻させる事に尽力したアルバムだなあ、って思っていて。
で、それが見事に成功してるんですよね。
本当に戻ってきたな、って。
でも退化ってよりは、またちょっと逞しくなった気もするんですよね。後半のミディアム曲連発なんか正にそうで。
 前半のいかにも!ってのも好きだけど、後半の深い深い所に潜っていくような方向性もそれはそれで好きです。
それが好きです。
新しい傑作だと思ってます。では以下。




1.恋人たち

「小田急線」ってフレーズだったり
キーボードの音色で思わず懐かしさが溢れてしまうくらい、サニーデイっぽさ全開の曲。
90年代っぽさ全開の曲です。
その雰囲気に思わず浸りたくなってしまう。
実際に小春日和の朝方に電車に乗りながら聴いたら絶対気持ちいいだろうな、と。
サニーデイの曲って電車にすごく合うと思う。



2.Somewhere In My Heart

アルバムで一番好きな曲。
この曲は電車っていうよりは車で高速を走りながら、ってイメージの曲。
なんとなくですけど。

この曲もサニーデイっぽさ全開と言えば全開なんですけど
心地良いギターの音色に身を任せてるだけで気持ち良くて。
リフの威力抜群、って感じの名曲です。



3.ふたつのハート

この曲は今の曽我部恵一らしい
ちょっと擦れた感じのボーカルを魅力的に聴かせる歌。
その点でサニーデイっぽさはあるといえばあるし、薄いといえば薄いけど
逆にこういう今っぽい曲がある方がリアルなんじゃないかと。
年代を過ごしてきた経験が良く出てて。



4.南口の恋

タイトルの「分かってる感」が半端ない。
ちょっとこう、いい感じのジーンズなんかこしらえて
やや格好付けたポーズで、彼女の到着を今か今かと待っている男の姿が思い浮かぶ。
そんな恋は決して順調ではないだろうけど
それでも、それ含めて楽しんでる様子が伝わってくる。気がする。



5.まわる花

聴いてて単純にすっごい楽しい曲。
何一つ湿っぽさのない、喜びが溢れてるような歌。
ここまでカラッとした感じを出せるのは流石ですね。
ソカバンのメンバーがコーラスで参加しているんですが
それもまた雰囲気作りに貢献してて素晴らしい。 ある意味オルタナティヴな曲ですね。
こういう曲が売れてもいいんじゃないか、とは思う。



6.水色の世界

CMソングにも使えそうなイメージ。
キャッチーな言葉選びと、ポロッと零れ落ちたようなメロディーが素敵。
ちょっと落ち込んだら、嫌な事あったら、寂しくなったらいつでも来なよ、ってメッセージを感じます。



7.五月雨が通り過ぎて

これもまたCM・・・ってよりはとてもJ-POPらしい曲なのかな。
ポップさが他の曲とは違うベクトル。
丁度ソロで出した「吉祥寺」と雰囲気近いかもしんないですね。こういう狙ってるのもまた味がある。
狙われるのも悪くはない。



8.Dead Flowers

とても物悲しい曲。
失恋っぽい雰囲気があると思うんだけど
詞の中にそういう言葉は一切入ってはいない。
というのがまた偉いな、っていうか。何が偉いのかは自分もよく分からんけど。
でもそっと寄り添って聴ける曲ですね。これ。



9.Poetic Light-まよなか-

その名の通り非常に詩的な楽曲というか
シチュエーション的には眠る前の恋人たちの様子を描いているのか。
そこで感じられる不安な気持ちだったりとか。
を、やさしく包み込むような歌。
メロディもまた優しい。



10.だれも知らなかった朝に

これもまた様々な解釈が出来る曲ですが・・・良い方にも悪い方にも。音は限りなく静か。
個人的にはこの曲もまた、電車に乗ってる映像が浮かぶんですよね。
それ考えると
電車で始まって電車で終わるアルバムなのか。私の中では。
 だれも知らなかった朝に、ってのは存在ではなく気持ちなんだろうな、って思います。
その描かれてる彼女、の。
誰一人として理解されなかった気持ち。
それはある意味ではすっごく悲しくて、でもある意味では自分だけのもの、って感じもあって。
そういう儚さみたいなものに自分は弱いのかも。




楽しい様子が描かれている前半から
もの悲しい雰囲気の後半まで、思いっきりムードに浸れる全10曲。
派手さだとか、そういうものからちょっと距離を置いて
それよりも心にスッと入って来る言葉だったり、サウンドの心地良さ。
を存分に体感できるアルバムです。
多分一曲一曲かなり丁寧に作りこんであると思うんで、それ考えると次もまた時間掛かるんだろうな。
ツアーに参加できなかったのは残念ですが
それまで新たな代表作とも言えるこのアルバムを聴いていましょう、って事で。




あと、今日はフジファブリックの「Clock」も聴きます。聴いてます。





ばのてん! 2巻/河添太一

2010-12-24 21:19:39 | 漫画(新作)




河添太一「ばのてん!」2巻読了。





なんか最近立て続けに読んでる気がしないでもないこの漫画。
本当に考えさせない内容になってるので
その意味じゃすっごく気楽に読めていいです。
このダラダラ感は今まで読んできた日常ものの漫画の雰囲気をきっちり受け継いでる、みたいな感じもあります。
つまりは、好きな人は普通に好きになるんじゃないかと。
主人公のキャラが若干酷いのも、ギャグとしては面白いね(笑)。
その分お化け屋敷を怖がるのはちょっと可愛かった。


ただ、可愛かった、という話であれば
この巻は眠花の方がより可愛かったな、って感じ。扉絵だとかサービスシーンで相当優遇されてたし
そうやって決められると
読んでるこっち側も思わずおおっ、ってなってしまう。
ゆるふわ天然キャラの中ではかなりいい線行ってるんじゃないかと。
千夏にいつもいいようにされてるのも不憫だけど、コメディとしてはこれで正解。
枕関係の話では、結構クスクス笑わせてもらいました。

性格的に凄いと思ったのは
彼女大の生き物好き?というか、優しすぎるのか
ゴキブリにまで情けをかけてしまうのはちょっとウケました。
手づかみで窓から逃がしてやる、だとか・・・真似できねえよ。
ちょっと斜め上行かれた感じがして面白かった。
鈍感と思いきやそれなりに羞恥心があるのもいい。

最後の話では、意図的にやったのか今までの総括みたいになってるのが何気に上手いと思いました。
こうして俯瞰してみると、思った以上に普通にバカバカしいことばっかやってるんだな。
そこに「普通感」があるのがこの漫画ならでは、かな。




ところで、この漫画はラブコメの方向には動かないのかな?
やったら面白そうな気もするけど。たまにちょこっと出てくる、ってのが丁度いいのかな。
何気に今年後半から楽しませてもらいました。