戦火にのまれた街並み。
そこかしこに破片が散らばり、叩きつけられた背中から激痛を感じて、魔法使いはもう動けない事を悟った。
随分前から、ここはもう危ないから離れろと忠告してくれた数少ない友人が居たのだが。魔法使いはその忠告を全て無視した。
もう…魔法使いは、ここを離れる気も動く気もなかったのだ。
隣国の、王女が育った故郷である国との戦争とは。
なんという皮肉だろう。
魔法使いの脳裏に、あの時に王女と交わした言葉が微かに浮かぶ。
魔道とは、魔導師とは、ただの戦争の為の道具であり技術だ…
私も、あのまま王宮に居たとすれば、何の疑問も持たずその道具であったのだろうか。
王女の眠るこの地に攻め入る事も、何ひとつ疑わず、その技術を駆使して、命じられるまま研究していたのだろうか。
あの時の王女の、輝くような笑顔が無ければ。私の人生は全く違っていたのかもしれない。
思えば…私が、この店を始める事になったのも、アクセサリーを作り続ける事になったのも、全て、あの方の言葉ひとつ、存在ひとつだった。
それほどに影響され。
それほどに、求めていたもの。
動かない身体で、ゆっくりと右手を空に伸ばした。
まるで、助けを求めているように。
指輪が見える。
ただの何の変哲もない指輪が。
だけど…大切な、大切な指輪が。
きっと、私は何度も救われていたのだろう。
あの方の存在ひとつで。
あの方の言葉ひとつで。
何ひとつ報われないのだと自分を責め、後悔し、懺悔した事もあった。
切なさと会いたさで、気が狂いそうにもなった。
それでも…いつも。
あの方の言葉に従って。
私は誰かの為のアクセサリーを作り。
そしてその時に浮かぶのはあの方の笑顔だった。
人付き合いが苦手な私に。
あの方は、新しい仕事を与えてくれたのだ。
そして、私の作り出すものを通して、今までとは違う。新しい人付き合いを。誰かの喜びと、笑顔を与えられる。そんな仕事を。
王宮にいたあの時から。
ずっと、私に示してくれていたのだ。
それなのに…。
私がそれに気づいたのは、この指輪を作った頃だったか。
いつも、いつも、そうだ。
私は、本当に大切なものに気づくのが、少々遅すぎるのかもしれない。
魔法使いは右手を空に伸ばしたまま。
まるで、助けを求めているかのように。
大切な何かを探しているように。
王女の姿を、探しているように。
手を伸ばした。
脳裏に浮かぶ記憶も、その姿も、随分と薄れてしまったのかもしれない。
それとも、涙で見えないのだろうか。
「お店も、全て、失ってしまったよ。
まさか…ここにきて。今になって、こんな後悔をするなんて思わなかったな。」
痛みで意識が途切れる。
今更何を…と自分でも可笑しくなった。
あまりに刹那的に生きてきた自分。
死んだらあの方に会える。
そう思って、そんな基盤や執着など無いのだと思っていたのに。
崩れゆく街並みを見ながら。
あまりに儚いものだとその時に始めて実感した。
何か…残しておけばよかった。
全てが戦火に呑まれ、私の作ったもの、その全てが無くなってしまったとしても。
無くせない何かを作っておけば良かったのかな。
貴女が私の為に残してくれていたもののように。
私も、自分の技術や想いを。誰かに託せるようなものを。
与えられれば良かったのかもしれない。
初めて、自分のもてる全てを、ほんの少しでも、誰かに与えたいとその時思った。
それなのに。
…気づくのが遅すぎたのかな。
流れ落ちる涙が、頬をつたう。
そうだ。私は…いつも、いつも。
気づくのが遅すぎるんだった。
痛みが、意識が、王女の微笑みが…ゆっくりと薄れて…やがて消えていった。
-----
この場所で、動けなくなってから。
どれほど待ったのだろう。
誰も来ないお店。
静寂の中で、ただひとり。
私は作り続けていた。
随分と時間が経った気がする。
それでも、私は動く気になれなかった。
その全てを手放して、王女のもとへ馳せ参じるなんて事が。
その全てが、私にとってこれほど、大切なものだと気づいてしまってから。
あの方はもう、私の事を忘れてしまったかもしれない。
それならば、なおさら。
私が、ここを簡単に手放す事はできない。
カランコロン
お店のベルが鳴った。
鳴る筈のないベルが。
もう、誰も来ない筈の。
魔法使いの店のベルが鳴った。
--------
再会~story~
というこで、最後ですね。
過去の魔法使いとの物語。
ストーリーはご都合主義で進んでますが、浮かんできたイメージをつないでみました。
何か、死んだら王女のもとへすぐに飛び立つぜ!って感じじゃあないんだよな。
その王女と同じくらい。大切にしてるものがあるんだけど、それを抱えてたら執着になっちゃってて。
だから、ここから動けなくなっちゃった。
って事なのかなぁとか思いました。
これは、過去生とかよりは、私の中にある物語な気がします。また何か思い出したら書くかも。
エンディング曲は是非ともGacktさんの再会~story~で。
実はこの曲、私がGacktさんのCDで、初めて買った思い出の?CDでして。
Gacktさんファンになるキッカケのような曲でした。
今思えば・・・この頃から、そういう自分の中の物語に反応していたのかも・・・。
Gacktさんの曲は、一人の女性を強く想うような、そんな曲が多いもんで・・・。
なんにせよ。
過去の魔法使いは、なんかもう王女と好きなだけ一緒にいればいーと思います。←w
ありがとうね、過去の(?)、物語の魔法使い。
今度こそ、幸せにね。
私は今のバカ王子的なガイドの魔法使いと、これからもなんやかんや、頑張っていこうと思います。ww←(;´Д`)