2002年 「阿弥陀堂だより」
監督:小泉堯史
原作:芥川賞作家南木佳士の同名小説
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パニック障害を患った妻の美智子を連れて
故郷の信州に移り住む夫の上田孝夫夫婦の再生の物語
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かって大学病院の医師だった美智子(樋口可南子)は
無医村であったこの地で死者を祀る阿弥陀堂に暮らす
”おうめ婆さん”(北林谷栄)始め、
村の人々を診察するようになる。
医師として働く美智子をいつもやさしいまなざしで
支える上田孝夫(寺尾聡)は小説家だが、
10年前に新人賞を受賞したものの
本が出ない・売れない作家の端くれと孝夫は言っている。
医師美智子の歓迎会で花見百姓の話が出ると
「夢を追っている花見百姓と一緒に生活するのもいいかなって」
村人たちの前で応えたのだった。
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医師の先輩である幸田重長(田村高廣)と
奥様のヨネ(香川京子)のお宅を
訪れた際
”有名になることはけしてよいことではありません”
”それは人間を高めはしない”
”創造の目的は評判でも成功でもありません”
”ついうかうかと皆の口の端に上がることなど
恥ずかしいことだと思いなさい”
重い病気で幾ばくも無い恩師からの言葉は
10年前に新人賞のお祝いに戴いたものであった。
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四季折々の美しい信州
いつも二人は自然を楽しんでいる
”いつの間にか遠くを見るのを忘れていました”
”やさしさに触れたときなぜ涙を流すのだろう”
山に抱かれた大自然の中、散歩の途中で涙した
美智子のことば
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孝夫が村の各家に届けている「広報誌」には
おうめ婆さんの”阿弥陀堂だより”が掲載されている
そのコラムの文章を
難病を患っている小百合(小西真奈美)が
取材して書いている。
若い小百合は入院することになった。
小百合の病室に見舞いに来た孝夫は
”日々の命の営みが時にあなたを欺いたとて”
”悲しみとまた憤りを抱いてはいけない”
”悲しい日には心を穏やかに保ちなさい”
”きっと再び喜びの日が訪れるからーーーーー”
う~んプーシキンはいいよねぇ
と言って
いつの間にか手に取って読んでいた孝夫は口にした。
ロシア近代文学の嚆矢とされる作家プーシキンの本を
パラパラと読んだ孝夫はベッドの脇机に戻した。
美智子医師らの徹夜の治療によって小百合の手術は
成功した。おうめ婆さんが喜んで涙した姿のあと
幸田重長宅へ
美智子が目にしたものは壁に掲げてあった額縁の
「自治三訣」
”人のお世話にならぬよう”
”人のお世話をするように”
”そして報いを求めぬよう”
優しいヨネと村人たちが見守る中、重長は…
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おうめ婆さんのコラムより
目先のことなどとらわれるなと言われていますがーー
春になれば、ナス・インゲン・キュウリなど
次から次へと苗を植え、水をやりそういうことに
目先のことばかり考えていたから知らぬ間に
96歳になっていました。目先しかみえなかったので
よそ見をして心配事を増やさなかったのが長寿のーー
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ご先祖様の霊に対して
供養と感謝を伝えるお盆
信州でもお盆になると亡くなった人たちが
阿弥陀堂にたくさんやってきます。
迎え火を焚いてお迎えし…
そして
今日は送り火…