東京地裁平成22年12月15日判決は、自動車対バイク事故の過失割合(信号機のないT字路交差点)について判断を示しているのでご紹介します。
事故は午後8時30分ころ発生しました。
事故現場は信号機のないT字路交差点です。T字路交差点は、東西道路と北からの道路(南北道路)が接合するところにあります。
東西道路が優先道路です。夜間でも照明があって明るいところです。南北道路から東西道路の右折方向の見通しは不良です。
自動車が南北道路から東西道路に右折進入したところ、東西道路を右方から走行してきたバイクと衝突したのです。
自動車はウインカーも点滅させ、一時停止もしています。東西道路は交通が激しく、しばらく待機してから右折をしたのです。
バイクは制限速度50キロメートルのところ時速90キロメートル程度で走行していました。
裁判所は、自動車には右方に対する注意を怠った過失があったとしました。バイクにも右折車両に対する注意が不十分という過失があったとしました。その他、東西道路の交通が激しかったこと、信号機もないこと、南北道路の幅員が狭いことから南北道路から東西道路に右折するのは不適切であった、バイクも重大な速度違反をしたとして、自動車の過失割合を80パーセント、バイクの過失割合を20パーセントと認定しました。
別冊判例タイムズ「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂4版」224ページは、明らかに狭い道路から自動車が明らかに広い道路に右折しようとして明らかに広い道路を直進してきたバイクと衝突したケースについて、基本的な過失割合として、バイクの過失割合を15パーセント、自動車の過失割合を85パーセントとしています。修正としてバイクに著しい過失又は重過失がある場合にバイクの過失割合を10パーセント増し、自動車に著しい過失又は重過失がある場合に自動車の過失割合を10パーセント増しとしています。ですから、東京地裁判決は、バイクの過失の著しさを認め上記過失割合としたと考えられます。
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弁護士 齋藤裕(新潟県弁護士会所属)
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