今井正監督の1959年の作品。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%82%AF%E3%81%A8%E3%82%A4%E3%82%B5%E3%83%A0
終戦直後、進駐軍の兵隊たちを相手に、街にはパンパンと呼ばれる娼婦たちがたむろしていました。その彼女たちが身ごもり、産んだ混血児たちは、日本の社会で奇異の目で見られ、差別されていました。アメリカ白人との間でできた子でさえ、ひどい差別を受けていた時代、ましてやアメリカ黒人との間に生まれた子への差別は、相当なものだったろうと思われます。
この映画の主人公、キクとイサムは、ともに黒人とのハーフ。当時は混血児と呼ばれていましたが、映画の中のセリフには「混ざりっこ」という言葉が使われていました。二人の父親は別なのですが、母親が結核を患って病死。東北の寒村に住む年老いた祖母のもとに引き取られ、村の小学校に通っています。キクは体格が並外れて大きくスポーツ万能。彼女をからかう男の子たちに負けじと立ち向かいます。
北林谷栄ふんする祖母は、野菜を作って街に売りに出て、ほそぼそと現金収入を得ています。家の藁ぶき屋根は傾いているようで、どこもかしこもぼろぼろ。着ているものも、ぼろで、常食しているのは稗飯を湯漬けにしたものらしい。
祖母の悩みは、二人の将来。イサムの方は、アメリカの金持ち?夫婦に養子としてもらわれることになるのですが、キクはその当てがない。「手に職をつけるようがんばれ」と女教師に諭されるのですが、彼女はキクの絶望的にしか思えない将来をおもうと、口ごもりがちに。
キクもイサムも、普通の小学生から抜擢されたのだそうですが、それにしては演技がうまい。とくにキク役の女の子は、タップもできるし、歌も歌える。磨けば相当芸達者になりそうなのに、その後彼女がどうなったかは、ウェブ上ではわかりませんでした。イサムのほうは、70歳のときに、新聞「赤旗」のインタビューに答えたという記事を見つけました。彼は映画出演の後、事情があって関東から関西に転校したのだそうですが、彼が転校する前、学校側がこの「キクとイサム」を全校生徒に見せたそう。そのおかげで、彼は一度もいじめにあわずに済んだそうです。大人がちゃんと手当てすれば、子供は普通に接することができるのだなとおもいました。
当時まだ40代だったという北林谷栄は、80代の老婆を演じるために、何本?も歯を抜いたそうです。そのせいで、ものすごく老婆に見える。70年代か80年代ころ「楢山節考」という映画で、坂本スミ子が前歯を折るシーンがあり、ほんとに折ったと知って驚きましたが、実はもう先例があったのだと知りました。
ところで、このころの日本映画は、録音が悪いのか、フィルムが古いからなのか、ものすごく聞き取りにくい。おまけに東北弁らしい方言と相まって、さらにわかりにくい。この映画、実をいうと半分以上、聞き取れなかった。さほど複雑な筋ではないので、大体想像して理解しました。日本映画にも、ぜひぜひ字幕を付けてほしい。
おまけ。「キャスト紹介」を開けたら、三国連太郎の写真の下に「滝田修」とありました。間違いです。今井正の紹介も簡単すぎでした。
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