にわたずみ

松岡永子
日々のことなど

『萱場ロケッツ!』 第2劇場

2014-04-05 23:51:56 | 舞台
2014.3.8(土)19:00 インディペンデントシアター1st

舞台は、段ボール箱でいっぱいの部屋、のセット。
型どおりの前説が始まる。「飲食喫煙はご遠慮ください。もう聞き飽きているかと思いますが、携帯電話等、音の鳴る機器は電源から切っていただけるとありがたいです。(舞台を見ながら)段ボールがいっぱいです。この部屋の住人はこれから引っ越していくのでしょう。そのひとは間もなくここに出てきて…」
舞台に出てきたエプロン姿の女が、前説をしている彼に(演技を)始めるようにという。
「いや、僕は舞台監督だから。開演が遅れてるから、話を繋いでいるところだし…」と少々やりとりがあったあと、押し問答を避けるように「役者が来るまでの代役でいいから」といい、男は渋々舞台に上がることを承知する。

男はパジャマ姿になっていて、ここはなにかの施設のようだ。
記憶があやしくなっている老人用の施設だろうか。そういえば、代わりの人が来るまでだから、といった相手をなだめるような物言いは、老人や認識力に問題のある人に対する説得の仕方だったなと思う。
ここでの先輩らしい男が「記憶がはっきりしなくなるのもいいぞ。妻が日替わりでいろんな女になっているように思える」というと別の男が、「それ、毎日違うスタッフさんが入ってるだけなんじゃないの?」
そうか、さっきからこの舞台で「エプロン姿の女」を何人もの女優が入れ替わりで演じているのは、記憶の不確かさや世界の不安定感を表現するためかと思ってたけど、単に違う人だからかもしれない。と気づいたのを見すましたように、それまでひとりずつしか出てこなかった女優たちが同時に登場するようになる。

主人公としての記憶がない男は、自分がつけていたらしい日記を読む。
「ロケットに乗って東北へ行った」等々、妄想としか思えないことが綴られている。
もしかしてラリっていたのか? 男が新薬の実験に参加していたらしいことも示唆される。現在の混乱はその副作用なのだろうか。

でも「ロケットで東北へ」という一見荒唐無稽な話は、実はそうあり得ないことでもないのだ。
劇中でふれられていて知ったが、「カヤバロケット」というコンクリートミキサー車(を作っている会社)があったらしい。
しかし、「コンクリートミキサー車で東北へ」というのも、かなりヤバイ話なのではないか。「いったい何を埋めたんですか?」と、男は尋ねられる。

アルツハイマーのような老人問題、原発労働や都市伝説化している治験バイトなど自分の身を切り売りする労働者の貧困問題など現代社会の問題が出てくる。そして現実社会と同じく、何も解決はされない。
謎が深まる、とか、解けていく、とかいうより、とりとめなく連続していく感じで舞台は進む。
体調のせいもあって、舞台上のできごとすべてに集中しつづけることができなくてぼんやりしていたためでもあるだろう。

演じている人を演じるメタ演劇というのはよくある。だが、そういうものとしてこの舞台を見るとなんとなく据わりが悪い。
これはひとりの男の頭の中を形にしたものだ、と解釈できなくはないが、そうするとなんともいえない違和感がある。
何かを忘れている気がするのだが、それが何なのかどうしても思い出せないような、もどかしさに近い感覚。これは、まとまらない頭で見るのが適当な舞台だったかもしれない。
何が恐いのかわからない、なんだか恐い舞台だった。
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