またまた引っ越し (最終編、百日紅の木)

2025-02-15 11:28:40 | 随筆
結論から先に報告する。 新たに不動産を買う事になり、引っ越しは4月の上旬と決まった。例の、「ジジババ居住区」にある一軒屋。

気に入った物件を「盗られた。」あと、私は悶々として毎日を過ごしていたが、「神様が、もっと良いものを......。」というダイアナの言葉に励まされて、祈りに集中することにした。

祈りと言えば、101歳で召天したボルティモアの Big Nana (おおばあちゃん)は祈りの戦士だった。 彼女の口癖は、「God is good all the time. (神様は、 いつもよくしてくださる。)」。 子供4人を抱えたシングルマザーであった Big Nana は、壮絶な人生を送ったが、いつも感謝の心に満ち溢れていた。

さて、家族や友人たちにも祈りのリクエストを続けていたある日、聖書のみことばを思い出した。

「新約聖書マタイの福音書7章、9-12節」
あなたがたのうちで、自分の子がパンを求めるのに、石を与える者があろうか。 魚を求めるのに、蛇をあたえるものがあろうか。 このように、あなた方は悪い者であっても、自分の子には、良い贈り物をすることを知っているとすれば、天にいますあなた方の父はなおさら、求めてくる者に良いものをくださらないことがあろうか。

神様は我々の祈りに耳を傾けて下さるのだから、もっと具体的に祈ることに決め、私の希望を書き出してみた。

1. 寝室は2つ。
2. 将来、小型グランドピアノの購入を計画中なので、十分なスペースのある居間。
3. 炎が恐いので、料理はガスではなく電気のコンロ。
4. 寝室、居間、廊下は全て木の床。 カーペットは家ダニの温床となるので避けたい。 台所、バスルーム、洗濯部屋の床は セラミック タイル。
5. 暖炉のない家。 これはノースカロライナで暮らした40年前、経験したが、煙突と屋根の隙間から雨漏りがしたり、野生動物が屋根から忍びこんできたりして、とても面倒。
6. 観葉植物の鉢がたくさんあるので、サンルームのある家。
7. 降雪の度に車を掘り出すのは、もうやりたくない。 ガラージ付きの家。
8. この歳で、花壇作りはしんどい。 アメリカ東海岸は、石のように固い赤粘土の土壌で、植物を植えるのに適した土づくりは時間と労力を要する。であるから、すでに花壇がある家。
9. 最後に、庭に百日紅の木が植えてある家。 昔、父が亡くなるまで家族5人で住んでいた家の庭にこの木があった。 毎年夏の間中咲く、薄紅色の花は可憐で愛らしかった。 私はこの花を見るたびに子供時代を思い出す。 イエス様、どうぞ百日紅の木を一本お与えください。

ある日、ダイアナが仕事場からラインを送ってきた。

「この家、どう?」

嫁は仕事の休みをわざわざ取って、私を新たな物件へと連れ出した。 

玄関から入ると、バタースカッチ色の木の床が広がっている。 ダイアナは嬉しそうに、
「ママ、見て、見て!」「ママ、見て、見て!」と繰り返す。 箇条書きにした希望全てを満たす家だった。 

しかし、そこで神様からの祝福は終わりではなかった。 なんと、ガラージの上に改造した屋根裏部屋があったのだ!  寝室が2つの「小さな家」を目標としていたのだが、その時点で裁縫部屋を持つことは、諦めていた。 私はキルト作りが趣味なので、裁縫道具や買い集めた布の束などがたくさんある。 ここを「Sewing Room」としよう。 時々この様にして神様は、私たちが願う以上のものをお与えくださる。

エージェントの ロニーは、にこにこしながら説明をするのだが、私は感動で頭がくらくらし、「うぅ.....。」という声しか出てこない。 

そうして、庭には百日紅の木が7本あった。
God is good all the time.
「完」
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