前原外相:
北朝鮮との直接対話路線を修正 周辺国に同調で
北朝鮮との直接対話に意欲を見せていた前原誠司外相が、慎重姿勢に転じた。当初は「他国任せではダメだ」と政治対話に意気込んだものの、周辺国に同調する形で前のめり姿勢を修正した。
日朝公式対話は08年を最後に途絶え、北朝鮮の挑発に対しても、日本は「中国の影響力行使を求める」と言うばかり。存在感の乏しさに危機感を強めた前原外相は、省内の会議で「北朝鮮の意思を確認できる政治対話のパイプが必要だ」と訴えたという。
拉致被害者家族の高齢化が進む中、拉致問題解決は急務だ。朝鮮半島に平和をつくるのも日本の使命と言える。米中露とのあつれきで失速した日本外交を再生したいという思いもあるかもしれない。
ただ、前原外相の積極姿勢には、政府内にも懸念があった。日朝対話の歴史は「謀」の応酬で、故意の誤報が飛び交う。菅政権の危機が叫ばれる中、 「電撃訪朝、拉致被害者救出による支持率急伸」をささやく声もある。前原外相は民主党代表当時、「偽メール」に乗せられ、引責辞任した過去もあり、「危 なっかしい」(政府関係者)というのだ。
米韓は延坪島(ヨンピョンド)砲撃やウラン濃縮などを理由に北朝鮮との対話に慎重だ。日本にも北朝鮮との交流を求める世論はない。結局、前原外相は韓国との会談で「日朝より南北の対話を優先」と宣言し、積極発言を引っ込めた。
日朝では引き続き水面下での接触が進められる。拉致被害者に関する情報は絶えず当局に寄せられ、精査が進む。水面下接触が熟せば政治判断だ。その時、日本は指導力を発揮できる政権になっているか。課題は国内にもある。【西岡省二】