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平壌での美術教育に携わっているため、平壌という土地柄はもともと朝鮮近代美術において非常に大きな意味をもっているのである。

2018-03-18 | 朝鮮文化の紹介

高句麗の美意識息づく平壌の街並み/喜多恵美子

中間色多様、造形の繊細さや優美さと共鳴

ビル群も外装には中間色が好んで用いられていた(筆者撮影)

2017年8月に訪朝した際、観覧の機会に恵まれた朝鮮美術博物館は、金日成広場に面した石造のたいへん重厚で広大な建造物である。その中には1号室から24号室までの展示室を備え、所蔵作品も高句麗時代から解放後の近現代美術まで網羅しており、膨大である。

筆者は、朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)発行の「朝鮮美術史」や美術博物館の図録を通してある程度、朝鮮の美術史観を学ぶ努力をしてきたものの、やはり作品の実見はすべてを凌駕する。今回の観覧に際しては、実作がどのように展示され、どのように区分され、どのような作品が重視されているかをこの目で確認できたことがなによりもありがたかった。

 

朝鮮美術博物館の外観(盧琴順撮影)

印象的な壁画の実寸模写

今回の観覧で印象に残ったのは、やはり高句麗の古墳壁画の実寸模写である。高句麗古墳壁画の模写としては、日本では植民地時代に東京美術学校教授である小場恒吉が江西大墓の四神図を描いたものがよく知られている。この模写は東京大学付属博物館ならびに大韓民国の国立中央博物館に分散して所蔵されている。以前、東京の朝鮮大学校附属の歴史博物館を訪問した際、江西大墓以外の著名な古墳壁画の模写がいくつもあることに感銘を受けたが、平壌の美術博物館では当然ながらこの朝鮮大学校附属歴史博物館を凌駕する量の壁画の模写を見ることができた。これらの模写が朝鮮近代美術において重要画家である鄭玄雄らの手によるものであったことも作品を見るうえでもうひとつの大きなポイントとなった。

安堅、鄭敾、金弘道といった朝鮮時代を代表する画家の作品中、共和国所蔵になる貴重な遺物を実見できたことも大変よかった。作品保護の目的だと思うが、実作ではなく模写が展示されていることが結構あったので、その点、注意しながら観覧した。

歓送会の会場風景

筆者の専門は近現代であるため、開港期以降の作品に対して大いに期待していたが、意外にも開港期から解放前後の作品は展示されておらず、展示室の後半部分においては1960年以降の作品が主流となっていた。美術分野においては、金瑢俊、吉鎮燮、金周経をはじめとする、実力派の画家が越北したことで知られているし、そもそも東京美術学校への初期留学生である金観鎬や金瓚永らは平壌出身であり、帰国後、平壌での美術教育に携わっているため、平壌という土地柄はもともと朝鮮近代美術において非常に大きな意味をもっているのである。

とはいうものの、1960年代以降の作品は、これはこれで素晴らしいものであり、図録ではなじみ深いものであった作品を朝鮮美術博物館という重厚な空間で見ることができたのは本当に喜ばしいことであった。1960年代以降に描かれた朝鮮絵画には金日成主席の指導が入っており、明るい大画面の「朝鮮画」に重点が置かれている。これはいわゆる朝鮮時代の文人画や彩色画とも、韓国の「韓国画」ともまったく異なる、朝鮮独自の絵画様式となっている。輪郭線を描かない没骨法と陰影法により、一見油彩画のようにも見える作品は、油彩画にはない透明感と軽快な色彩が特徴的であり、巨大な画面に群像が配されることが多い。政治的内容を扱った絵画は「プロパガンダ美術」として、日本では「正統な美術品」としては扱わないのが一般的であるが、これは西洋近代的な意味での美術史学の限界を意味してもいる。朝鮮民族の国である韓国の美術史では、これがまた日本と異なり政治と美術との関係性については肯定的に解釈されることが少なくないので興味深い。80年代の民主化闘争の折に盛んに制作された民衆美術がそのよい例である。民衆美術は韓国の現代美術史で重要な位置を占めている。

高句麗古墳から出土した金銅製装飾。平壌の建物の流麗な線のイメージを思わせる

筆者は韓国に五年ほど留学していたため、朝鮮民族の造形感覚や色彩感覚にたいしてある程度、これといった認識をもっていたつもりであった。しかしながら、朝鮮はそうした感覚と重なる部分があるものの、まったく異なる点も少なくなかった。まず、ビルの建て方や外装においてはソウルでよくみた建物に近いものがあり、緑色に塗られたビルについては懐かしいとすら思ってしまうほどであった。

かと思えば、建物の建材の造作や装飾の繊細で流麗な様子は、韓国のものとはまったく違い、例えるとフランスの意匠を思い起こさせるところがあった。それは、突き詰めると高句麗の金銅製冠飾などに見られる繊細でのびやかな線の造形にいきつく。これは韓国の造形感覚がときに無骨なまでに素朴なのとはきわめて対照的である。筆者は大学の朝鮮美術史の授業のなかで三国時代の金冠を比較してみせることがあるが、まさに高句麗の繊細で優美な造形と高句麗の美意識を引き継いだ百済のやや素朴で愛らしいデザイン、さらには新羅の勇壮で男性的な造形を並置したときに見られる埋めがたいギャップが平壌とソウルの造形物の間に見出すことができるのである。

開城の名物料理飯床器

温かな感情いきかう

また、色彩も朝鮮民族は原色を好むとされるが、朝鮮ではむしろ中間色が多用されており、それが造型の繊細さや優美さとうまく共鳴しているのである。朝鮮は明らかに高句麗の末裔なのだと再認識した次第である。

バスでの移動中、たまに裏通りを通る時があったが、素朴なアパートの窓々にゼラニウムのような植木鉢がちまちまと並べられているのを見た。植物というのは手をかけてやらないとすぐに枯れてしまうものだ。そうした窓辺がいくつも開け放たれており、そのひとつからのんびりと外を眺めるおじいさんがいて、その下には遊びはしゃぐ子どもたちの姿があった。こまやかな感情のいきかう温かな空間がここにはあるのだなと感じることができた瞬間であった。

(きだえみこ、大谷大学教員)


韓国ギャラップが行った調査(1月2~4日)当時、「北朝鮮が変わった」という回答(28%)の二倍に近い数値だ。

2018-03-18 | 金正恩氏を追う

韓国国民の半数「北朝鮮が変わった」金正恩委員長の好感度も安倍首相の2倍に

「北朝鮮の態度変わった」28%→53% 
1月の調査に比べ倍増  
トランプ大統領の好感度も24%で周辺国首脳の中で第1位 
文大統領に対する肯定的評価74%…3%p上昇

北朝鮮を訪問中のチョン・ウィヨン首席対北朝鮮特使が今月5日、平壌で北朝鮮の金正恩労働党委員長と面会している=大統領府提供//ハンギョレ新聞社

 平昌(ピョンチャン)冬季五輪を機に始まった南北首脳会談や朝米首脳会談に向けた対話局面が続く中、「北朝鮮の態度が変わった」という回答が半数を超えるという世論調査結果が出た。

 世論調査専門機関の韓国ギャラップが今月13~15日に全国の成人1003人を対象に実施し、16日に公開した世論調査結果(95%の信頼水準で標本誤差±3.1%ポイント)によると、北朝鮮の態度に関する質問に、回答者の53%が「変わった」と答えた。一方、「変わっていない」という意見を示した回答者は35%だった。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長が新年の辞で南北対話の意思を明らかにした直後、韓国ギャラップが行った調査(1月2~4日)当時、「北朝鮮が変わった」という回答(28%)の二倍に近い数値だ。

 北朝鮮の核放棄の見通しについても、認識の変化が現れた。1月の調査の時は「核を放棄しないだろう」という回答が90%だったが、今回調査では64%で、2カ月で26%ポイント下落した。一方、「北朝鮮が核を放棄するだろう」という回答は1月(6%)より16%ポイント増加した22%だった。2014年にギャラップが行った3回の調査では、「核を放棄するだろう」という見通しは7~11%に止まった。

 このような調査結果は、昨年まで北朝鮮に対する否定的認識が徐々に増加してきたことを考えると、劇的な変化と言える。平昌五輪を機に南北対話が急進展し、非核化に向けた南北首脳会談や朝米首脳会談が可視圏に入り、平和に対する国民的期待感が反映された結果と見られる。

 ソウル大学統一平和研究院が2007年から毎年行ってきた統一意識調査(成人1200人を対象に面接調査)でも「北朝鮮が変わってきている」という意見は2008年以降徐々に減少し、「変わっていない」という回答は増加傾向を示してきた。昨年の調査(7月3~28日)でも「北朝鮮は変わっていない」という回答が68.0%だった一方、「変わってきている」という回答は31.9%にとどまった。チョン・グンシク統一平和研究院長は、北朝鮮に対する韓国国民の認識の変化について「南北首脳会談、朝米首脳会談などが発表され、戦争から平和へと方向転換が行われているという楽観的な見通しが国民の間に芽生えたようだ」と話した。

 このような世論は周辺国の首脳に対する好感度にも影響を及ぼした。ギャラップが周辺諸国の首脳5人に対する好感度を調査した結果、米朝首脳会談を決定したドナルド・トランプ米大統領(24%)が第1位を占めた。中国の習近平国家主席(19%)やロシアのプーチン大統領(13%)、金正恩委員長(10%)、日本の安倍晋三首相(5%)がその後に続いた。昨年11月の調査では、習主席(29%)、トランプ大統領(25%)、プーチン大統領(14%)、安倍首相(6%)の順だった。当時の調査には金委員長が含まれなかった。ギャラップは「金委員長に対する好感度は依然として低い。しかし、2013年に行った金委員長の好感度調査では、回答者の一部が抗議したこともあるが、今回はそのようなことがなかった」とし、「5年前とは明らかに雰囲気が変わったことが分かる」と明らかにした。

 今回の調査で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の国政遂行に対する肯定的な評価は、先週(6~8日調査)より3%ポイント上がった74%となった。

イ・スンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)