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同種の訓練としては最大規模だという。 浦項一帯の海岸で実施されている上陸および内陸への進撃訓練

2016-03-20 | アメリカの常識は世界の非常識

〈そこが知りたいQ&A〉

米南軍事演習の危険な中身とは?

国際法に違反、先制攻撃を想定した実戦訓練

米軍と南朝鮮軍が「キー・リゾルブ」「フォール・イーグル16」合同軍事演習を開始したことで、朝鮮半島の軍事的緊張が高まっている。「過去最大規模」とけん伝されている合同軍事演習の内容をQ&Aでまとめた。

 

Q. 今回の合同軍事演習はどれほどの規模で行われているのか。

軍事演習は3月7日に始まり、4月30日まで行われる。米南両軍が毎年この時期に行う合同軍事演習は、指揮系統を確認する増援演習の「キー・リゾルブ」と、米南両軍の海兵隊による上陸演習「フォール・イーグル」から成る。

今回の合同軍事演習には、米軍が前年比2倍にあたる1万7000人、南朝鮮軍が同1.7倍の30万人が参加している。射距離1200~2500km のトマホーク巡航ミサイルなどを搭載した攻撃型原子力潜水艦ノースカロライナや、ステルス戦闘機F22、ステルス戦略爆撃機B2など最新鋭の戦略兵器が投 入されているという。3日には、米海軍佐世保基地配備の強襲揚陸艦ボノム・リシャール(乗組員約1200人)が釜山港に入った。

また、13日には、米国本土から原子力空母ジョン・C・ステニスも派遣されたと報じられた。ジョン・C・ステニスは全長333メートル、排水量は9 万7000トン、乗組員約6500人に達する米軍最大級の航空母艦だ。飛行甲板の面積は1万8211平方メートルで、米海軍のスーパーホーネット(FA- 18)戦闘攻撃機や早期警戒機ホークアイ(E-2C)など約80機を搭載している。

釜山に入港する米軍の原子力空母ジョン・C・ステニス(聯合ニュース)

釜山に入港する米軍の原子力空母ジョン・C・ステニス(聯合ニュース)

今回の合同軍事演習はその規模もさることながら、例年に比べてより侵略的な軍事行動が実施されている。

これまでの米南軍の海兵隊による合同軍事演習は、北側の海岸を想定した上陸作戦が中心となっていたが、今回の演習では上陸後さらに内陸部の軍事施設 に進むための訓練が強化されているという。12日、浦項一帯の海岸での上陸および内陸への進撃訓練「双竜訓練」がメディアに公開された。朝鮮が「平壌進撃 作戦」と見なす今回の「双竜訓練」には、米南に加えてオーストラリア、ニュージーランドの海軍、海兵隊約1万9000人が参加。同種の訓練としてはこれま でで最大規模だという。

浦項一帯の海岸で実施されている上陸および内陸への進撃訓練「双竜訓練」(統一ニュース)

浦項一帯の海岸で実施されている上陸および内陸への進撃訓練「双竜訓練」(統一ニュース)

Q. 合同軍事演習には昨年策定された新作戦計画「5015」が初めて適用されるという。その内容とは。

「作戦計画5015」とは、朝鮮が核・ミサイルを発射する兆候を確認した場合、朝鮮国内の核・ミサイル施設をピンポイントで破壊する先制攻撃作戦だ。

その柱として朝鮮の首脳部を狙った「斬首作戦」がある。核・ミサイルの発射命令の権限を握る朝鮮の最高指導者を暗殺する内容だ。「斬首作戦」には、 イラク戦争やアフガニスタン侵攻の際に敵の要人を暗殺する作戦に従事していたとされるNavy SEALs(ネイビーシールズ)や第1空輸特戦団、第75レンジャー連隊などの特殊部隊が参加すると言われている。これらの部隊は、合同軍事演習が始まる 前の2月上旬にすでに南朝鮮に派遣されたと報じられた。

Q. 米南は年次的な「防衛訓練」だと説明しているが。

主権国家の首脳部を狙った「斬首作戦」を公言しながら実働部隊を展開する訓練が「防衛」目的ではないのは明らかだ。

作戦計画「5015」の遂行は、「演習」という名の下の侵略戦争そのものであり、国連憲章にも反する。

米南は朝鮮が核・ミサイルを発射する兆候を確認した場合、先制攻撃するとしているが、その判断基準は米国にある。朝鮮が武力行使をしなくても攻撃するということは事実上、予防戦争を想定しているということだ。

予防戦争とは、差し迫った危険性がなくても、将来的に脅威となる可能性のある潜在敵国に対して先制攻撃し、敵の攻撃を未然に阻止するものだ。きわめ て積極的な攻撃意思を有した、侵略戦争の一種といえる。米国が「大量破壊兵器の脅威」に関する虚偽の情報を口実にして侵攻を開始したイラク戦争が代表例 だ。米国主導のイラク戦争が明白な国連憲章違反、国際法違反であることは周知の事実だが、同様の違法行為が今、朝鮮半島で行われている。

また、北への軍事制圧訓練に日本にある米軍基地から米軍が参加していること自体、憲法9条に違反する行為だ。

作戦計画「5015」に基づく先制攻撃訓練がいつ実戦に移行しないとも限らない。

実際に演習には、有事の際に一定期間の戦闘能力を有する海上事前集積船団(MPSS)が投入されているという。MPSSは、戦車と装甲車、弾薬など 戦争に必要なすべての装備を搭載する、一種の軍需司令部だ。さらに米南両軍は今回の演習で、有事の際に米軍の増員戦力を朝鮮半島に迅速に展開することにも 焦点を当てるという。

Q. 合同軍事演習の実施によって、朝鮮半島の緊張が高まっている。

侵略的な軍事行動によって核戦争を挑発しているのは米南だ。「斬首作戦」のような武力による威嚇は、最高指導者を国家の「最高尊厳」として重んじる 朝鮮が強い反発を示すのは必至であり、結果として軍事的緊張が激化する。米南は今回の合同軍事演習を「過去最大」だとけん伝し、核攻撃手段が大挙投入され た戦争演習の場面をメディアを通じて拡散させることで人々の不安を煽っている。

Q. 今回の軍事演習に対して朝鮮が示した対応策が、日本のメディアでは「挑発行為」をしているかのように伝えられているが。

朝鮮は「自衛」について述べている。

2月23日、朝鮮人民軍最高司令部は重大声明を発表し、「敵の特殊作戦武力と作戦装備がささいな動きでも見せる場合、それを事前に徹底的に制圧する ための先制的な正義の作戦遂行に入るであろう」との原則的立場を示した。「先制的な作戦遂行」について述べているが、それは米南が訓練にとどまらず実戦に 移行した場合、あるいは朝鮮側がその兆候を確認した場合という前提をつけている。

朝鮮はその後、声明や談話を立て続けに発表。「敵がわれわれの最高首脳部と『体制転覆』を狙った『斬首作戦』をけん伝しながらいささかの軍事的妄動 でも働くなら、正義の統一聖戦でわが民族最大の悲願を成就する」(朝鮮国防委員会声明、3月7日)、「われわれの領土、領空、領海に対する侵略企図が判断 されれば、作戦に投入された兵力と手段が起動する前に軍事的に断固たる制圧掃討する」(朝鮮人民軍総参謀部声明、3月12日)と繰り返し強調している。こ れらもすべて、米南がレッドラインを超えた場合の対応を述べている。

(金淑美)