病気はなぜ、あるのか―進化医学による新しい理解ランドルフ・M. ネシー,ジョージ・C. ウィリアムズ新曜社このアイテムの詳細を見る |
いま、『病気はなぜ、あるのか?』 という本を読んでいる。
もともとのキッカケは、爆問学問で見た
総合研究大学院大学の長谷川眞理子教授の話が
面白くて興味を持ったから。
「なぜヒトはヒトを殺すのか?」
この問いに進化論の立場から挑んでいる。
番組については↓
http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/20090519.html
速攻アマゾンで調べて、翌日には著書と訳書を手に入れた。
そのうちの一冊だ。
で、まだ読んでる途中なんだけど、
たとえば、風邪を引くとなぜ熱がでるのか?
体温を2度程度上昇させることにより、
体の防衛機能が活発になる。
つまり、免疫機能を向上させるのだ。
もちろんデメリットもあり、健康な時よりエネルギーを
20%も多く消費するとか、朦朧としたり一般生活に
差し障るのは言うまでもない。
生物が進化の過程でウイルスと戦う中で、どんな
防衛手段を獲得し、今日に至るのかということが
書かれており、研究者や一般人がある治療や投薬を
受けるさいに考慮すべき材料を提供する目的で
書かれたらしい。
たとえば、熱という症状でいえば、単に熱があるから
解熱剤を飲むというのでは、免疫機能を低下させ、
かえって病気の治癒が遅れるという研究結果が紹介されている。
この本を読めば、今日は昼から大事なプレゼンが
あるから風邪が長引くことは承知の上で、解熱剤を飲んで
仕事に向かうのか、今日はゆっくり休めるのだから
栄養をしっかり取って寝て治すのか、
自分の置かれた状況から判断することができるようになる。
自分の実感としても、1ヶ月ほど前に風邪を引いて
1週間以上治らなかった。薬を飲んだのに。
市販薬でいま人気のある、症状狙い撃ちタイプのものだ。
鼻が詰まり、喉が痛く、熱が出たので鼻水を止めて
熱を下げる薬を選択したのだが、これがいけない。
薬を飲んでる間は効果てきめんなのだが、
薬をやめると一向に症状が改善されていない。
仕方なく薬を飲み続けたら、10日近く悩まされた。
その時は、遅々として改善が望めない薬として自分の中で
カテゴリー分類されたのだが、この本を読み進めて
いくうちに合点がいった。
鼻水や喉の炎症は、病気の種類にもよるが基本的に
体の防衛機能が働いた状態なのだ。
風邪で言えば、体内へのウイルスの侵入を許すと、
3つの反応が起こる。
まずは、①これ以上体内にウイルスを侵入させない
次に、②体の免疫機能を高める
最後に、③侵入したウイルスを死滅させる
①が咳や鼻水によってウイルスと思しきものを排除
②が発熱
③が発熱によって活性化した白血球などがウイルスを駆除
…というわけだ。
これを知ってか知らいでか、症状を緩和する風邪薬が
氾濫しているのは、製薬会社の陰謀じゃね?とか勘ぐったり。
医師の出す処方箋にしたって『ブラックジャックによろしく』
が暴露したように薬を出せば出すほど医者と製薬会社が
儲かる日本のしくみ。
風邪の症状を見て取った医師が「卵酒でも飲んでゆっくり
休んでればいいよ」なんて患者に告げても、薬の処方がなければ
いまだ数百円にしかならない世の中なのだ。
風邪薬で済んでるうちはいいが…。
新型インフルエンザの蔓延にしたって、現代社会の薬偏重の
治療体制の盲点を突いているのではと勘ぐってみたり。
要は、人間の体の正常な防御活動と、ウイルスによる症状とが
医師でさえも混同してないだろうか。
医療制度も少しずつ変わりつつあるけど、自分の身は
自分で守るしかないんだなと思ったよ。
話が少しズレたが、面白ければこの本はもっと紹介していきたい。
※ただしこの本の冒頭で述べられているように、
医師の処方やアドバイスを無視するとか、勝手に
判断するために進化論的アプローチを用いるのではなく
医師は病気の解明と対処の一助にするとともに、
患者は自分の身に生じている症状が何なのか、
そして飲む薬がどういう作用を及ぼすかを
医師から説明を受けた上であとは自分がどうするか?
なのだという。
くしゃみも発熱も、防衛機能として認知されれば
時には不快でも我慢するだろうし、やむを得ず薬を
服用する時もリスクが分かるというわけなのだ。