羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

医学と芸術展 森美術館

2010年02月04日 19時02分33秒 | Weblog
 人のからだを見て、これほどまでに描き方が異なるのはなぜだろう。
 それがそのまま医学・医療の在り方と一致している。
 予想はしていたけれど、この展覧会を見るには、それなりの覚悟がいる。
 見てはいけないものがそこには在る。しかし、見ることによって、からだの細胞一つひとつが、死を免れない‘命の実体’を感じ取ることが出来る。
 
 天井高く広々として、空漠たる白の空間に展示されることによって、匂いや触感が消されていく。無機的な空間に、人間の生と性が開示されている。医学と医療の歴史と今と未来がアートの中に溶け込んでいく。
 
 眺めるうちに、自然なつながりのなかで死を受け入れられる感覚に引き込まれる。
 医療が行ってきた過去の時間を、リアルに見せるだけでない。
 いや、これ以上言葉にするのは控えよう。見方によってはとんでもない方向に陥りかねないが、見なければわからない。部屋に佇んで、全身の感覚で捉えなければ始まらない。
 人間と言うものは洋の東西にかかわらず‘生きたい’動物なのだ!
 誰にでも闇雲に薦められないが、ヒトの見方が変わること間違いない。

 医学と芸術展 六本木ヒルズ森タワー53階「森美術館」で、2月28日まで開催されている。
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地獄一定と覚悟し……『親鸞』五木寛之著

2010年02月03日 19時18分15秒 | Weblog
 かれこれ六年前の夏。それまで一編たりとも読んだことがなかった五木寛之作品を年代順に一気に読んだ。
 その後もしばらく新刊本が出されるたびに読み加えていった。
 最近は無沙汰をしていたが、久しぶりに『親鸞』を読み終えたのは昨晩のこと。
「あぁ、ここはあの場面の雰囲気だ」と以前読んだ小説やエッセーに重なって「あの作品はここに辿りつくためのデッサンだったのだ」と思ったりした。それは懐かしさに似た情を呼び起される快感だった。

 幼名‘忠範’から出家となって‘範宴、綽空、善信’として悩み流離い、そしてついに親鸞に到達するまでの青年期を描いた物語を読むにつれて、作者である五木氏の青春と重ねている自分がいた。
 それはあたかも‘胡蝶の夢’のように‘作者が親鸞か・親鸞が作者なのか’、渾然一体の感覚に浸ることができる面白い読書だった。
 文字を追いつつ‘語り部’の言葉を聴く時空を、私は生きているのだ。
 実はこれまで読んだ膨大な量の五木作品には、ある種、切なさに胸の痞えを覚えていた。
「もう一歩のところでなぜ立ち止まるのか。そこを超えて書いておしまいなさい」
 しかし、その一線を越えると、作者でありつつけることが出来なくなる危うさを、常に感じていた。
 
 ところが『親鸞』にはそれがない。苦行を乗り越えたような印象がある。
<生意気なことを言っている>と自覚しつつ、次に越後に流されてからの親鸞の生き様を読ませてもらいたい、とおねだりしながら、魂が揺さぶられ熱い思いが沸々と湧きあがってくるのを感じる。
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『至虚への道』出版記念

2010年02月01日 18時47分39秒 | Weblog
 去る1月30日土曜日のこと、新宿朝日カルチャーセンターで楊進氏の出版記念講座を拝聴した。
 担当の緑川さんから前日に知らせを受けてのことだった。
 伺ったのは本の内容である‘太極拳経解釈’についての座学1時間である。
 本に書かなかった話に、現代脳科学や認知科学等々の知見も交えて、わかりやすく解読された。ついつい笑ってしまうエピソードも挿入されての話術はお見事だった。
 最初に御自身の著書ではなく私の『マッサージから始める野口体操』から話されて、思わず居住まいを正してしまった。さらに話が佳境に入ってからも、野口体操の「上体のぶらさげ」なども例に出された。本をお持ちになっていたことに驚きつつ感激!
 
 この日は、隣接する教室で野口体操の講座があって、その場を早く退出しなければならなかったことが非常に残念、始まる前にその旨をお伝えしていたものの申し訳ないことだった。
 講座はその後も2時間続けられたようだったが、とにかくも伺うことが出来たことなにより。「太極拳経」を読むだけでは理解できない意味の深さを胸に刻んだ1時間だった。
 伝統を守りつつ、新しい解釈を加えて、次の時代の人々に伝承する技をも教えられたように思う。
 ありがとうございます。

 注:楊進氏は、楊名太極拳始祖・楊名時師家の後継者である。
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