羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

八月の風……南国の名残香

2015年08月29日 09時29分49秒 | Weblog
 ここ数年間のことだが、決まって8月の盛りに三宅島から届くものがある。
 最初は、添えられている説明書を読んでも、今一どのように食べるのがよいのかわからず、そのまま放っておいた。
 しばらくして、箱の蓋をあけると、今まで嗅いだこともない甘酸っぱく濃厚な香りが部屋中に満ちあふれた。
 夏の熱気のなかで、それはまさしく南国の香りだった。とは言うもののわたしは南国をしらない。
 中学生の頃、熊本出身の一家につれられてお盆休みに10間ほどの旅をしたことがあるくらいだ。
 熊本が南国とは言い難いかもしれないが、「暑かー」という言い回しを最初に覚えた。東京とは桁違いの暑さだった。

 さて、色は牡丹色というか、熟成した赤ワインの色、とでも言ったらよいのだろうか。
 表面はつるんとして、磨かれたのか、つややかな表情をしている。
 日が立つにつれて香りが一段と強くなる。そのころになると表面のツルツル感が失われて皺が増える。
 並べられている下の方から皺現象は始まるのだった。
 全体に皺がひろがる頃が食べごろと書かれていた。
 インターネットで食べ方を調べる。
 そのまま食べてもよし、ヨーグルトやアイスクリームにかけてもよし、ジャムにしてもし、カクテルもよし、とにかく香りが命の果物であった。
 二つに割ってスプーンで実をこそげると、綺麗にわたとしっよにぷつぷつした種も器に落ちて来る。
 もっぱらヨーグルトにかけて食べるパッション・フルーツは、さまざまな効用があるらしいが、それよりもなによりも独特の香りが命だ、とつくづく思う。

 今年もあの猛烈な暑さの八月初旬に我が家へと届けられた。
 実は、皺を見届けて食べはじめてから、8月も終わろうとするのに、10個の内、5個はまだ残っている。
 皺が足らないのである。お盆すぎの涼しさが影響しているようだ。
 その分、南国の太陽・土・水・風が育んだ香りを楽しむことができる。
 晩夏、今日も雨。冷たい湿気が部屋に忍び込む。
 先ほど、箱の蓋をあけ、一個のパッションフルーツを手に取って皺加減を吟味し、そのまま目を閉じて鼻に当て香りを吸い込む。
 ちょっとくらくらしそう。
 それでもピークには、まだだなー、達していない。
 もうちょっと放っておいて頂戴、と。
 今年は、“長ーく愛して”って、香りが言ってるみたい!
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