羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

ターシャの庭とホワイトクリスマス

2006年12月26日 19時15分35秒 | Weblog
 今日は、昨晩見たテレビのお話。
 NHK・GTV19時30分から20時45分放送「ターシャからの贈りもの・魔法の時間のつくり方 夢があふれるターシャ・テューターの絵本と庭・そして心豊かに生きるとは」
 という番組。

 90歳を過ぎて広大な庭のなかにある田舎家に一人暮らしするターシャ。一人暮らしといっても、犬や鶏や鳩がいる。息子の家族はスープの冷めない距離にいて、一日に何回か母を見舞う。もちろん孫もいて、曾孫もいて、あつまると10人以上の家族になる絵本作家の夢あふれる日常を描いたものだった。

 見るともなしに見ているうちに、引き込まれた。一年を通して撮影されて、最後はクリスマスで終わる。半年雪に閉ざされるアメリカ北東部。春が待たれる。春が来るといっせいに花々は咲く。そして短い夏に、惜しむように咲く花々たち。
 一年中、灯りは蝋燭で、その蝋燭は自家製である。ほとんど自給自足に近い暮らしがそこにはある。1800年代後半を再現していて、それを子供や孫が支えているのだ。

 絵本にそれほど興味を持っていない人でも、ターシャの絵本はどこかで目にしているに違いない。彼女の暮らしが絵本に描かれていることを今回初めて知った。

 で、57歳のときに印税で、その土地を手に入れた。それから30数年をかけて通称「ガーデニング」と私たちが呼んでいる、自然を生かした庭を作り上げたのだ。
世界各地の珍しい花々を育てている。もちろん日本の「杜若」や「薔薇」などもある。花の名前を記録しなかったのだが、(とにかく唖然として見続けてしまったので)同じ種類の花の色を土の成分を変えることで変えていくことまでやってしまうのだ。黄色と赤い花に変貌させる。自然をよく知っている。知識ではない。知識もあるが経験と時間で。

 とりわけ印象深かったのは、秋の紅葉がものすごく美しいことだ。さすがにカナダとの国境に近い地域の秋は、メープルに代表される美しい木々の燃えるような赤に染まる。

 この番組を見ながら、日曜クラスに参加されている植木をつくる二代目のことばを思い出した。
「日本では、ガーデニングは難しいんですよ。はじめても大体3年で見る影もなくなります。地層の問題が大きくてね。イギリスのようなわけには行かないですね」
 なるほど、どのような土で植物を育てるのか。風土は地層までかかわって、一つの自然を作り出している。イギリスもアメリカ東部も、日本の地層に比べたら桁違いに古いことを思い出した。
 
 さらに、ターシャがこんなことを話していた。
命が終わりに近づいて、いままでのような植物ではなく、雑草を植えているらしい。もっと自然に近づくために。自然に還っていくために。正確な言葉ではないが、死を目前にしながら植物への思いが変化し、その思いの中で育てるものが変わっていくという。
そうした彼女の言葉に、豊かな暮らしの真髄を垣間見させてもらった。

時は、ホワイトクリスマス。
一面の雪景色の中で、ターシャの家のもみの木と曾祖母から伝えられたドイツ製赤と青のガラスのオーナメント、そして自家製のジンジャー入りクッキーが飾られ、そこに何本もの蝋燭の灯が揺らめく。
ただただ、家族たちに手作りされるクリスマスの情景を見ていた。
「地球のどこかで、人知れず守られている豊かな暮らしが、きっと他にもあるに違いない」
 そう思えたとき、なんだかとっても心が温められるのを感じた。

 ニュースを見るたびに、これでもか・これでもかと繰り返される人間のおぞましさに、いささか参っていた。その同じテレビの画面に映し出される家族の姿に、天国も地獄もこの地球上にあるのだと、思わずにはいられなかった。
 2006年12月25日のクリスマスは、静かに幕を下ろした。
 それがクリスマスというものだろうか。
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1 コメント

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ターシャ・テューダー (象山隆利)
2006-12-27 20:49:39
ターシャ・テューダーの世界はほんとうに美しいですね。私も数年前に写真がたくさん載っている本を買って何度も何度もその写真をじっと見つめていた時期がありました。主義主張で「共生」とか「自然回帰」というのじゃなくて、ごく自然にあたりまえのように自然な暮らしをしているというあたりがとても共感できます。
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