文化の日。
母の姪と甥が、施設に見舞に来てくれた。
特別な信頼を寄せている甥と姪。
二人が顔を見せると、ぱっちりと目を開け涙ぐんで手を握り締めた。
今朝から、食欲もあって意識がはっきりしていたという。
予感でもあったのだろうか。
しばらくしっかりと手を握ったまま。
母を囲んで三人でおしゃべりする声が聞こえたのだろうか。
耳は遠いいから何を話しているかは理解できなくても、楽しそうであることはつたわったに違いない。
しばらくすると血色も良くなっていった。
そして甥っ子の手を握ったまま眠り始めた。
安心したのだろう。
私たちが暇乞いをして居室を出たのは、3時を少しを過ぎた頃だった。
そのまま我が家に立ち寄って、まずは玄関先に飾った母の写真を見ながら昔話に花を咲かせた。
写真は、母が13・14歳ごろの家族写真から19・20歳までの写真。
そばには献奏会の折に女優の五大路子さんからいただいた百合の花が咲き揃って雰囲気を盛り上げてくれていた。
場を2階の座敷に移して、今後の相談に乗ってもらった。
紅茶とレモンケーキを食べながらの会話。
二時間はあっという間に過ぎていった。
帰っていく二人の後ろ姿を見送りながら、喜びを見せた母の様子を思い出した。
枯れていくからだの中にもまだまだ燃え尽きていないあたたかいものが流れている。
母は、まだ生きている!
久しぶりに緊張が解けて・・・・・
「ほっと一息、つくことができました!」
見上げると、群青色の空に月が昇っていた。
秋の宵に・・・・。