羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

おそろしー「年表という資料」

2022年09月18日 07時08分51秒 | Weblog
「日本の古本屋」Webサイトには、ない本はない。
今回も、期待しないまま検索してみた。
あるではありませんか!
『東京大学学生基督教青年会百年記念誌』
時間はかかったが、大学のお膝元・文京区弥生の三書樓書舗から送られてきた。学術図書・資料・雑誌ー今時の通販専門書店だった。



本が来るまでに木下順二『本郷』を読んでいた。
この本に書いているように、木下さんは、大学入学と同時に入寮して寮の客間に卒業後も居続けたので、通算17年間、非合法に蜿蜿と蟠踞し続けたと書いている。
そこに蜿蜿・蟠踞していたもう一人の人間が、森有正さんだった。
この寮で、二人は単なる友人としての関係ははるかに超えて、生涯を通して深い絆で結ばれる関係を築くことになる。
それを許した鷹揚な時代は、今となっては夢物語り。
しかし、その鷹揚さが、劇作家・木下順二(「ぶどうの会」や「山本安英の言葉の勉強会)、そして哲学者・森有正という文化を育てた。

パソコンでこの文字を打ち出す手を止めて、紙の漢和辞典で二つの熟語を調べてしまった。
「蜿蜿(蛇や虫や竜のようにうねうねと長く続く意)」
「蟠踞とぐろを巻くような状態で、しっかり根を張って動かない)」
なんとなく分かる、を超えて、ものすごく実感がこもった文字に、漢字の持つ力量に打ちのめされそうになった。

さて、この本『東京大学学生基督教英年会百年記念誌』に附解説としてついてきたのが、『「年表 附解説」明治元年(1868)ー昭和二十七年(1952』である。
これがえらく参考になる。
全ての年にチャペル等で催された行事、講演会、演奏会、クリスマス祝会が克明に記録されている。
実質、日本をつくり上げた多く卒業生の行動も、全体の流れのなかで見えてくるから面白い。

木下さんと森有正さんに焦点を当てて、ここに淡々と書かれている記述を読んでいると、一人青年、いや二人の青年が体験し、少なからず人間形成に関わったであろう宗教・文化・教養・思想・価値観等々を、88年間の歴史の中で捉え直すことができそうな気がしてきた。大きな果実の前で、よく研がれたナイフの刃をいつ入れようか。手が震える。

本来の目的軸に戻ってみると、岡倉士朗、木下順二、竹内敏晴、の人間模様。そこに絡む山本安英の存在。そして野口三千三がどのように関わっていったのか、私の中で、それぞれが少しずつ声をあげ、輪郭を描き、立体造形になって動き始めてきた。

困ったことに、あらぬ妄想にも駆り立てられる。
「いっそ小説の方が、フィクションの方が、真実を描けるんじゃないか」
戯言を言っている夢で、今朝は目が覚めた。
ふぅー。
コメント
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