羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

筋肉の記憶

2013年06月07日 07時15分35秒 | Weblog
 2002年度から、大学の体育で野口体操を教えはじめた。
 今年2013年度、12年目に入った。
 今週で、前期授業も折り返し点、残すところ半分となった。

 さて、学生の一番人気は、野口体操のマッサージである。
「ヤバイー、気持ちいー」
 終わった時には口々にこう言う。
「お父さんにやってあげよう」
「お母さんにやってあげよう」
 実際、学期末提出のリポートには、その結果を書いてくる学生がいる。ひとりではない。

 さて、今週はそのマッサージだった。
 ある男子学生の足をマッサージした。
「右足、怪我してます」
「エッ、どうして判るんですか」

 ある女子学生の足をマッサージした。
「球技やってます?」
「はい、高校の時はバスケット、今はフットサル」

 ある女子学生の足をマッサージした。
「柔らかいわね、何か続けている身体系のことあります?」
「はい、ヨガをやってます」

 昨年までは、こうした言葉を学生に問いかけることはなかった。
 からだが硬い、骨盤がズレている、背骨が湾曲している、等々、そうしたからだの状態に気づくことはあったが、言葉にはできなかった。

 10年の壁を、しっかり越えたのかもしれない。
 十代後半から20代前半の若者の筋肉に触れてきた。全員ならば2000人くらいになる。そのなかの一割にも満たない人数だけれど、かなりの学生のからだに触れたことになる。
 いつもマッサージ方法を教えながら、ということもあってそれほど学生が何をやっているのか、と筋肉の質については意識的関心をもっていなかったのかもしれない。
 サッカー、野球、その他の球技、ダンス、クラシックバレー、ボート、水泳、ありとあらゆる身体文化を経験している学生たちだ。

 で、12年度目にして、無意識に触っても、大まかではあるけれど、筋肉の質とつき方の違いがすこしだけ判るようになっていた。
 言われた学生もびっくりしていたが、感じ取れるようになっている私自身に驚いた。
 まさに「ルーの法則」だ。

 ベテランの整体師さんやトレーナーの方々は、さわらなくても立ち姿をみただけで、きっと見抜けることがたくさんあるのだろう。

 思い出すのは、アニマル浜口さんの筋肉だ。テレビ東京の朝の情報番組に呼ばれた時、スペシャルゲストだった。30分の生放送の間、野口体操のマッサージを伝えた。
 その時、アニマルさんは現役を退いてすでに10年は経過したという。しかし、筋肉の量は多く収縮力も強かった。ガチッと、岩のような筋肉が、脚にも腕にもしっかりついていた。
 同じ筋肉が力を抜いた瞬間、みごとに緩んで柔らいだ。あの感触は、しっかりこの両の手に残っている。
 単なる伸び切ったゴムのような“ゆるゆる状態”ではなく、弾力があって指がすーっと入っていくような気持ちのいい柔らかな筋肉の触感だった。痩せていて硬いからだの“伸びを忘れた繊維質”の反対の筋肉である。
 未だに同質の筋肉を持つ学生には出会っていない。
 
 因みに「ルーの法則」だが、現代のスポーツ・トレーニング、体育、リハビリテーションにも、この法則が生かされているという。
●ルーの法則
 生理学における基本法則。
 ●活動性肥大の法則
 ●不活動性萎縮の法則
 ●長期にわたる機能向上制限による器官の特殊な活動能力減退の法則。
 ●合目的的構造の機能的自己形成の原理
 
 まとめると次のように言うことが出来る。
「身体(筋肉)の機能は、適度に使うと発達し、使わなければ萎縮(退化)し、過度に使えば障害を起こす」という法則。
コメント (2)
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