羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

アバクロ…… 昨日、探訪仕り候。

2010年01月07日 11時54分05秒 | Weblog
 中央通りの明るい日差しに慣れていた目には、一瞬、暗闇に戸惑う。大音響で鳴っているのはハードロックか。鼻先から鼻腔の奥にまで嗅いだことがない香水の匂いが突き刺さってくる。
 それも束の間。徐徐に視覚が回復し、最初に目に入ったものは臍下ギリギリまで上半身裸の若者。その瞬間、心臓を素手でギュッと掴まれた。衝撃が走った。裸体は筋肉一つひとつの輪郭を鮮明に描き出している。が、醜いマッチョ体ではない。
 さらに階段の踊り場で男女がお揃いのチェックのシャツにジーンズを穿いて音楽にからだをくねらせている姿を横目に二階へと昇っていく。
 ようやくスポットライトが当たっている商品が目に入る。ヨレヨレシャツに擦り切れジーンズ。闇の中男女の客が品定めをしたり店内をまさぐっている。
 圧巻は壁画だ。階段周辺に描かれているのはマッチョな姿態で、店員たちは壁画と瓜二つに作られている訳。
‘野生労働健康美クオリティーを演出します’というメッセージを逆説的に突きつける強烈な空間だ。暗闇によって視覚を限定し、香水で理性を失わせ、聴覚によって思考力を奪い、若いモデルが放つ覚めた皮膚感が触覚を独自空間認識へと誘う。だが、私には買うものは一つもない。
 銀座という舞台に登場した‘アバクロンビー&フィッチ’のアジア第一号店である。外に出るとお巡りさんが一人立っていた。
 1/7朝日社会面「探嗅6」に記事あり。
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