十数年前に、母が作ったハタキ二本が、使いづらくなって久しい。
しばらく前から、作り替えたいと思っていたが、億劫で出来なかった。
いよいよ年末。
いくらなんでもこのままでは掃除がしにくい。
そこで、母が元気なうちに、作り方を教えてもらおうと思いたった。
というのも建替えた我が家は、一室だけフローリングで、あとはすべて畳の部屋ばかり。
当然、襖や障子に加えて、長押(なげし)があって、ハタキがなくては始まらない。
つまり、あっちこっちに横桟が多い。
まず、《和服ハギレ たち落とし》と書かれている洋服箱から、適当な布端を探す。その中にある布は、すべて絹布。それがごっそり詰め込まれている箱が二箱あった。赤、朱、白、紫が主で、他にも絞りの入ったものや、柄物のハギレなど、選り取りみどり状態だ。
薄くて軽い赤い絹布を二本分、目分量で測って選び出す。
幅は4センチ五ミリほど、長さは四十センチくらいを目安にして、二十本を用意した。
それからこれまで使っていたハタキから、残っている布をはずし、棒だけにする。
この棒には、布をまとめるために、一本の釘が棒の先に打ちこまれている。竹の棒に対して垂直で、片方は釘の頭、もう一方は釘の先が、ほんの少しだけ出ている状態だ。
そこに十本の絹布を均等に分け、棒に対して並行にまとめて、釘の近くでキリッと結ぶ。
次に絹布の向きを棒からはずれた方向に換えて、縛った紐の近くを持って、外側から縛り付けると出来上がりである。
その作業を二回行った。
新たに二本のハタキの完成だ。
簡単なことだか、長さや太さや色合いや結び方にちょっとした気遣いが求められた。
母さんと夜なべをした、て感じ。
作り終えて、二箱に詰め込まれているハギレを、改めて見ながら
「これだけあれば、何十本もつくれそうね。でも丁度いい太さの竹を見つけるのが大変そうね」
母に話しかける。
「誰が使うの?」
「確かに……」
今の家のつくりでは、ハタキ+箒+塵取りを使って掃除をすることは、むしろ出来ない。
「掃除道具ひとつとっても、昭和は遠くなりにけりヨッ……」
母は呟く。
昨晩の夜なべの収穫は、二本のハタキと少し若返った母。
今朝になって、さっそく座敷を掃除してみた。
実に使い勝手がよい。
これでまた十年はたっぷり持つだろう。
実は、使い始める前に、朝日に向けてお祓いをした。
すると真っ赤な薄絹が、より鮮やかな色に染まって美しく舞った。
これぞハタキだ、といわんばかりに……。
しばらく前から、作り替えたいと思っていたが、億劫で出来なかった。
いよいよ年末。
いくらなんでもこのままでは掃除がしにくい。
そこで、母が元気なうちに、作り方を教えてもらおうと思いたった。
というのも建替えた我が家は、一室だけフローリングで、あとはすべて畳の部屋ばかり。
当然、襖や障子に加えて、長押(なげし)があって、ハタキがなくては始まらない。
つまり、あっちこっちに横桟が多い。
まず、《和服ハギレ たち落とし》と書かれている洋服箱から、適当な布端を探す。その中にある布は、すべて絹布。それがごっそり詰め込まれている箱が二箱あった。赤、朱、白、紫が主で、他にも絞りの入ったものや、柄物のハギレなど、選り取りみどり状態だ。
薄くて軽い赤い絹布を二本分、目分量で測って選び出す。
幅は4センチ五ミリほど、長さは四十センチくらいを目安にして、二十本を用意した。
それからこれまで使っていたハタキから、残っている布をはずし、棒だけにする。
この棒には、布をまとめるために、一本の釘が棒の先に打ちこまれている。竹の棒に対して垂直で、片方は釘の頭、もう一方は釘の先が、ほんの少しだけ出ている状態だ。
そこに十本の絹布を均等に分け、棒に対して並行にまとめて、釘の近くでキリッと結ぶ。
次に絹布の向きを棒からはずれた方向に換えて、縛った紐の近くを持って、外側から縛り付けると出来上がりである。
その作業を二回行った。
新たに二本のハタキの完成だ。
簡単なことだか、長さや太さや色合いや結び方にちょっとした気遣いが求められた。
母さんと夜なべをした、て感じ。
作り終えて、二箱に詰め込まれているハギレを、改めて見ながら
「これだけあれば、何十本もつくれそうね。でも丁度いい太さの竹を見つけるのが大変そうね」
母に話しかける。
「誰が使うの?」
「確かに……」
今の家のつくりでは、ハタキ+箒+塵取りを使って掃除をすることは、むしろ出来ない。
「掃除道具ひとつとっても、昭和は遠くなりにけりヨッ……」
母は呟く。
昨晩の夜なべの収穫は、二本のハタキと少し若返った母。
今朝になって、さっそく座敷を掃除してみた。
実に使い勝手がよい。
これでまた十年はたっぷり持つだろう。
実は、使い始める前に、朝日に向けてお祓いをした。
すると真っ赤な薄絹が、より鮮やかな色に染まって美しく舞った。
これぞハタキだ、といわんばかりに……。