羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

山桜と染井吉野と……Y遺伝子

2009年04月09日 11時17分26秒 | Weblog
 灌仏会の東京は、桜の季節である。
 ほとんどが染井吉野だ。
 野口三千三が昭和24年から亡くなる平成10年まで住んだ西巣鴨から近いところに染井が位置している。
 この地には植木や盆栽を扱う職人さんたちが住まっていた。彼らが大宮に大挙して移り住むまでは、ここが江戸東京の樹木・植物生産地だった、と生前伺ったことがある。
 ソメイヨシノ(染井吉野)は、正にこの染井の地で交配され生まれた桜木である。
 そして、ここから日本全国に移植され、今では桜の大半が‘染井の桜’になっている。
 とまぁ、桜に因む話を聴きながら、西巣鴨から巣鴨を抜けて染井まで、花を見てまわったのは、亡くなる2年ほど前のことだった。
 
 弥生も末の野口の命日と灌仏会の我が誕生日が、桜で結ばれていることに縁を感じるようになったのは、ごく最近のことだ。
 
 ところで、古人は山桜を愛でてきたときく。
 桜花に生と死と情念を重ねている。
 とりわけ花の吉野山は霊的空間として、日出る国本来の信仰をはぐくんだ地としての伝説は残る。

 ある遊行僧が花を追って、山々を巡り歩く。
 あまりに美しい山桜に出会った僧は、携えていた刃で傷をつけた。
 木の幹からは、樹液がしたしたと流れ出した。
 人の血を思わせる樹液の色に僧は命の真髄にふれた、という。
 桜は、生と死とエロスを象徴する樹木でもある……、このような言い伝えとなっていくのだ。

 ところで、時代は下って、日本の危機。
 ヒトの雄にたった一個しかないY遺伝子が危ないと言われ始めている。
 あまりにも純粋に保たれることは、Y遺伝子にとっては、存続の危機に陥る危険性があるらしい。
 つまり、有性生殖によるヒトの存続には、他民族が入り乱れて、適当に混ざり合い、シャッフルのようなものが必要なのだ、と言われるようになった。
 
 作家・鈴木光司氏は、『原子力文化』09年4月号で、こんな発言をしておられる。
「日本が抱えている少子化の問題は、エロスを含む生物学的、科学的な問題でしょう」
 人類が滅びるとしたら核弾頭の飛びあいではない、と想像しているらしい。
 このくだりを読みながら、思わず私は笑ってしまった。
 こうした発想をするのは、野口三千三くらいだろうと思っていたからだ。
 作家・鈴木氏も野口も、人類の滅びは‘生物学的な問題のバランスの崩れ’によって起こる、と考えているところが面白い。
 つまり、二人とも‘人類は核では滅びない’と考えた。

‘花は植物の生殖器’、『野口体操 からだに貞く』春秋社版 44~45ページ。
 散り始めた花もなかなかの風情……。


注:例えば、‘iPod shuffle’は、音楽プレーヤーで再生するときメディア録音されている曲をランダムに混ぜ合わせて再生すること。
  例えば、ポピュラー音楽では、1拍を3分割し‘三連音符’として表記する。とくに二つ目の音が休止符になることがある。
  
  こんなときにもシャッフルって言うんデス!
 
コメント (1)
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