羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

ほんとうの柔らかさとは?

2006年09月14日 19時44分32秒 | Weblog
 今朝、テレビ朝日の報道番組を見ていた。
「シンクロ・ワールドカップ2006」を放送する関係から、総合司会者・松岡修造さんが出演していた。

 その場面で、マーメードの足が映し出された。
 床に前後開脚してみせている姿は、どこが硬いのかと思わせるくらいに開いていた。
 朝食の後片付けの合間に見ていたので、正確な記憶ではない。が、その彼女の悩みはからだが硬いこだという。特に脚の硬さが問題だと。
 そこで柔らかくするために、鍼をうつという。他のスポーツ選手もそうすることで柔らかさを得るらしい。解説とおもに、鍼灸師の男性が、マーメードの脚・膝頭の後ろに鍼を刺すシーンを映し出した。
 
 国際試合で「勝たねばならぬ」それも「優勝せねばならぬ」というだけで、硬くなることは必然。松岡さんも実際、シンクロ選手と一緒に水中にもぐって、いくつかの動きを試しておられた。
「ものすごく苦しいし、大変な競技だ。水中では、顔はぐちゃぐちゃだ。それが水面に上がった瞬間に笑顔になるんだから、それだけでもすごい」
 実感がこもった感想を、松岡さんが語った。
 硬くなって当たり前。人間だもの。そこで心理的プレッシャーをどう克服するのかということは、選ばれた一人一人が背負った永遠の課題だろうな、と思うことしきり。

 ニュースでしか見ていないが、骨折から立ち直った松井秀喜は、やっぱり凄い。
 リハビリ期間にいったいどのような訓練を行ったのだろう。
 心身一体となったベストの状態で、復帰、第一試合に向けて日々成長をとげたことが証明された。

 さて、私自身のからだの硬さの経験を書いておきたい。
 形の上でほぐれているかのように見えても、からだの芯が本当にほぐれるというのは、状況によって難しいことがある。いくつかの例を挙げてみると……
 野口三千三先生が緊急を要する発作に見舞われて救急車で病院へ、生死の境をさまよっておられた時。
 父が麻酔からさめて正常に戻りきらなくて、一日中、父に昔のことを思い出させながら、正常の覚醒状態を取り戻させた時。
 ICUで見かけた術後の赤ちゃんが、火がついたように泣き叫び、母親がそばでおろおろし、医者も何もできずに立ちすくみ、ベッドの上に吊り下げられている可愛らしいガラガラのおもちゃが虚しく見えた時。
 突発性難聴を患って、入院したその晩から数日間、からだにモーターの振動を感じて耳鳴りと身体揺動が一生続いたらどうしようという不安にかられた時。

 そうしたときには、からだは硬くなる一方で、ひとりになってほぐしても、ほぐれきれるものではない。
 病気や生死に関係したときが多いが、そのほかにも緊張が抜けずに、硬くなることはいくらでもある。
 
 あるとき思った。
「芯から、気持ちよくほぐれなくても、形だけでもほぐしておこう」
 ストレスを回避できないとわかったときに、逃げようとせず、甘んじて受ける。
時間をつくって体操だけはやっておく。形だけでも……と。

 それにしてもワールドカップがかかった競技のプレッシャーはいかばかりか。
 あふれんばかりの根性、精神力の強さだけでは乗り切れない。
 そこに「運」という人の能力を超えた大いなる力が働く。

 今夜、8時から、「フリーコンビネーション・決勝」がはじまる。
 一つ目のメダルがかかっている。
 そろそろ時間だ!
コメント
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