ピストンエンジンは永遠か!な?

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クランク室圧力

2006年08月06日 | エンジン

人気blogランキングへ  これだけ暑いと、涼しかった7月のほうが良かったと思います。

クランク室の容積変化

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4気筒とハーレーなどのツインエンジンとの大きな違いは、ブローバイガスの圧力の影響のほかにピストンの上下によるクランク室の圧力の変化にもあります。

ハーレーのⅤツインは単気筒とほぼ同じと考えても良く、ピストンの上下運動により行程容積よりチョット少ないだけ変化します。

一般の4気筒エンジンでは、コレに較べて容積の変化はほぼ無いと考えて良いのではないでしょうか。

ハーレーのエンジンで細かいことを言うと、パンやエボではロッカーカバーもオイル戻り通路が繋がってたり、ショベルはピストン下降時にオイル戻り通路を塞いだりと、クランク室容量は違いますが、巨大なフライホイールが存在していますので意外と空間が少ないですから、容積比としてみると2~3(いやもっと少ないかな?)でしょうか?

6月29日の記事に於いて”ポンピングロス”に触れていますが、ポンピングロスの定義についての議論も時たまあり、クランク室内の圧力変化もポンピングロスの一つと考える方もいらっしゃるようです。

ところが自動車工学的には、このように圧力変化が大きいエンジンは非常にマイナーな存在で、今までに充分な検証は行われなかったとワタシは思います。

ハーレーにおいてはこの圧力変化を見過ごしているわけでなく、対処方法は試行錯誤が行われ、前述のオイル戻り通路の取り扱いやブリーザーバルブの設置はその例ではないでしょうか?

ハーレーのブリーザー

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去年の11月3日の記事でビッグツインのブリーザーバルブを解説していますが、エボエンジンの”ヘッドブリーザー”以前ではクランク回転と同調したブリーザーバルブがピストン下降時だけ開放して、クランク室圧力を抜く構造になっています。

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”ヘッドブリーザー”になってからは一目瞭然であり、正圧でないとアンブレラバルブは開放せず、ピストン上昇時にはバルブは閉じています。つまり、ハーレーではかなり前からクランク室圧力のコントロールが行われ、吐くだけで吸うことはないということです。

ブリーザーを大気開放させて手に圧力を感じてみると、アイドリング付近ではかなり強い圧力を脈動として感じますが、回転を上げると脈動感が薄れるとともに圧力も低くなります。

これはどういう事かというと、ブリーザー出口の圧力変化がクランク室内の圧力変化に追いつかないとみるべきでしょう。

もう一つ考えられるのは、「吐くだけで吸わない」からクランク室内の気圧が下がり、”ポンピングロス”を減少させているということです。

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写真は”クランク室内圧力コントロール”の効果を謳い市販されているものです。

ハーレー用もあり、効果を確認されている方も多いようなのですが、前述のようにハーレーは元々「吐くだけで吸わない」構造であるため、ワタシには・・・・・?

吐くだけでなく吸わせると?

エンジンの大きさの割りに如何にも小さすぎるブリーザー機構を大きくして、吐くだけでなく吸わせた方がクランク室の圧力変化が小さくロスが少ないのでは?という疑問もあろうかと思います。

クランク室の容積変化は燃焼室のそれよりは小さいのですが、2気筒分が同時に変化しますので、もし吸わせて吐かせるとなると出入り口の口径はインテイクポートと同等以上のモノが必要になるかと思います。

クランクケース内はブローバイガスばかりでなく潤滑のオイルがミスト状になるので、上記の大きさの出入り口ではコレを分離するのに巨大な分離槽が必要になりますね。

「吐くだけで吸わせない」方法では出る量はブローバイガスだけですから、ブリーザー機構がコンパクトになり合理的ではないでしょうか。

大気開放させるとオイルが汚れる?

ブローバイガスはシリンダーとピストン(リング)の隙間からクランク室内に流入する未燃焼と燃焼済みガスです。特に空冷エンジンでは水冷に較べて温度のコントロールが困難であるため、ピストンクリアランスが大きく設定されるので、ブローバイガスは多いと言わざるを得ません。

リーンバーン(希薄燃焼)で排ガス規制をクリアしているモデルでは、燃焼温度が高く窒素酸化物(NOx)の生成も多いと考えられます。ハーレーのマフラー内の触媒は,資料によると3元触媒ではなく酸化触媒なので、マフラーの抜けを悪くして燃焼済みガスを燃焼室に残しEGR効果をだしている可能性がありますから、抜けの良いマフラーではNOxの生成は更に多くなるとも考えられます。

ブローバイガス中のNOxにはNOも含まれ、水に溶け込めば硝酸(HNO)の生成も考えられ、この量が多ければオイルの劣化を著しく早めます。

確かにブローバイガスに含まれるオイル分がエアクリーナーを汚してしまうのは悩ませられる事柄ですけれど、光化学スモッグの原因になるNOxを含むブローバイガスは大気開放させる事が禁止されています。そして大気開放より効率的にクランク室より排出できる、本来のエアクリーナーから吸気させるのはエンジンにとっても良い事なんですね。

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*追記

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”クランク室内コントロール”バルブについて、ワタシが少々考え足らずでありましたので補足させていただきます。

”クランク室内コントロール”バルブではピストンの上下によるクランク回転での圧力変化を利用して、クランク室圧をコントロールするものです。バルブは当然ですが設定された圧力以下では密閉する機能があります。しかしアンブレラバルブにも密閉する機能がありますけれど、青矢印のオイルポートが存在しますので、このシステムと”クランク室内コントロール”バルブでは似たように見えるが機能は違うと言わなくてはなりませんでした。

ここで読者の方に誤解を招き、関係各社様にご迷惑をお掛けした事を深くお詫びして、ご容赦をお願い申し上げます。