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マフラーの記事がまとまらないので”ご用心シリーズ”第2弾です。
一般的にはオーバーヒートに関しては様々な記述や解説がありますが、ココでは余り出回っていない事例を紹介しましょう。
エボエンジンではシリンダーベースガスケットの”寿命”があり、ある程度の条件で必ずオイル洩れを発生します。この写真でもガスケットが硬化して、用を為さない様子は窺えると思います。
赤矢印に注目していただくと、ピストンリングが強く当った痕跡が見えます。隣の白っぽい部分はガス抜けの痕跡と思われます。
この事例ではオイル洩れの修理ですから、ベースガスケットを張り替えればサクサクと終了の筈でしたが、シリンダーを抜く事により「ピストンリングの当り」が変ってしまい、さほど調子が悪くなかったエンジンが修理後にはトテモ調子が悪くなってしまったのです。
シリンダーをボーリングしてオーバーサイズのピストンに入れ替える事により、勿論蘇ったので、原因はシリンダーのガス抜けであったのは明白です。
蘇ったのはオイル洩れ修理前ではなく、「新車に近い状態」というのを付け加えておきましょう。
貫通スタッドボルトによるシリンダーの変形は常識になっており、ボーリング加工をする場合には写真のようなトルクプレートを必ず使い、エンジンに組み込まれたのと同じ状態にして行います。
シリンダーの変形としては、シリンダーヘッドを介して矢印のような圧力が掛かると、書き加えた赤線のようになる事も考えられます。
ところが一番上の写真の状況では、この図のような変形ですね。小さい丸はスタッドボルトの貫通穴です。
トルクプレートを使っても、シリンダーの変形が影響するのは完全に防げないのは、メーカーも承知しているようで、
”シリンダーには、スタッド穴の近くにボア上下方向全体にわたって4箇所にかすかな光沢がみられる。これらの光沢は、通常はその幅が9.525mmで、エンジンの累積運転時間が多くなると現れる。これは正常な現象である。”とマニュアルに記載されています。
ムムッ!程度にもよるけど、ホントウに正常?
手元にあるシリンダーはTC88のモノですが、20℃での長さを測ってみました。
100℃程度に加熱して測った見ると、熱膨張による差は0.5mmです。
たかが0.5mmですが、ヘッドボルトのピッチは16山のネジですから約1.5mm。
1.5mmに対して0.5mmは3分の1回転にあたります。
ヘッドボルトの指定締結トルクは16~19Nmで締めてから1/4回転更に締めます。
それからみると100℃の1/3回転分のシリンダーの伸びはかなり大きいと思われます。鉄製のボルトの熱膨張も考慮しなくてはなりませんけれど、オーバーヒート時のシリンダーは100℃よりもっと高いでしょう。
結論
シリンダーの熱膨張が想定外に大きくなると、ヘッドボルトのオーバートルクや、トルクプレートを使わないボーリング加工による結果と同じようになり、シリンダーのガス抜けを招く可能性があります。
簡単な実験による検証ですから、深刻になられても困ります。ただ、オーバーヒートをあまり楽観的に見ても深刻な事態に発展することもありますので、これからの季節は注意していただきたいものです。
シリンダーの変形によるガス抜けが生じると、場合によってはクランケース内に高温のガスが入り込むので、より事態がヒドクなることもありえます。
TCエンジンのシリンダーは剛性が高いのですが、特に薄いガスを燃やしている’06モデルのダイナは要注意ですね。